令和元年度学位記授与式を挙行(2020/3/24)

イベント報告 2020/03/26

 3月24日(火)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う359名の修了生を送り出しました。

 今回の授与式は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため時間・規模を縮小し、学生の出席者は令和2年3月修了生の代表者のみでの開催となりました

 授与式では、横矢学長から修了生代表者に学位記が手渡され、式辞が述べられた後、本学支援財団により優秀な学生を表彰するNAIST最優秀学生賞14名の受賞者に同財団理事長代理として本学垣内理事・副学長から賞 状及び副賞が贈られました。

 また、当日は、式典の模様をインターネットによりリアルタイムで配信したほか、式典終了後の会場を記念撮影のために開放することで、出席できなかった修了生や御家族も喜びを分かち合いました。

 ※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】

情報科学研究科     2名(留学生1名)

先端科学技術研究科   321名(うち短期修了1名、留学生19名)

 計 323名(うち短期修了1名、留学生20名)

【博士後期課程修了者】

情報科学研究科     12名(うち留学生3名)

バイオサイエンス研究科 12名(うち留学生2名)

物質創成科学研究科   9名(うち短期修了1名、留学生3名)

先端科学技術研究科   2名(うち短期修了2名)

計 35名(うち短期修了3名、留学生8名)

【論文提出による博士学位取得者】

バイオサエンス研究科     1名

総計 359名(うち短期修了4名、留学生28名)

【学長式辞】

 最初にお話しておかなければならないことがあります。本日の学位記授与式が、この度の新型コロナウイルスの感染拡大の防止のためとは言え、修了生が少数の代表者のみの出席という、大幅に縮小された異例の形式になったことは残念でなりません。皆さんが人生の節目となる学位記授与式を仲間と一緒に迎えたいであろうことを思い、私としては苦渋の決断でした。これからは、修了者全員がこの場に集まっておられるつもりで式辞を述べます。

 本日、昨年度設置された先端科学技術研究科の1期生を中心とする修士の学位を授与された323名の皆さん、先端科学技術研究科の博士後期課程を短期修了された2名および論文提出による博士学位の取得者1名の方を含む、博士の学位を授与された36名の皆さん、おめでとうございます。また、この日を迎えられたご家族の皆さんにもお祝いを申し上げます。

 さらに、留学生をはじめとする多くの修了生の勉学・生活にご支援をいただいた、個人ならびに団体の皆様に、本学を代表して感謝の意を表したいと思います。

 今年度は、本学が学生の受け入れを開始し最初の修了生を出してから27年目を迎えますが、皆さんを含めて、これまでの奈良先端大の博士前期課程の修了者は8,332名、後期課程の修了者と論文提出による博士学位の取得者を合わせた人数は1,701名となり、大学創設以来の学位取得者の延べ人数は10,000の大台を超え、10,033名となりました。本学の修了生ネットワークの広がりが1つの区切りを迎えたことになります。

 こうしたネットワークは世界中に広がっています。今日、修士・博士の学位を授与された方々の中には、世界11カ国・地域からの28名の留学生の方がいらっしゃいますが、これで、本学で学位を取得された留学生の方々は、64カ国・地域からの698名となります。

 今日、前期課程を修了された皆さんの中には、後期課程に進学し研究者を目指してさらなる研鑽を積む方と、社会に出てプロの専門技術者あるいは研究者として新しい社会人生活を始める方がいらっしゃいます。また、後期課程を修了した方の多くは、プロの研究者としてのキャリアがスタートすることになります。皆さんは自身の将来をどのように描いておられるのでしょうか。

 現在、科学技術は大変革の時代を迎えており、ここ数年の科学技術のキーワードは、ハードウェアとソフトウェアの両面でのICT技術の進歩に支えられたInternet of Things (IoT)、人工知能(AI)、データサイエンスです。

 このようなICT技術の変革は、分野を問わず、研究の方法論を変えることになり、あらゆる科学技術分野への影響が顕著になってきました。本学の基盤となっている学術分野に限っても、例えば、バイオサイエンス分野では既にバイオインフォマティックス(Bio-Informatics)と呼ばれる研究領域が確立されており、物質科学の分野でもマテリアルズインフォマティックス(Materials Informatics)と呼ばれる研究領域が注目されるようになっています。

 すなわち、あらゆるものがインターネットにつながり、「リアル世界」と「サイバー世界」が融合した「超スマート社会」に向けて、リアルタイムで収集・蓄積され、ネットワークを介して世界中からアクセス可能な大規模データの解析に基づく、データ駆動型サイエンスあるいはAI駆動型サイエンスと呼ぶべき新しい研究パラダイムが生まれているのです。

 科学技術の大変革は社会にも大きな影響を与えます。2040年代には、今存在している職業の半分以上がなくなり、新しい職業が生まれており、産業の構造が大きく変わっているだろうと言われています。これは多くの人の職業が変わるということを意味しており、すでに一部の業種では、その兆しが現れてきています。

 2040年代というと、まさに、皆さんが社会の中核を担う時代です。

 これから皆さんに求められることは何でしょうか。科学技術に関わる研究者についてよく言われるのは以下の4つのキーワードです。

  1. 知を基盤にして独創的な探究力により、新たな知の開拓に挑戦する「挑戦性」
  2. 細分化された知を俯瞰し総合的な観点から捉える「総合性」
  3. 異分野との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出す「融合性」
  4. 世界の学術コミュニティーにおいて通用する卓越性を獲得し、世界に貢献する「国際性」

