ごあいさつ
加藤研究室は、2001年5月に奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 腫瘍細胞生物学研究室として、発足しました。以後、2024年3月までの間にに90名の修士学生と8名の博士学生が卒業しました。この間に発表した論文が86報あり、総引用数は6,096(平均すると1論文当たり71 citation)でした。2024年3月31日に加藤順也は定年退職を迎え、名誉教授となりました。しかし、研究者として不完全燃焼であることを思い、今しばらくは現役研究者として現場に残る決意をし、2024年4月1日から特任教授に就任し、加藤研は奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構 腫瘍細胞生物学研究室として再発足することになりました。私にとっては、サイエンスというのはやっぱりとっても面白いものなので、自分で実験ができる限りはできるだけやって研究を進めていこうと思っています。現場に立って最前線を見つめるのはなかなかにいいものです。これからは、研究に専念し、副作用のない抗がん剤の開発に邁進していく所存です。関係者の皆様、今しばらくおつきあいください。よろしくお願いします。
加藤順也
経過
- 2001年5月
- 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 腫瘍細胞生物学研究室(加藤研究室)発足
- 2024年3月
- 加藤順也定年退職のため同研究室閉鎖
- 2024年4月
- 奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構 腫瘍細胞生物学研究室(加藤研究室)発足
研究方針
本研究室(加藤研)の目標は、がん細胞に特異的な性質を見つけて分子機構を明らかにし、その成果をもとに副作用の(少)ない抗がん剤を開発することにあります。キーワードとして、細胞周期、細胞死、細胞分化、がん幹細胞、がん代謝などがあげられます。細胞周期のテーマでは、がん細胞と正常細胞の違いに注目しています。生体内では正常細胞の増殖は極めて厳格に制御される一方で、がん細胞は無秩序に増殖することができます。これは、がん細胞が周りの環境に影響されることなく細胞周期を進行させることによると考えられます。細胞周期の進行は色々なチェックポイント調節により制御されることが分かっており、特にG1/S期とG2/M期のチェックポイントは極めて重要で、ここでの破綻は細胞のがん化につながります。例えば、G1期における制御に着目すると、哺乳類のG1期制御因子の中でもp53やRbは重要な役割を果たすことがわかっていますが、両因子ともがん抑制遺伝子として働くことが知られており、ヒトがん細胞では高頻度で不活性化されています。G2/M期でも同じように細胞がん化とかかわりの深い因子が存在します。我々はこうした因子に注目し、がん細胞に特有の細胞周期(がん細胞周期)を制御する特異的な因子を標的にすることにより、正常細胞には影響がなく、がん細胞のみに作用する薬剤を開発することで、副作用の(少)ない抗がん剤を開発します。 また、血液のがんである白血病にも関心を寄せ、細胞周期制御の異常がいかに発がんにつながるかを考えるとともに、血液細胞の分化・増殖や造血幹細胞の制御が白血病化とどうかかわるかを知る中で、最近注目されている、がん幹細胞やがん代謝と関与するプロジェクトを進めています。最近では、がんに特有の代謝機構(がん代謝)に注目し、代謝の変化ががんの発生、悪性化にどのような役割を果たすかにも興味を持っています。中でも、活性酸素種(ROS)に注目し、がん細胞では、なぜROSが高いのか、その意義と制御について、さらに、これを利用してがん細胞特異的に増殖抑制、細胞死を引き起こす方法はないか、を研究しています。 副作用の少ない薬剤を開発する考える上で、自然界に存在する化合物、天然物の利用を考えることは効率的な開発には重要です。我々は、スパイスの一つ、ターメリックの主成分である、「クルクミン」の持つ抗がん作用に注目し、その作用機序、分子メカニズムを解明することにより、さらに活性の高い物質を探索して、新しい抗がん剤の開発に繋げようとしています。 このように複数のアプローチで副作用の(少)ない抗がん剤の開発に迫っています。
研究室風景
研究経費
創薬総合支援事業(創薬ブースター)
橋渡し研究プログラム(京都大学)
戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)・e-ASIA共同研究プログラム
株式会社エナジックインターナショナル