株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)と国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学(以下、NAIST)は、企業が効率的な働き方による事業成長をめざすにあたり、チームが高いパフォーマンスを発揮するために重要とされるShared Mental Model(以下、SMM)をSlackやMicrosoft Teamsなど日常のビジネスチャット上のメッセージからAIでリアルタイムに推定する技術(以下、本技術)を世界で初めて開発しました。また、本技術の研究開発に関する論文がHuman Computer Interaction分野の難関国際学会「ACM CHI conference on Human Factors in Computing Systems (以下、「CHI 2026」)」に採択されました。
各企業における業務内容が高度化し、複雑性が増す現代において、チームが効率的にパフォーマンスを発揮するには、チームメンバーが「仕事の進め方」、「役割分担」、「お互いの得意・不得意」についてどれだけ共通の認識を持っているかを表す指標であるSMMスコアを継続的に把握して高いレベルで維持することが重要とされています。一方で、SMMスコアの主な把握方法は専門家によるアセスメントやアンケート調査であるため、準備や実施・分析に一定の時間や労力がかかるうえ、結果が得られるまでにタイムラグが生じやすく、日々変化するチーム状態を継続的に把握することが難しいという課題がありました。
今回両者が開発した本技術は、ドコモが独自に開発したグラフニューラルネットワーク(以下、SMM推定エンジン)を用いてチームが日常業務で利用しているSlackやMicrosoft Teamsなどのチャットツールのメッセージを解析することにより、チームのSMMスコアをリアルタイムに推定し、チーム状態の変化を可視化するものです。チャットツールのメッセージを複数のAI(LLM)によって「情報共有」、「質問」、「感謝」など11カテゴリに分類し、その後特定カテゴリのメッセージがチーム内で誰から誰にどのように伝達されているかという指向性をSMM推定エンジンで解析することで、チームのSMMスコアを自動的に算出します。本技術では従来の手法のようにアンケート調査をする必要がないため、コストやチームメンバーの時間・労力といった負担を軽減し、リアルタイムに継続的なモニタリングをすることが可能になります。また、専門家によるアセスメントのように人が介在しないため、チームメンバーの発言内容を他者が個別に確認・評価することなく分析でき、プライバシーが守られるという秘匿性の高さも特長としています。
本技術を活用することで、チームのマネージャーやリーダーは自チームのSMMスコア低下をリアルタイムに把握できるようになり、SMMスコア向上にむけた前提知識の共有や目的の再確認といったコミュニケーション施策を適切なタイミングで行うことが可能になります。また、チームに新しいメンバーが参画した際にも、時間の経過とともにSMMスコアが上昇傾向にあるか、すなわちオンボーディングがうまくできているかを把握することもできます。
本技術の開発および有効性の検証のため、ドコモ社内において実際にビジネスチャットのデータを用いた実証実験を実施したところ、メッセージの内容、カテゴリ、指向性の3つの情報をあわせて分析する本技術を活用することで高精度なSMMスコアの推定が可能になることが確認できました。今後は、ドコモ以外の企業や組織での実証実験を通じて本手法のさらなる性能向上や技術検証を行う予定です。
今後も両者は、本技術によってチームが効率的にパフォーマンスを発揮できる働き方を実現し、多くの企業の事業成長や生産力向上に寄与することをめざしてまいります。