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概要

せんたん MAY 2018 vol.27

知の扉を開く情報科学領域環境知能学研究室人間とロボットが調和した安全で快適な社会を実現する▲萩田紀博客員教授▲神原雅之准教授ロボットの知能を協調人は周囲の環境のありさまを的確に把握する「環境知能」を育みながら、スムーズに社会生活を送っている。超高齢社会に入ったこともあり、こうした人の能力をサポートするために重視されているのがロボット技術。現場を案内する対話型ロボットや、実像と重ねて目の当たりに必要な画像を表示するAR(拡張現実感)などのロボットメディアだ。萩田研究室ではこうしたロボット技術の「環境知能」を強化し、それぞれの「個体知能」と連携させるソフトウエア作りにより、IoT化が進む「住空間」や「公共空間」、そして、車など「移動空間」で安全、快適さを増す社会システムの実現を目指している。「環境知能学は、ロボットの固体知能が不足する情報を補うだけでなく、個々のロボットの知能を協調させたり、スマホなどと連携したりすることで、新たなサービスを生み出せる可能性が大いにあります」と萩田客員教授は強調する。AI(人工知能)技術などの進化によりロボット個体の対話能力は増したが、その能力を建物の壁や車体など生活の場(環境側)にあらかじめ取り付けることにより、その人の考えや行動に役立つコミュニケーションが実現できる。例えば、一人暮らしなら話相手になるし、公共の空間なら探している場所を案内し、ドライブ中なら危険箇所を事前に知らせてストレスを減らす。環境そのものが、知的なナビゲーションをするのだ。「このようなシステムを導入するさいに、倫理的、法律的、社会的な課題であるELSI(エルシー)という概念を常に意識し、個人情報の保護などをシステムの設計に取り入れていく必要があります」と説明する。社会常識を踏まえた環境知能ATR(国際電気通信基礎技術研究所)の知能ロボティクス研究所長でもある萩田客員教授は、本学と共同で2004年ごろから、通信ネットワークによりロボットを操作し、人とコミュニケーションする実証実験などを大阪・南港など各地で行ってきた。「今後は、どんな時に誰に適切な情報を提示するかなど、社会常識を踏まえた環境知能がますます重視される」と予測する。そのベースには「ロボット技術(機械)と人間という本来、相容れない特性をどのようにして社会的に調和するか」という設計思想が不可欠になる、という。最近では、ロボットの機構を知らない人でも、見よう見まねで接客の動作を教えられるロボットを開発している。萩田客員教授は小学生のときにゲルマニウムラジオを組み立てるなど科学少年だった。大学院では、脳神経を模した情報処理システムを研究し、NTTに入社したときは、画像認識がテーマだった。ATRに来てから、ネットワークロボットの研究に取り組んできた。「自分なりの研究哲学を持つことが一番大切で、そのような人材を育成することも重要」という。本学については「学生の考0 7 S E NTAN