腫瘍細胞生物学研究室

研究室紹介

本研究室(加藤研)のテーマは哺乳類(ヒト、マウス)細胞の癌化・増殖・分化・死を制御する分子機構を扱ったもので、キーワードとして、細胞周期制御、がん、幹細胞などがあります。

細胞周期のテーマではG1期における制御に着目しています。哺乳類のG1期制御の研究は、この15年ほどの間に爆発的に進みました。その間に数多くの制御因子が単離・同定され、これらの因子が織り成すシグナル経路が発見されました。G1期を制御する因子は細胞外シグナルの標的であり、細胞周期の進行(細胞の増殖)を正や負に調節する機能を持っており、さまざまな細胞外環境に応じて多種多様な制御を受けます。さらに、G1期の制御異常は細胞のがん化と密接に関係しており、事実、G1期制御因子にはがん遺伝子やがん抑制遺伝子の産物が多くみられます。また、近年ではG1期制御因子のノックアウトマウスが数多く報告され、この研究分野での新たな局面を迎えています。

がんの研究では、血液のがんである白血病に最も関心を寄せ、細胞周期制御の異常がいかに発がんにつながるかを考えるとともに、最近注目されてきた、がんの幹細胞を視野に入れたプロジェクトが始まっています。また、正常を知らなければ、がんに生じた異変を知ることができないという考えから、血液細胞の分化・増殖や造血幹細胞の制御を解明する研究も進行中です。

最近では、がんに特有の代謝機構(がん代謝)に注目し、代謝の変化ががんの発生、悪性化にどのような役割を果たすかを研究しています。中でも、活性酸素種(ROS)には特に注目し、がん細胞では、なぜROSが高いのか、その意義と制御について、さらに、これを利用してがん細胞特異的に増殖抑制、細胞死を引き起こす方法はないか、を研究しています。

また、スパイスの一つ、ターメリックの主成分である、「クルクミン」の持つ抗がん作用に注目し、その作用機序、分子メカニズムを解明することにより、さらに活性の高い物質を探索して、新しい抗がん剤の開発に繋げようとしています。

実験系としては、基本的な分子生物学・細胞生物学的手法や培養細胞を用いた実験系に加えて、遺伝学的アプローチも取り入れています。ヒトではがんに関する生理学的データの蓄積が大量にあるため、ヒトのがん細胞を用いた遺伝学的解析を行い、マウスでreverse geneticsを利用した方法でこれを検証します。ヒトのゲノムプロジェクトも一段落するところまで来ていますので、一昔前ならば、なかなか手の届かなかったような遺伝学的変異も現在では十分に解析対象の範囲に入ってきています。

加藤研では、哺乳類(ヒトとマウス)細胞の癌化・増殖・分化・死を制御する分子機構に興味を持ち、やる気にあふれた学生を意欲的に募集しています。私たちが行っている研究に興味がある方は、是非入試を突破して、我々のチームの一員となって下さい。

加藤順也

 
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