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情報科学研究科 コンピューティング・アーキテクチャ研究室(中島ラボ)Tran Thi Hong 助教

2012年にベトナム国家大学ホーチミン科学大学にて博士前期課程修了。2014年に九州工業大学にて博士後期課程修了。専門は無線通信、デジタル信号処理。研究テーマはIoT(モノのインターネット)センサー向け低コスト低消費電力無線通信機の開発。2016年10月から2017年3月まで在宅勤務制度を利用。

なぜ研究者に?

子どもの頃、「こんな職業に就きたい」という夢はとくにありませんでした。ただ、マリ・キュリーの伝記を読んで憧れを抱いた記憶はあります。高校生のとき、漠然と「研究者になれたら」と考えましたが、どのようにしたらなれるのかわかりませんでした。大学を卒業し社会人を2年間経験した後、進学のチャンスがあったので修士課程に進みました。ベトナムでは学費が日本ほど高くないことも進学を後押ししてくれたと思います。

研究者紹介 vol.2情報科学研究科 コンピューティング・アーキテクチャ研究室(中島ラボ)Tran Thi Hong 助教

ベトナムから日本の大学に進学するまで

2008年にベトナムの大学を卒業後ベトナムにあるAltera(アルテラ)の研究所に就職しましたが、着任してから8か月後に経済的問題が発生したため、この研究所が閉鎖されました。その後、ベトナム国家大学ホーチミン校の半導体設計機関であるICDREC(Integrated Circuit Design Research and Education Center)に勤めました。ICDRECに勤務していた頃に、沖縄で開催された電子回路関係のコンテストに参加しました。私はそのコンテストで一位を獲ったのですが、コンテストの主催者だった九州工業大学の先生が研究室に来るようにと誘ってくださいました。
来日を目指して2010年7月にホーチミン科学大学院大学の博士前期課程に入学しました。この大学が九州工業大学と協定関係にあったので、2010年10月から2011年9月の1年間、交換留学生として日本に滞在しました。帰国後、ベトナムで修士課程を終え、2012年10月に九州工業大学の博士後期課程に入学し、2014年12月に博士号を取得しました。その後、おかげさまでNAISTの職員になりました。

理系分野の女性そして仕事

学部学生のときは物理学を専攻していて、専門分野は電子分野の回路設計でした。女子学生は少なかったですね。大きいクラスのおよそ300人中女性は20人くらい、専門分野も60人中女性は8人でした。
研究所で働いていたときも女性は少なかったですが、楽しかったです。いままでの自分の人生を振り返って考えても、理系に進んだことは正しかったと思います。自分以外女性がまったくいないという環境でもなかったし、女性も男性もみな親切でした。同僚との仲は良かったです。人間関係などの問題に労力をとられることもなく、仕事のことだけに集中して過ごせました。 研究職に就いた自分はラッキーかもしれませんが、この分野には女性が少ない分、求職中に(私の場合は大学の卒業、Alteraの退職、博士後期課程の卒業後)すぐに仕事が見つかりやすかった面はあると思います。ベトナムも日本もこの状況は同じなのではないでしょうか。

2016年8月に初めての赤ちゃんが生まれました。出産前後は私の研究室のメンバー(特に中島先生)や男女共同参画室・人事課から色々なサポートをしていただきました。男女共同参画室は妊娠や出産に関する有用な情報を提供してくださり、私の様子を伺いつつアドバイスをくださいました。研究を進めるためのアカデミックアシスタント制度も利用することができました。また、産前産後休暇・在宅勤務・出産に関する経費・赤ちゃんの保険などに関することについては、人事課のみなさんに丁寧で迅速なサポートをしていただきました。心から感謝いたします。出産前後は非常に忙しかったですが、大学から色々なサポートをいただいたおかげで仕事を続けてこられて本当によかったです。支えてくださるすべての方に感謝しています。
仕事については、私は無線通信機とIoT(モノのインターネット)システムについて研究しており、現在、学生7人を直接に指導しています(博士後期課程3人、博士前期課程1人、インターン学生3人)。研究以外には、外国の大学と共同研究又はMOU(Memorandum of Understanding; 国際交流)協定をNAISTと結ぶ活動を行いたいと思っています。現在までに、NAISTとベトナムトップレベル大学3校とMOU協定を結びました。今後も国際的な研究プロジェクト(複数国の研究機関の研究者によって共同して研究を行うプロジェクト)を展開していきたいと思っています。

日々の生活とこれから

現在、私は週二日在宅勤務制度を利用し、三日は大学に出勤しています。在宅勤務日には、娘をみながら仕事をしています。おかげさまで、娘はとてもよい子です。娘は食事が終わったら揺りかごで一人遊びをして、そのまま寝ます。娘が眠ったら私は仕事をします。出勤日には、朝娘の食事と夫婦の食事が終わったら10時頃に研究室に来て、学生の指導や自分の研究をします。12時半に家に帰って、自分の食事・娘の食事・娘のお風呂をします。午後の仕事は大体14時半~18時半までです。夜は娘が寝た後の22時~24時の間仕事を少しして寝ます。2017年4月からは娘を月曜日~金曜日まで保育園に預け、通常の勤務に戻る予定です。

研究者を目指す学生に伝えたいこと

一般的に、女性はいわゆる理系の仕事よりも文系の仕事のほうが合っているのではないか、と言われたりしますが、それは違うのかもしれないですね。たしかに女性は子育てや家事を担いますが、仕事も同時にしたい人が多いです。私の仕事のような理系の仕事は、職場に出勤していない時もパソコンと本のような資料があれば仕事ができます。ですので、必要がある時には、子どもの世話をしながら仕事を進めています。また、私の経験から言えるのは、理系の仕事の職場の人間関係はかなり単純で、みな相手に尊重・感謝の気持ちを持って過ごしています。女性にとっては、安心して仕事ができる環境だと思います。

(平成29年3月)

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