平成27年度 学位記授与式を挙行(2016/03/24)

イベント報告 2016/03/29

 3月24日(木)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う367名の修了者を送り出しました。

 授与式では、小笠原直毅学長から学位記が手渡され、式辞が述べられた後、中村茂一本学支援財団専務理事から祝辞が述べられました。

 また、同財団が優秀な学生を表彰するNAIST最優秀学生賞の表彰を行い、14名の受賞者に同財団から賞状及び賞金が贈られました。

 式終了後には祝賀会・記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合っていました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】
情報科学研究科          125名(うち短期修了5名、留学生9名)
バイオサイエンス研究科      105名(うち留学生4名)
物質創成科学研究科         98名(うち留学生2名)
計 328名(うち短期修了5名、留学生15名)

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科           12名(うち短期修了1名、留学生8名)
バイオサイエンス研究科       9名
物質創成科学研究科         17名(うち短期修了5名、留学生2名)
計 38名(うち短期修了6名、留学生10名)

【論文提出による博士学位取得者】
情報科学研究科1名

総計 367名(うち短期修了11名、留学生25名)

【学長式辞】
 本日、修士の学位を授与された328名の皆さん、博士の学位を授与された39名の皆さん、おめでとうございます。

 また、修了生のご家族の皆さんにもお祝いを申し上げるとともに、修了生の学生生活をご支援いただいたことを、本学を代表して感謝いたします。さらに、留学生の方々の勉学・生活にご支援をいただいた個人・団体の皆様にも感謝の意を表したいと思います。

 皆さんを含めて、奈良先端大の前期課程の修了者は6,911名、後期課程の修了者も1,310名となり、本学の修了生のネットワークが広がっていくことを嬉しく思います。

 今年は、バイオサイエンス研究科で最初の前期課程修了者が修士の学位を授与されてから20年になります。気が付いた方もいらっしゃると思いますが、それを記念してバイオ1期生による記念のヤマザクラが大学に贈られました。その銘板には88名の修了者の名前が刻まれています。

 皆さんも本学で築いた人的ネットワークを今後も大事にし、皆さんの将来の生活に役立てていっていただきたいと思います。

 こうしたネットワークは世界にも広がっています。今日、修士・博士の学位を授与された方々の中には、世界16カ国からの25名の留学生の方がいらっしゃいますが、これで、本学で学位を取得された留学生の方々は、57カ国415名となります。

 その結果、例えば、インドネシアでは、既に、30名以上の修了生の方が様々な大学で教育・研究に活躍しています。その中の2人は、インドネシアのトップ100科学者に選ばれたそうです。また、いくつかの大学で、新しい研究プロジェクトの立ち上げの中心メンバーになっています。

 そして、インドネシアでの同窓会活動も始まっており、その助けも得て、本学の最初の海外オフィスをインドネシア・ボゴール市に、この4月、開設することになりました。

 奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、変化していく科学技術・社会の中で、皆さんが持続的にクリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築して行くことも重要な役割であると教職員は考えています。日本と世界で活躍する修了生の方々とのネットワークを広げていきたいものです。

 今、世界は変わりつつあります。言い尽くされたことですが、情報、人、物が国境を越えて流動化し、世界で経済発展が進んでいます。その結果、地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化などの問題と人類の活動を両立させ、人類社会の持続的な発展を実現するための取り組みの重要性が、ますます鮮明になっています。そのためには、ある意味では画一的な物質的な豊かさを追及してきた今までの社会発展モデルの変革が必要であり、その意味で、踏襲すべきモデルがない時代となっています。

 こうした変化の背景には、皆さんが本学でその一端を学んだように、科学技術が大変革の時代にあることがあります。例えば、我が国の科学技術の推進方策を議論している文部科学省の会議で、「現在の研究の最前線では、測定、分析、計算技術の進展等により自然現象や社会現象に関する認識の範囲が急速に拡大しており、情報量の増加、計算科学の飛躍的進歩による情報処理速度の加速、交通・通信ネットワークの進展による情報の伝播・共有の高速化などを背景に、学術研究自体が急速に拡大し、その有り様が変化している。生命科学、材料科学など広範な領域で新たな学際的・分野融合的領域が展開するなど、知のフロンティアが急速に拡大している。そして、ゲノムデータ、地球観測データ、人の活動データ等の多様なビッグデータの統合により新たな知を創出するデータ科学が台頭しつつある。」と議論されています。

 最近、囲碁において、人工知能が人間に勝ち越したことが話題になったように、特に、ICT技術の発展は急速です。前期課程の皆さんが入学された2年前のキーワードはビッグデータでしたが、今は、Internet of Things(IoT)、人工知能(AI)です。そして、あらゆるものがネットワーク化されることにより、「サイバー世界」と「実世界」が融合した、必要なもの・ことを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供でき、社会の様々なニーズに対し、きめ細やかに、かつ、効率良く対応できる「超スマート社会」ともいうべき社会が展望されています。ICT技術は、先進国と言われている社会だけでなく、様々な社会基盤に展開することにより、新しい社会システムが生まれるかもしれません。

 また、ICT技術は科学技術の発展の駆動力にもなりつつあります。ライフサイエンスの分野ではデータ駆動型サイエンスという新しいパラダイムが生まれ、物質科学の分野でもマテリアルズインフォマティックスという言葉も登場しています。

 皆さんには、奈良先端大の修了生として、こうした新しい科学技術の創造と活用に、主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。

 そのために、皆さんに求められていることは何でしょうか。最近、機会がある毎に紹介しているのでが、文部科学省の委員会の報告書にある、以下の文章を是非紹介したいと思います。

 知のフロンティアが急速に拡大している現代において、研究者に求められていることは、何よりも知を基盤にして独創的な探究力により新たな知の開拓に挑戦することであり、研究者は常に自らの研究課題の意義を自覚し、明確に説明しなければならない(挑戦性)。新たな知の開拓のためには、学術研究の多様性を重視し、伝統的に体系化された学問分野の専門知識を前提としつつも、細分化された知を俯瞰し総合的な観点から捉えることが重要である(総合性)。また、異分野の研究者や国内外の様々な関係者との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出すことも求められる(融合性)。さらに、世界の学術コミュニティーにおける議論や検証を通じて研究を相対化することにより、世界に通用する卓越性を獲得し、世界に貢献する必要がある(国際性)。

 皆さんには、こうした姿勢で、新たな社会、世界の創造に、主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。

 私は、本学での専門知識の習得はもちろんですが、学位論文研究を通して身につけた、課題を発見し、その解決法を考え、実践し、その結果を評価し、様々な人と議論し、論文にまとめるという経験、そして、本学で築いた様々な人的ネットワークが、皆さんの今後の創造的な生活を保証していると確信しています。

 皆さん、おめでとうございます。今後の活躍を期待するとともに、今後も奈良先端科学技術大学院大学は、皆さんの活躍を支援していきたいと思います。

平成28年3月24日 奈良先端科学技術大学院大学長 小笠原直毅

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