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令和7年度学位記授与式を挙行(2026/3/24)

令和7年度学位記授与式を挙行(2026/3/24)
<式辞を述べる塩﨑学長>

 令和8年3月24日(火)、ミレニアムホールにて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う418名の修了者を送り出しました。
 今回の授与式は、課程ごとに開催する2部制で行われました。
 授与式では、塩﨑学長から博士前期課程の修了生の代表者及び博士後期課程全員に学位記が手渡され、式辞が述べられた後、来賓から祝辞が述べられました。続いて本学支援財団が優秀な学生を表彰する制度であるNAIST最優秀学生賞の受賞者14名に対して、同財団理事長代理として増田専務理事から賞状及び副賞が贈られました。最後に学生による音楽演奏が行われ、修了生の門出を祝しました。
 式典終了後、会場を開放し、多くの修了生が指導教員や在校生も交えて記念撮影を行っていました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

 【博士前期課程修了者】
                           先端科学技術研究科   337名(うち留学生20名)
 【博士後期課程修了者】
                           先端科学技術研究科    81名(うち留学生34名)
                                  総計   418名(うち留学生54名)

【学長式辞】

 まずは先ほど、本学の学位を授与された皆さんに、心からのお祝いを申し上げます。皆さんの人生において特に記念すべきこの日に立ち会えることは、私にとっても大きな喜びです。また、本日ご祝辞を賜ります、本学支援財団理事長・小林哲也様、本学同窓会会長の清川 清先生に深く感謝を申し上げます。

 ご家族や友人、そして、皆さんを、熱意をもって指導してこられた教員の方々にもお祝いを申し上げたいと思います。加えて、今、このステージ上にいらっしゃる役員や研究科長をはじめとする方々や、様々な形で皆さんの本学での学びをサポートしてくださった教職員にとっても、今日という日は特別な日になります。本日、ここにいらっしゃらない方々も含め、皆さんの奈良先端大での学びを支えてくださった全ての方々に、まずは大きな感謝の拍手を送りましょう。

 さて、皆さんはこれからこの奈良先端大を離れ、社会のさまざまな分野で活躍するために、それぞれの道で真の"プロフェッショナル"になることを目指していくわけです。私たちが自らのキャリア、そして人生を歩む上で、誰もが必ず持っている「資本」は時間です。この時間という資本をどれだけ投資するかということが、才能よりも重要であることを示す興味深い研究があります。Anders Ericssonという米国フロリダ州立大学心理学部の教授だった方の研究ですが、彼はバイオリニストやピアニストの練習時間を調査し、トップレベルに到達するには累積で1万時間の練習時間が必要であるという結果を得ました。特に興味深い発見は、1万時間よりも顕著に少ない練習時間でトップレベルに達した、いわゆる天賦の才に恵まれたと言えるような音大生や演奏家は見つからなかったということです。Ericssonらはさらに、バレーダンサーの練習時間とレベルの相関についても調査しましたが、やはり1万時間という数字が得られたということです。

 同様の結果は、他の研究者によってチェス選手やアスリートについても報告されていて、一流になるために必要な「1万時間の法則」と言われることもあるそうです。また、真剣な訓練を1万時間積むには約10年は必要なことから、何かの分野で世界クラスの専門家になるには10年はかかると考えられます。一流になるのに必要なのは、才能よりも時間を投資した努力ということです。

 科学研究の分野はどうでしょうか。私はもともと酵母菌の研究者ですが、酵母菌の研究からautophagyという現象を発見し、ノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典先生がその発見を報告した論文は1990年代に既に発表されていました。大隅先生はその後も精力的に研究を続け、成果を発表していましたが、注目が集まって大隅先生の論文の引用が急激に伸びたのは約10年後の2000年代の後半でした。また、昨年、同じくノーベル生理学・医学賞を受賞なさった坂口志文先生は、1985年に免疫反応を抑制する細胞について論文を発表していますが、分野内の他の研究者からは評価されない時期が続き、国際的に抑制性T細胞が認められたのはやはり10年後の1995年になってからでした。

 このようにキャリアを人生という長いスケールで見た時、その単位は10年あるいはそれ以上であることを示す例は数多く、短期的な合理性を目指す、いわゆる「タイパ」は、長い目で見ると必ずしも合理的とは言えないようです。大学や高等専門学校を卒業後、すぐには就職せずに本学でさらに学びを深めることを選んだ皆さん、あるいは社会に出てから改めて奈良先端大で学位を取得する道を選んだ皆さんは、ある意味、「短期の非合理」をあえて選ぶことで、長期的な合理の道を選んだと自信を持って頂きたいと思います。

 さて、その道で一流になるには10年ぐらいはかかるということをお話したところですが、もちろん10年が経つのをひっそりと待っていれば良いというわけではありません。14世紀ごろに吉田兼好が書いたとされる有名な随筆『徒然草』には次のようなことが書いてある部分があります:

芸を身につけるにしても、下手なうちは人知れず練習し、うまくなってから人前で披露するのが格好良いと思っているような人は、一芸も身につけることはない。まだ下手なうちから上手い人の間に入っていって、貶されたり笑われたりしても恥ずかしがらず、頑張りつづける人は、天性の才能などなくても停滞することなく年を経て、才能だけで稽古しない者を超えて最終的には名人の境地に至り、人に認められて並びなき名を得るのである。

 つまり、先ほどご紹介した、Ericsson教授の研究でも示されたように、大切なのは才能ではなく、その道でひたすら努力することが必要であること、しかも、どんどん恥をかくことが大事であるということを兼好法師は言っています。研究者としての自分の経験を振り返っても同じようなことが言えるように思います。稚拙な実験をしたり、下手な論文や学会発表をしたりして恥をかいては反省を繰り返すうちに、10年も経つとそれなりの専門家として認められるようになってきます。皆さんがこれから何に挑戦し、どのようなキャリアを歩むにしても、その分野の"プロフェッショナル"と認められるまでには長い年月がかかります。その間には大失敗や、恥ずかしい思いをすることもあるでしょう。でも、それが長期的には最も合理的な道であると信じ、胸を張って前進し続けてください。

 改めて、修了生の皆さんに心よりのお祝いを申し上げると共に、修了後も皆さんは奈良先端大コミュニティーの一員であり続けるということをここでお伝えしたいと思います。本学の同窓会は修了生のための国際的なネットワークの場となっていますので、是非、積極的に活用し、本学とのつながりを大切にしていってください。奈良先端大はこれからも発展し続ける大学であり、本日、皆さんが授与された学位の価値と評価もこれからさらに高まっていくはずです。また、皆さん修了生のこれからの成功と発展も、本学の価値と評価を高めることにつながっていくのです。

 最後になりますが、明日から始まる皆さんの次の10年の歩みも、また大きく実を結ぶことを心から祈念して、私からの式辞といたします。

2026 324
奈良先端科学技術大学院大学長
塩﨑 一裕

【支援財団理事長祝辞】

/news/files/20260401_syukuzi1.pdf

【本学同窓会会長祝辞】

/news/files/20260401_syukuzi2.pdf

令和7年度学位記授与式を挙行(2026/3/24)
<学位記を受け取る修了生>
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<NAIST最優秀学生賞の授与>
令和7年度学位記授与式を挙行(2026/3/24)
<課外活動団体NAIST Music Clubによる演奏の様子>

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