研究に打ち込める環境が
整っている
大津 美奈 助教北海道大学理学部助教
奈良先端科学技術大学院大学 客員助教

研究に打ち込める環境が
整っている
大津 美奈 助教北海道大学理学部助教
奈良先端科学技術大学院大学 客員助教
大津助教は、植物と微生物の
相互作用について研究しています。
中でも、植物に細胞融合をさせ
感染細胞を形成する非常にユニークな
シストセンチュウの感染様式に着目し、
そのメカニズムの解明に挑んでいます。
2025年11月には北海道大学理学部助教に赴任し、
長年月にわたり独自の研究に
専念できる道を拓きました。
profile

大津 美奈 助教
経歴
-
2012
3月
名古屋大学農学部 学士(農学)
-
2014
3月
名古屋大学大学院生命農学研究科 修士(農学)
-
2015
4月
独立行政法人日本学術振興会(名古屋大学)
特別研究員(DC2) -
2017
3月
名古屋大学大学院理学研究科 博士(理学)
-
7月
英国ジョン・イネス・センター 博士研究員
-
2019
3月
独立行政法人日本学術振興会(John Innes Centre)
海外特別研究員 -
2021
6月
本学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域
博士研究員 -
7月
本学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域
助教 -
10月
JST さきがけ研究者(兼任)
-
2025
11月
北海道大学理学部 助教
本学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域 客員助教
趣味
猫と遊ぶこと、美味しいご飯屋さん、カフェめぐり
2年ほど前から猫と一緒に暮らしています。猫と暮らし始めてからいろんなものが猫仕様になりました。休日には、色々なところでカフェやランチを楽しんでいます。
interview
どのようなテーマで研究を続けてきましたか?
植物に寄生する微生物は、感染した宿主の植物細胞の形態や性質を変化させるなどさまざまな戦略を駆使して植物に寄生します。植物に寄生する線虫の一種であるシストセンチュウ(以下、線虫)は、宿主植物から栄養を奪取するために、植物の細胞同士を融合させて大きな感染細胞を作ります。実は、植物細胞にとって細胞融合という現象は非常に稀な現象であり、重複受精や接木などの限定的な条件でしか発見されていません。
そこで、線虫が植物の細胞融合を起こす機構に強く興味を持ち、その謎を解明する研究を続けています。
感染の過程で植物の細胞を融合させることはどれほど珍しい現象なのですか?
植物の細胞は、外側を丈夫な構造の細胞壁が取り巻いているので、細胞壁がなく柔軟な細胞膜だけの動物細胞と比べると、細胞融合は非常に稀な現象です。上記の通り、重複受精や接木など限定的な条件でしか植物における細胞融合現象が発見されていないこともあり、詳細な機構はわかっていません。その現象を植物の数百倍も小さい線虫が意図的に起こすことができるというのは、非常にユニークな感染様式といえます。発見されてから50年以上経っても未解明な点が多いところにも研究の意欲がわきました。
これまでにどのような成果が得られましたか?
細胞融合がどうして起きるのかということについては、未だよく分かってない状態ですが、線虫感染細胞の3次元(立体)的な形態が明らかになったことで、感染細胞の成り立ちを解明するヒントが見えてきたように思います。試料の透明化と二光子顕微鏡を駆使することで、感染細胞を丸ごと観察することが可能になりました。その結果、感染細胞では、細胞壁が柱状に規則正しく残っていて、まるでギリシアのパルテノン神殿の柱列のような整然としたパターンが広がっていました。これまでは、線虫は細胞壁をランダムに分解し、細胞融合を起こすとされていましたが、この観察結果から、既存の細胞壁の規則性などに基づいて細胞壁の分解と合成を器用に誘導し、再構築していることが初めて明らかになりました。
また、感染細胞は根の全体のごく一部にしか形成されない上に、根の深部に作られるため、感染細胞を濃縮することは非常に困難です。しかし、最近、感染細胞において核の大きさや核相(相同染色体の数)が増加する実験結果をヒントに感染細胞を濃縮して採取する方法も確立しつつあり、細胞融合によって起こる遺伝子発現の変化を詳細に追跡できそうです。
研究には、どのような心構えで臨んでいますか?
研究分野の流行にとらわれず、自分が本当に面白いと思うテーマを優先して挑むことで独自性を貫いていきたいと考えています。
これまでの研究者としての道筋を教えてください?
学部4年生で研究をスタートしてから一貫して、植物と微生物との相互作用についての研究をしています。博士課程では、植物と微生物の相互作用の研究をもっと基礎科学的な視点で追求したいなと考え、研究科を変えて理学研究科に入学しました。博士課程で在籍していた研究室は、研究テーマを自分で自由に設定することができたので、研究室のテーマとは全く異なる植物―線虫間相互作用の研究をスタートしました。卒業後は英国のジョン・イネス・センターで博士研究員として4年間、アブラナ科のモデル植物であるシロイヌナズナとアブラナ科植物炭そ病菌の相互作用について研究しました。炭そ病菌が分泌するエフェクターという病原性分子が、どのように宿主植物の免疫システムをかいくぐって感染を成立させるか解明することがテーマでした。
そして、奈良先端大に赴任した2021年から、博士課程の時に自身で系を確立した線虫の研究を再スタートさせました。
奈良先端大の研究教育の環境をどのように感じていますか?
日本の大学の中では、研究に打ち込み易い環境だと思います。私の研究に必要な顕微鏡など高性能な共用の機器がそろっていて、研究設備の環境は非常に優れています。また、総合大学に比べると、学生教育などに関連する事務処理が少ないのではないかと思います。助教の場合、短期の講義が中心で、研究と教育に費やす時間を自分の裁量で適切に配分することができます。また、同世代の若手教員が多く、研究活動に対する世代の共通認識があることから、異分野でも気軽に研究テーマについて話し合える雰囲気はメリットといえると思います。
今回、2025年11月に北海道大学理学部助教に赴任されますね?
私たちは研究者夫婦で、ちょうど今年の春から夫が北海道大学に准教授として着任しました。私たちは、「家族で一緒に暮らすこと」を大事にしているので、どちらかが異動する場合は、合わせて赴任できるように努力しています。前回は、私に合わせて夫が関西で職を探しましたが、今回は私が彼に合わせて北大の助教として赴任できることになりました。北海道大学でも、これまでと変わらず線虫など植物と微生物との相互作用のテーマで研究を続ける予定です。





