〔プレスリリース〕「眩しくない」近赤外線カラー眼底カメラの実用機を開発、大阪大学医学部附属病院での検証を開始

研究成果 2020/12/25

 奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市、学長:横矢直和)先端科学技術研究科 物質創成科学領域 光機能素子科学研究室の太田淳教授と暗闇でもカラー撮影を可能にする「近赤外線カラー暗視技術」の開発・設計・製造を行う株式会社ナノルクス(本社:茨城県牛久市、代表取締役:祖父江基史)は、近赤外光を光源とする撮影時の可視光域の照明光を必要としない「眩しくない眼底カメラ」の医療現場で検証使用できる実用機の開発に成功しました。さらに、株式会社ナノルクスと共同研究を行う大阪大学大学院医学系研究科眼科学(教授:西田幸二)及び大阪大学医学部附属病院AI医療センター(特任教授(常勤):川崎良)は、当実用機を用いて同大学医学部附属病院(以下、「阪大病院」という。)での検証を開始しました。(検証期間:2020年10月から2021年3月まで)

 通常の眼底カメラは、可視光のフラッシュを用いて眼底を撮影するためとても眩しく、無散瞳では1回目の撮影で縮瞳するのでそれ以降の繰り返し撮影が困難であることや小児での撮影が困難であるなどの制限がありました。本カメラは、近赤外光のみで、フラッシュ光を用いないため、従来の眼底カメラよりもさらに侵襲が低く、安全性が高まり、無散瞳で眼球の血管を含む構造の広範囲・詳細な観察を行うことができます。さらに、眼底映像を簡易に患者の負担を小さく撮影できるようにすることで、眼底撮影がより容易になり、眼疾患のみならず、高血圧などの生活習慣病の早期発見にも寄与することが期待されています。

 今回開発された「眩しくない眼底カメラ」は、ナノルクスの近赤外線カラー眼底カメラ NLX-FD001に、近赤外線照明と一体化した円筒レンズを組み合わせることで、小型化と高操作性を実現しました。また、阪大病院での検証は、近赤外光眼底カメラを用いて正常者および実患者において主要な解剖学的部位と異常所見の撮影を行い、医師の使用感等を確認することが目的であり、近赤外光眼底カメラにより低侵襲に検査することができれば極めて臨床的意義が高いものです。これまで10件を超える病院現場での撮影を行い、実用動作の上で支障ないことが確認できています。本研究検証は2021年3月まで継続する予定です。

 本カメラ開発は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業ACCEL(JPMJAC1601)の支援を得て進められました。

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