コンピュータソフトの開発過程が一目でわかる仕組みを世界で初めて規格化 複雑化、大規模化する製作状況に対応した「ソフトウェアタグ」

2008/11/12

【概要】
ソフトウェアについて、その開発過程や成果物(製品など)に関する情報を購入(発注)者と生産者が共有していれば、安心して安全に使えます。そのための仕組みとして「ソフトウェアタグバージョン1.0」を規格化いたしました。
「ソ フトウェアタグ規格技術委員会」が手掛けた規格化です。この委員会は、株式会社富士通研究所、株式会社日立製作所、日本電気株式会社、シャープ株式会社、 株式会社SRA先端技術研究所、株式会社東京証券取引所、株式会社東芝、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、株式会社デンソー、株式会社 NTTデータ、独立行政法人情報処理推進機構、大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学により構成されます。
規格化の具体的な内容は、ソフトウェア 販売者(受注者)が、開発時に得られる種々の実証データ(エンピリカルデータ)を「ソフトウェアタグバージョン1.0」の規格に従って収集し、発注者に提 出します。これで発注者は納入されたソフトウェアの品質の検証、適正なソフトウェア製品の選択ができるようになります。
また、問題発生時の対応が迅速になり、透明性の拡大により法的な問題の発生を予防し、早期の公正な解決を促がすことが期待されます。
今 回の規格化は、文部科学省 次世代IT 基盤構築のための研究開発「エンピリカルデータに基づくソフトウェアタグ技術の開発と普及」(研究代表者:奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科ソフ トウェア工学講座教授 松本 健一、ソフトウェアタグの規格化担当:大阪大学大学院情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻ソフトウェア工学講座教授 井上 克郎)の一環として実施されました。
ソフトウェアタグ規格の初版の発表は、10月 29日に東京港区で開催されたエンピリカルソフトウェア工学研究会で行われました。募集人数を大きく超える参加希望があり、ソフトウェア開発に携わる産業 界からの参加者110名から、実用的利用に向け多くの質問や要望が寄せられ、タグ規格に関する具体的かつ熱心なディスカッションがありました。

【背景】
短期間化、複雑化が進む中、ソフトウェア開発の不透明さが次のような問題を起こしています。
・発注者が納品物の品質を検証できない。
開発者任せになっている。
・ユーザは要望に合ったソフトウェア商品を選択することができない。
機能と値段などの情報は入手できるが、品質や拡張性などについては検証する手段がない。
・問題が発生した場合、原因や責任の所在を突き止めることが困難である。
迅速な障害対応が困難、法的な係争に発展した場合、長期化する。
また、多重請負・オフショア(海外発注)開発などの複雑な開発体制や多重の受発注関係では、潜在的発注者(ユーザ)が多く存在しており、統制されたプロジェクトの管理を困難にし、管理コストを増大させています。

【目的】
ソ フトウェアタグは、ソフトウェアの開発成果物や開発の過程で副次的に収集されるデータ(実証データ/エンピリカルデータ)を、開発したソフトウェアに付随 して流通させるものです。これによりソフトウェア利用者が対象ソフトウェアの開発過程や品質保証のプロセス、設計書やプログラムなどの成果物の品質情報を 入手でき、安心して安全なソフトウェアを利用することを目指すものです。
また、ソフトウェアタグは、プロジェクト進行中にプロジェクト管理のため の定量的データを共有するために用いることも可能で、このときに発生した問題をソフトウェア発注者と受注者が力をあわせることにより、早期発見、早期解決 ができます。同時にソフトウェアタグに残された記録をみることにより発注者と受注者の間の紛争解決にもつながります。

【効果】
 これまでソフトウェア開発企業間で統一されておらず、難しかった以下の作業を効率的に行えます。
・ユーザによる適正なソフトウェア製品の選択の促進
・問題発生時の対応の迅速化
・透明性の拡大による法的な問題の発生の予防と早期の公正な解決の促進
ソフトウェアタグには以下の項目をはじめとした、様々な利用シーンが想定されます。
・委託開発時、ユーザが開発状況を知る。
・重大問題発生時の原因究明や法的紛争時に第三者による評価を行う。
・ソフトウェア部品等の評価を行う。

【規格】
  ソフトウェアタグ規格は、開発プロジェクト情報、開発プロジェクト進捗情報から構成されます。開発プロジェクト情報には、基本情報(プロジェクト名、開発 組織の情報)、システム情報(システム構成、システム規模)、開発情報 (開発手法、開発体制、プロジェクト期間)等が含まれます。開発プロジェクト進捗情報には、成果物の履歴(要件定義書、設計書、ソースコード、テスト計 画・実施書)、品質情報(レビュー状況、レビュー作業密度、レビュー指摘率、欠陥件数、欠陥対応件数、欠陥密度、欠陥指摘率、静的チェックの結果)、計 画・管理情報(プロセス管理情報、会議実施状況、累積リスク項目数、リスク項目滞留時間)が含まれます。規格は表1に示すような表形式で定義されていま す。

【体制】
ソフトウェアタグ バージョン1.0は、文部科学省 次世代IT 基盤構築のための研究開発「エンピリカルデータに基づくソフトウェアタグ技術の開発と普及」の委託により推進されているStagE(Software Traceability and Accountability of Global Software Engineering)プロジェクト(研究代表 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科ソフトウェア工学講座 教授 松本 健一)の一環として規格化されました。規格化にあたって、ソフトウェアタグ規格技術委員会では2007年7月から2008年5月まで14組織27名の委員 により、以下のプロセスを経て検討されました。
1.委員からの必要なメトリクスの提案
2.プロジェクト、プロセスの大分類とその下の中分類の導入
3.種々の規格との整合性チェック
4.利用シーンの検討
5.項目の整理、統合
ソフトウェアタグ規格技術委員会構成組織(順不同)
・株式会社富士通研究所
・株式会社日立製作所
・日本電気株式会社
・シャープ株式会社
・株式会社SRA先端技術研究所
・株式会社東京証券取引所
・株式会社東芝
・独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
・株式会社デンソー
・株式会社NTTデータ
・独立行政法人情報処理推進機構
・大阪大学
・奈良先端科学技術大学院大学

【関連情報】
・ソフトウェアタグ規格ver. 1.0は以下からダウンロードできます。
http://www.stage-project.jp/seika_dl.php
・エンピリカルソフトウェア工学研究会のプログラムと資料は以下からダウンロードできます。
http://www.stage-project.jp/conf/2008-01.html

【本プレスリリースに関するお問い合わせ先】
研究代表者
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 ソフトウェア工学講座
松本 健一 教授
TEL 0743-72-5312 E-mail: stage-contact@is.naist.jp

ソフトウェアタグの規格化担当(研究分担者)
大阪大学大学院情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻 ソフトウェア工学講座
井上 克郎 教授
TEL 06-6850-6571 E-mail stage-contact@is.naist.jp

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