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研究者紹介 vol.23 情報科学領域 ネットワークシステム学研究室(岡田研) Chen Na先生

2017年北京郵電大学情報通信工学博士後期課程修了、博士(工学)の学位取得。同年より北京郵電大学電子科学技術専門の博士研究員。2018年10月から奈良先端科学技術大学院大学助教。専門分野は光ファイバ無線、大規模MIMO信号処理に関する研究。現在の研究テーマは、5G/6Gヘテロジニアスシナリオでの高速信号伝送技術。

なぜ研究者に?

学部時代は北京郵電大学(BUPT)でテレコミュニケーションを専攻しました。BUPTは2019年の時点で学内に5Gネットワークを構築するなど、中国の情報通信分野の最先端を牽引する大学です。
高校生の時には物理学に興味がありましたし、当時から得意でした。科学の分野の一つに物理学があり、物理学の一部にテレコミュニケーションがあると考えています。物理学の中でももっとも実践的なテーマに取り組むのがテレコミュニケーションです。テレコミュニケーションはエンジニアリング(工学)の分野でもあります。

なぜ研究者を志したのかというと、自分の性格が向いていると思ったからです。私はどちらかというと内向的なので。中学高校時代そして大学時代に、とても尊敬できる先生や教授に会えたことも影響しています。私はいつか彼らのように博学な研究者になりたいと思っています。
研究におけるもっとも大きな喜びは、未開拓の5Gや6Gの分野において、開発につながる新たな知を発見することにあります。新たな知を見出したときは楽しいですね。もちろん、研究を仕事にすること、とくに、大学の教員という仕事は易しいものではないです。研究面では、論文を書きプロジェクトを運営する力が求められ、教育面では学生に教える力が必要です。プロジェクトの運営や教育は同僚や学生と共に進める必要があり、これから力をつけていきたいと考えています。

BUPTでは博士後期課程を終えてから約2年間ポスドクをし、2018年にNAISTに着任しました。現在所属している研究室の教授である岡田先生とはもともと面識がありました。BUPTを訪問されたことがあったからです。現在のポジションについても岡田先生が当時の私の指導教授にメールをくださり、他のポジションとも比較の上、NAISTにアプライすることにしました。
就職のために日本に来ることにはそんなに大きな不安はありませんでした。博士後期課程の時に1年間アメリカに留学をしたことがあり、それがとても良い経験だったので、日本に来ることにはそれほどナーバスにはなりませんでした。中国と日本はそれほど近いわけではありませんが、行き来できる距離だと考えました。現在はcovid-19によってなかなかそうもいきませんが。また、文化という意味でも、中国と日本は文字や食に近しさがあって理解しやすいです。着任当初は岡田先生、同僚、日本人学生や留学生たちがとても親切にしてくださり、現在はこの大学に馴染んでこれたと思います。

研究と生活のバランス

日々の生活はとってもシンプルです。職員宿舎に住んでいるので、公共交通機関を使った通勤をする必要がなく便利です。
朝は7時半くらいに起床し、9時半くらいに研究室に来て、正午ごろに昼食を摂るために宿舎に帰ります。そして14時頃に研究室に戻り、差し迫った仕事がない場合は17時半頃には帰ります。帰宅後はメールチェックをするくらいです。
1年ほど前に一時帰国して結婚をし、現在は職員宿舎で夫と二人暮らしをしています。夫は来日後就職する予定でしたがcovid-19により困難になっており、現在はオンラインで仕事をしたり、日本語を勉強したりしています。中国では家事や育児の男女での分担は同等で、どちらかに負担が偏っていたら家事育児をしていない方が非難されます。私たちもごく普通に分担しています。

火曜日の晩と土曜日の午前中は、生駒市が運営する日本語のクラスを夫や留学生と一緒に受けています。講座は学内で受講でき、無料で、ボランティアにより運営されています。covid-19の緊急事態宣言が出るまでは奈良市で開講されている日本語クラスにも参加していました。
日々の買い物にはバスを利用しています。日本のバスは料金が高いですね。中国のタクシー料金と同じくらい高いように思います。
昨年、車の国際運転免許証を取得しようと申請書を出したのですが、問題があったようで受理されませんでした。そんなに深刻な問題ではなかったようなのですが、窓口で書類上の不備を理由に受け付けてもらえずで…。私たちは2人とも車の免許証を既に持っているので、国際運転免許証に移行したいと考えています。来月再度申請する予定です。車の購入は中国より日本の方が安価で済みますね。中国の大都市では、ナンバープレートの発行に制限があって時間もかかります。

本学の研究環境について

本学は研究設備も充実していますし、周りの人たちも親切で助けてくれるので、良い研究環境だと感じています。また、私の出身地の黒竜江省は中国の北東部なのですが、たとえば1月はマイナス23度で非常に寒い地域のため、日本は過ごしやすく感じます。大学周辺の環境は、大阪などの都市から帰宅した際に特に感じるのですが、新鮮な空気とすばらしい自然があって、気に入っています。
日常業務においても、十分なサポートを得られていると感じています。私はもっと日本の友人や教職員の方々と関わり合って、もっと仕事について学び、日本語も学びたいと考えています。ただcovid-19の影響で、外出だけでなく人と関わることがなかなか難しいですね。 気持ちが滅入ることもありますが、もっと頑張って仕事をして成果を上げていかないといけないと感じています。

現在、入試部会に参加しており、他の研究室のメンバーと一緒に仕事をする機会がありますが、みなさんとても親切にしてくださいます。それ以外には他の研究室とコミュニケーションをする機会はあまりなく、基本的には同じラボのメンバーとディスカッションをすることが多いです。
学術雑誌のコンテンツの利用に制限があることが少し不便です。ただ予算の問題もあると思うので、制限があることは理解しています。
今年度はどこからも助成金を得ていないのですが、来年度の外部資金獲得に向け、企業の助成金にも科研費にもアプライしました。科研費の応募の際に教授やURAが申請書類をチェックしてくださることはとても助かっています。

(令和3年1月)

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