
挑戦の連続が、自分をつくる

内川 大雅Taiga Uchikawa
ヤマト運輸株式会社 グローバル事業戦略部 グローバルCL設計課 係長
2021年博士前期課程修了
バイオサイエンス領域 植物生理学研究室
現在、私はヤマト運輸株式会社 グローバル事業戦略部 グローバルCL設計課の係長として、主に海外の3PL(サードパーティ・ロジスティクス)の設計を担当しています。これは、企業のお客様に代わって、商品の倉庫管理から配送、さらには物流に関わる戦略の計画まで、すべての物流業務を専門的に引き受けるサービスです。私たちの使命は、単にモノを運ぶだけでなく、この3PLサービスを通じて、お客様のサプライチェーン全体の構想段階から深く関わり、物流業務全体を最適化することです。物流の現場では、最適な提案・倉庫設計・現場構築・システム開発など、課題解決に向けた包括的な取り組みが求められます。
このような現在の私の基盤を作ってくれたのが、奈良先端大で過ごした2年間でした。私はもともと学部では細胞周期を研究する研究室に所属していましたが、大学院では全く異なる分野に挑戦したいという思いから、遠藤求教授の植物生理学研究室に入りました。植物の体内時計に関する研究に取り組みましたが、専門知識はゼロからのスタート。しかし、先生方は「ゼロからで構わない」と言ってくださり、それが大きな後押しとなりました。
当時、私は研究の過程で新規実験手法の確立に挑戦していました。その過程では、自分の研究室内だけでは解決できない問題に直面することも多々ありました。そのような時、植物分野の学内の他ラボの研究者に思い切って相談しに行ったことが、私の研究を一気に進めるきっかけになりました。知識も経験もない私に、真摯に向き合ってくれた教授や先輩方の姿勢に、今でも感謝しています。この「自ら動けば、周囲は必ず応えてくれる」という経験は、今の私の行動スタンスを形作ってくれました。仕事でも新しい課題に直面したとき、自ら出向き、準備し、相手が動きたくなるように働きかける。この姿勢は、研究の現場で自然に身についたものです。
加えて、奈良先端大で「挑戦を恐れる必要はない」と学びました。「挑戦して失敗しても、誰も気にしない」「成功したことは、誰かが必ず見ていてくれる」。奈良先端大のこの空気感が、当時の私には強い味方でした。 社会人になった後も、最初に入社した会社を3年で退職し、自己資金で半年間の語学留学にも挑戦しました。コロナが明けたタイミングで「今行かないと後悔する」と決断した留学でした。現地では、さまざまな国の友人と出会い、新しい価値観や多様な考え方に触れた経験は、私の人生を大きく豊かにしてくれました。その後の転職活動では、これまでのキャリアと留学で得た語学力・視野の広さが評価され、現在のポジションに就くことができました。今では、海外の現地視察や国際的なプロジェクトに携わり、私が理想とする働き方に近づきつつあります。
私にとって、大学院の2年間は本当に濃密な時間でした。一つのことに真正面から没頭できたあの時間は、社会人になるとそう多くは得られません。だからこそ、今、研究に取り組む皆さんには、その貴重な時間を全力で過ごしてほしいと願っています。 将来、アカデミアに進む方、民間企業で研究を続ける方、あるいは私のように別のフィールドで働く方、それぞれに異なる道があると思います。しかし、自分が本気で打ち込んだ結果得られた経験は、必ずどこかで活きてきます。そして何より、他人の目に惑わされず、自分の「好き」と「やってみたい」に素直に従って挑戦し続けてください。奈良先端大は、それができる、挑戦者にとって最高の環境だと思います。

留学中に訪れたスラム地域で出会った子どもたちと