〔プレスリリース〕植物はDNAに傷を負うと成長を一時停止させる仕組みをもっている ~ストレスに自在に対応する新たなメカニズムを解明 食糧や植物バイオマスの増産に期待~

研究成果 2017/09/21

 バイオサイエンス研究科の梅田正明教授らは、植物がDNAに傷を負うというストレスがあった時に細胞分裂を一時停止して成長再開の準備を整えるという新たなメカニズムを発見しました。動物の場合、DNAが損傷した時点で細胞死に至りますが、植物はストレスに曝されても、細胞分裂のオンオフを切り替えて生き続ける巧妙な生存戦略を裏付けました。

 梅田教授らは、シロイヌナズナのDNAに損傷を与えると根の伸長が停止するが、細胞分裂を調節する遺伝子の活性制御に関わる転写因子というタンパク質の変異体では根が伸び続けることを発見しました。そこで、この転写因子について解析したところ、DNA損傷を受けるとタンパク質が顕著に蓄積して、細胞分裂を促進する働きをもつ遺伝子群の発現を抑制することを明らかにしました。これらの遺伝子群の発現は、この転写因子と近縁の転写因子により逆に誘導されることから、植物はストレスの状況に応じてこれらの転写因子を使い分けることにより、成長を自在に止めたり再開させたりする仕組みをもつことが明らかになりました。

 本研究の成果は、転写因子の発現や機能を改変することにより、ストレス下でも細胞分裂を止めずに成長を続けさせ、食糧や植物バイオマスを増産させる技術開発に、新たな方向性を与えるものと期待されます。この研究成果は平成29年9月21日付けでNature Communications(オンラインジャーナル)で掲載されました。

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