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研究者紹介 vol.10 情報科学研究科 ソフトウェア設計学(飯田研)崔 恩瀞 助教

2015年大阪大学大学院情報科学研究科博士課程修了。博士(情報科学)。同年大阪大学大学院国際公共政策研究科助教を経て、2016年4月より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科ソフトウェア設計学助教。専門はソフトウェア工学。現在の研究テーマはソースコード解析情報に基づいたソフトウェア保守の支援。

研究者への道のり

韓国の大学ではマルチメディアを専攻し、卒業後は研究所で働いていたのですが、プログラミングは学部生のときから好きでした。私の父親は結婚前に仕事の関係で海外に住んでいたこともあって、小さな頃から私たち姉妹に、韓国だけではなく海外に目を向けなさいと言っていました。日本は韓国から近く、また、妹が日本語を勉強していたことをきっかけに私もいっしょに学んでいて日本語が話せましたし、日本でプログラム開発者の募集があったタイミングで日本に来ました。両親は私が日本で就職することを後押ししてくれました。

日本に来てからは、物流システムの会社で3年間ほどソフトウェアシステムの開発・保守の仕事をしました。このときの経験から、ソフトウェアシステム開発・保守作業の支援をしたいと考えるようになり、まず、大阪大学大学院情報科学研究科に研究生として所属しました。そして、修士課程に入学し、博士後期課程に進みました。博士号取得後、同大学の国際公共政策研究科で、学部生向けの情報基礎の講義を担当したり、サーバー管理の仕事をしました。国際公共政策研究科は、本学と似ていて、海外からの研究者も多く、自由な雰囲気が好きでしたが、自分の専門分野とは少し違うという思いもあり、本学に応募し、飯田研に着任するに至りました。

研究者になろうと思ったのは、会社で仕事をした経験を活かしてソフトウェアシステムの開発・保守作業を改善したいと考えたからです。いま取り組んでいることにはふたつあって、ひとつ目は、実際のソフトウェアシステムの開発・保守作業を効率的に支援するツールや手法を提案すること、ふたつ目は、学生を教育することです。つまり、自分の企業での経験を生かして、効率良くソフトウェアシステムの開発および保守作業を支援したい。また、ソフトウェア工学の専門家を教育して、世の中に送り出すことによって、企業のソフトウェアシステムの開発および保守作業の改善に役に立てたいと思っております。

日々のワークライフバランス

夫は同じ分野の研究者で、家にいるときもふたりで研究や学生への教育の話をしています。お互い状況がよく分かり、理解しあっているのが悪いのかもしれないですが、「なんで家にいるのに仕事するの?」ということもなく仕事をしています。一緒に旅行にも行きますが、旅行先でも研究などの話をすることが多いです(笑)。
普段の生活では、夕食は私が準備をして、20時半に帰宅する夫といっしょに食べます。食事の片付け、掃除、ごみ捨ては夫の担当です。週末はふたりで奈良県内の夫の両親を尋ね、買い物に行き、食事をつくって一緒に食べます。将来、夫の両親に介護が必要になったとき、本学には介護休暇制度などの両立支援制度があるので、心強く思っています。

男性だから、女性だから、ではなく人間として

仕事の面で、自分が女性であることを理由に不利に扱われたと感じたことは、あまりないと思います。よい研究ができるかが大事なので。
私はこれまで、女性が進むべきとされる道とは反対の道を歩んできました。一般的に、女性は文系に進むべきといわれたから理系へ進み、女性は研究者になるべきではないといわれたから研究者になり・・・ 女性に向けられる「べき」に反感をもって生きてきました。実は私、韓国では、女性だからこうするべきと言われたことなく、自由に生きてきたので、日本に来て初めて「女性だからそんなことをしたらダメでしょう」と言われた時はびっくりしました。自分は「女性」とか「男性」などの枠を気にすることなく、これからも頑張っていきたいと思っています。

研究者を目指す女性たちの親世代へ

これから研究者を目指す女性たちががんばるというよりも、親世代が自分たちの認識を変えるべくがんばらないといけないのではないでしょうか。私たち姉妹には親の支援がありました。けれども、女性が自分の道を進もうとしても、親が反対をしたり、女性だからそこまでやるべきじゃないとか、はやく結婚しなさいと言ってその道を阻むことがある。その認識は変えないといけないと思います。
研究の分野は自分の実力で歩んでいける世界です。他では「女性だから」と差別されることもあるかもしれないけれど、研究はそうではない。挑戦してやっていく価値があると思います。

(平成29年6月)

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