研究室情報
副作用の(少)ない抗がん剤を開発する
加藤研(腫瘍細胞生物学研究室)では、がん細胞に特異的な性質を見つけて分子機構を明らかにする研究を行っており、その成果をもとに、副作用の(少)ない抗がん剤を開発することを最終的な目標にしています。研究分野としては、細胞周期、細胞死、細胞分化、がん幹細胞、がん代謝などがあげられます。
研究成果物
PGV-1
当初は、クルクミンの関連化合物として解析されたPGV-1であったが、クルクミンの60倍の抗がん作用を示すこと、細胞周期の特定の時期に作用することなどから、クルクミンとは異なった作用機序を有するものとして注目されている。PGV-1に特異的な標的分子やがん抑制経路を明らかにすることで、これまでにない抗がん剤の開発につながると期待されている。
クルクミン(curcumin)
カレー粉の香りづけと色づけに欠かせないスパイスの一つであるターメリックの薬効主成分であるクルクミンには抗がん作用があり、動物実験等でその活性が認められている。しかし、抗がん作用に直結した薬効標的分子や、生化学的がん抑制経路については、不明な点が多い。我々は、ヒトがん細胞を用いてクルクミンの抗がん作用を再検証し、クルクミンが活性酸素(ROS)依存的に細胞老化と細胞死を誘導すること、標的として、ROS代謝に関わる酵素10種のうち7種がクルクミンにより阻害されることを見出した。
CDK4・6阻害剤
がん細胞の特徴の一つに異常増殖があることから、がん細胞では細胞周期を調節する機構に変異が生じていることがわかる。細胞周期のG1期は細胞周期進行のGO/NOT GOを決定する重要な時期であり、がん細胞ではG1期制御因子に変異が生じている場合が多い。Retinoblastoma(Rb)タンパク質は細胞周期をG1期に停止させる活性を持ち、Cyclin D-CDK4・CDK6キナーゼ複合体によりリン酸化されることで不活化され、細胞はS期へと進行する。CDK4・6阻害剤はCyclin D-CDK4・CDK6キナーゼの抑制によりRbタンパク質を活性化しがん細胞の増殖を停止させることから、抗がん剤として有望であり、当初はATPアナログの研究から始まったが、後に特異性の高い化合物として完成され、乳がんの治療に用いられている。
アクセス
- 住所 〒630-0192 奈良県生駒市高山町8916-5 学際融合領域研究棟1号館 101~105室
- 奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構 腫瘍細胞生物学研究室