 この「挑戦性」「総合性」「融合性」「国際性」は、研究を職業とする人だけに当てはまることではないと思います。皆さんは、職種を問わず、理系・文系の枠を越えて広い視野を持つことによって社会の変化に柔軟に対応し、新しい分野を開拓し続けることのできる人材として、未来社会の創造と発展に主体的に取り組んでいくことによって、新しい時代を切り拓いていって頂きたいと思います。

 このためには、何事にも「一歩、前に踏み出す」という精神、すなわち、挑戦心と開拓心を持ち続けることが大事ではないでしょうか。

 情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科を統合した先端科学技術研究科の設置は、このような時代背景を踏まえたものです。

 皆さんは、本学でそれぞれの分野において専門知識を習得したわけですが、それ以上に、修士論文研究や博士学位論文研究を通して身につけた、課題を発見し、その解決法を考え、実践し、その結果を評価し、様々な人と議論し、論文にまとめるという経験が大事な財産です。

 苦しいこともあったであろう経験、そして、本学で築いた様々な人的ネットワーク、すなわち、人と人の絆(Kizuna)が、皆さんの将来を保証すると確信しています。

 奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、大きく変化して行く科学技術と社会の中で、皆さんが新しいことに積極的にチャレンジし、クリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築して行くことも重要な役割であると教職員は考えています。

 今年度は、昨年の11月10日の日曜日にオープンキャンパスに合わせて、ホームカミングデーを実施し、同窓会と連携して、修了生との懇親および意見交換の場を設けました。その際には、修了生の本学への思いや期待を聞かせていただきました。今後も、このようなイベントを継続して実施したいと思っていますので、その時には、是非、在学生のロールモデルとして帰ってきてください。

 また、同窓会に加えて、インドネシアとタイに設置している海外サテライトオフィス等を通して世界で活躍する修了生の方々とのネットワークも強化したいと考えています。皆さんもこのような活動に積極的に参加して頂きたいと思います。

 最初に述べましたように、今、世界は新型コロナウイルスの出現による困難に直面しています。これからも想定していなかった様々な困難が待ち受けているでしょうが、我々はそれらを乗り越えていく必要があります。「明けない夜はない」のです。そのためにも、常に「一歩、前に踏み出す」という心構えが求められます。

 最後に、皆さんの今後の益々の活躍と一層の飛躍を期待していることをお伝えして、私からの言葉といたします。本日は誠におめでとうございます。

令和2年3月24日 奈良先端科学技術大学院大学長 横矢直和

【同窓会会長 祝辞】

 奈良先端科学技術大学院大学を修了される皆さん、本日は大変おめでとうございます。ご両親、ご家族の皆様ならびに関係各位の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。

 これまでに、奈良先端大の修了生は約9,000名を数えます。多くの先輩方が国内外の大学、研究機関、大企業などで活躍しており、奈良先端大のブランドを不動のものにしています。皆さんが社会で活躍することで、その価値をさらに高めていってくださることを期待しています。

 奈良先端科学技術大学院大学 同窓会では、修了生や在学生を支援する様々な事業を展開しています。皆さんが社会に出た後に、本学で学んだことに誇りを感じたり、本学との繋がりを実感したりする機会が多々あることと思います。また、そうした有り難みは年を経るごとに強まっていくことでしょう。ぜひ本学同窓会に御入会いただき、その繋がりを最大限に活用していただければと思います。

 私自身は、1998年に博士後期課程を修了した本学の2期生です。私が入学した当時は、まだ修了生もほとんどおらず、本学の知名度は現在とは比較にならないものでした。奈良先端大の魅力は知名度があることでもなく、歴史があることでもありません。世界で活躍する先生方と、熱い志をもった学生が結集して、新しいことにチャレンジする気概に溢れていることが、最大の魅力だと思います。そして、その思いは20年以上経った今、ますます強まっています。

 新型コロナウィルスの騒動は、我々ひとりひとりが地球規模で密接につながりあっていることや、我々が強固だと信じていた現代社会が実はもろくてか弱いことを、図らずも深く実感する機会となりました。地球温暖化や少子高齢化など喫緊の課題が山積し、AIをはじめとする先端科学技術が社会のあり方を根底から変えつつあります。常に地球規模で物事を考える姿勢、変化を恐れずにむしろ追い求める姿勢、ピンチをチャンスと捉えて困難を楽しむ姿勢、がこれまで以上に重要な時代と言えるでしょう。

 入学以前に所属していた大学や高専などを飛び出して、新しいことにチャレンジしようという思いで奈良先端大の門を叩き、本日修了する皆さんは、こうした時代の要請にふさわしい心構えを身につけていると思います。皆さんが日々奈良先端大で学んできたことを発揮すれば、社会に出てからも大活躍されることは間違いない、そう確信しています。社会に巣立つ皆さんひとりひとりの活躍が、人類の未来を変えていきます。それぞれのお立場で、世界を少しずつ良くしていってくださることを願います。

 最後になりましたが、改めまして、本日は修了おめでとうございます。

奈良先端科学技術大学院大学 同窓会 会長 清川 清

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