平成26年度 学位記授与式を挙行(2014/09/25)

イベント報告 2014/09/29

9月25日(木)、先端科学技術研究推進センター研修ホールにおいて学位記授与式を挙行しました。

小笠原直毅学長が、出席した14名の修了生一人ひとりに学位記を手渡し、門出を祝して、式辞を述べました。

式終了後には記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合いました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】
情報科学研究科 7名
計  7名

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科 3名
バイオサイエンス研究科 3名
物質創成科学研究科 3名
計  9名

総計 16名


【学長式辞】

本 日、修士の学位を授与された7名の皆さん、博士の学位を授与された9名の皆さん、おめでとうございます。学位を授与された方々の中には、10名の留学生の 方がいらっしゃいますが、これで、本学で学位を取得された留学生の方々は、49国カ国327名となり、本学修了生のネットワークが、日本だけでなく、世界 に広がっていくことを嬉しく思います。

さて、前期課程を修了された方の中には、後期課程に進学し、さらなる研鑽を目指す方もいらしゃいま すが、多くの方は、修士・博士の学位を持つ、研究者、技術者、あるいは専門的職業人として、産業界あるいはアカデミアで、自立した、新しい生活がこれから 始まります。今、世界は変わりつつあります。情報、人、物が国境を越えて流動化し、そうした世界の中でアジアやアフリカ諸国の経済発展が進んでいます。そ の結果、地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化などの問題と人類の活動を両立させ、人類社会の持続的な発展を実現するための取り組みの重要性がますま す鮮明になっています。そのためには、大量生産・大量消費により物質的な豊かさを追及してきた今までの社会発展モデルの変革が必要であり、その意味で、予 測困難な時代、踏襲すべきモデルや先例が無い時代となっていることが指摘されています。

同時に、科学技術の新しい展開により新しい世界を 築く可能性が広がっていることも指摘しておかなければなりません。全世界がインターネットでリアルタイムにつながれ、様々なデータを一体的に活用すること が可能な時代になり、それを支える新しい社会が作られることが期待されています。また、ゲノムDNAの塩基配列解析技術の革新等により、自然界の様々な生 物について、様々な細胞活動、生物活動に関する膨大な情報を得ることが可能な時代になり、ビッグデータバイオロジーという言葉に象徴されるようなパラダイ ムシフトも起こりつつあります。物質の分野でも、分析・計測技術の高度化により、新しい物質世界の姿が見えるようになり、それは、情報科学、バイオサイエ ンスの進展も支えています。今後の科学技術の展開は、私たちの現在のイメージを越えたものになるのではないでしょうか。

皆さんには、奈良 先端大の修了生として、こうした新しい科学技術の創造と活用により、新たな社会、世界の創造に、主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。それに は何が必要か、最近、文部科学省の委員会で議論されている事を紹介したいと思います。これは、学術研究についての議論ですが、技術開発にも通じるもので す。

学術研究が「国力の源」としての役割を果たすために基本となることは、何よりも新たな知の開拓に挑戦することであり(挑戦性)、研究 者は常に自らの研究課題の意義を自覚し、明確に説明しなければならない。グローバル化や情報化等が加速する中、新たな知の開拓のためには、学術研究の多様 性を重視し、伝統的に体系化された学問分野の専門知識を前提としつつも、細分化された知を俯瞰し総合的な観点から捉えることが必要であり(総合性)、異分 野の研究者や国内外の様々な関係者との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出すことも求められる(融合性)。また、世界の学術コミュニティーにおけ る議論や検証を通じて研究を相対化することにより、世界に通用する卓越性を獲得したり新しい研究枠組みを提唱し、世界に貢献する必要がある(国際性)。

したがって、研究者は自己の専門分野の研究を突き詰めた上で、分野、組織などの違い、さらには国境を越えて、異なる価値や文化と切磋琢磨しつつ対話と協働を重ね、社会の変化に柔軟に対応しながら、新しい卓越知を生み出すために不断の挑戦をしていくことが求められる。

さ らに、基礎的な研究の成果とその社会的展開の距離がどんどん近くなっていることも、現在の科学技術の特徴の一つであり、両者は新しい社会の形成への科学技 術の貢献のための両輪です。その意味で、基礎研究を指向する方もその社会展開という視点もきちんと持ち、また、様々な課題解決のための技術開発はその活 用、普及を指向する方も、基礎科学技術の新たな展開に注目し続けていただきたいと思います。

こうした皆さんの将来を考える上で、最近、感 激した事を紹介したいと思います。先日、本学の学生さんのキャリア支援プログラムの一貫として、本学の情報・バイオ・物質で博士の学位を取得し、現在、民 間企業の第一線で活躍されている方々の講演会が開催されました。その中で、本学での基礎知識の習得はもちろんですが、学位論文研究を通して身につけた、課 題を発見し、その解決法を考え、実践し、その結果を評価し、様々な人と議論し、論文にまとめるという経験が、新たな環境で新たな課題に取り組むことを可能 にしていることを、生き生きと話してくれました。私は、皆さんの本学での学修と学位論文研究の経験が、皆さんの今後のクリエイティブな生活を保証している と確信しています。

さらに、奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、変化していく科学技術・社会の中で、 皆さんが持続的にクリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築していくことも奈良先端大の重要な役割であると教職 員は考えています。その仕組みの具体化は今後の課題ですが、私たち教職員は、今後も皆さんの常に最先端を目指す生活を支援していきたいと思います。

皆さん、学位授与、おめでとうございます。今後の活躍を期待しています。

平成26年9月25日 
奈良先端科学技術大学院大学長 小笠原直毅

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