4月6日(月)、ミレニアムホールにおいて令和8年度入学式を挙行しました。
本学では、国内外を問わず、また出身大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力を持った学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、先端科学技術分野に対する強い興味と意欲を持った者の入学を積極的に進めており、このたび、455名の新入生を本学に迎えました。
式典では塩﨑一裕学長からの式辞が述べられた後、山下真奈良県知事、小紫雅史生駒市長及び西尾章治郎国際高等研究所所長から祝辞を賜りました。
最後に大蔵流による狂言が演能され式典に華を添えました。
【入学者数】
(博士前期課程)
先端科学技術研究科 378名(うち留学生41名)
(博士後期課程)
先端科学技術研究科 77名(うち留学生25名)
総計 455名(うち留学生66名)
【学長式辞】
本日、奈良先端科学技術大学院大学の博士前期課程に入学された378名の皆さん、博士後期課程に入学・進学された77名の皆さん、そしてそのご家族の方々に、本学の教職員を代表してお祝いを申し上げます。また、皆さんの新たなスタートをお祝いするために、ご祝辞をくださいます山下 真・奈良県知事、小紫 雅史・生駒市長、そして西尾 章治郎・国際高等研究所長に心よりお礼を申し上げます。
皆さんにとって、今日の新しいスタートが意義のある、祝うべきものである一番の理由は、大学院で学びを深めようと心に決め、その一歩を踏み出したということです。皆さんが大学院教育を受ける場として奈良先端大を選んでくださったことに、私たち教職員は誇りを感じています。また、皆さんにも奈良先端大で学ぶことに誇りを持って頂きたいと思います。文部科学省による直近の評価において、「教育」と「研究」の両方で最高評価を受けた国立大学は全国で2大学しかなく、そのうちの一つが奈良先端大です。また、本学は、文部科学省の「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」いわゆるJ-PEAKS事業に選抜された25大学の一つとして、これまでにない、近未来の研究大学を目指す取組みを昨年度からスタートさせています。大学名が示す通り、「先端」を追求し続ける本学の教育研究環境の中で、皆さんが自らの持つ可能性の「先端」を究めることを期待しています。
さて、最近の卒業式定番ソングにロックバンドRADWIMPSの『正解』というタイトルの曲があります。「なぜ、入学式で卒業ソングの話を?」と思われるかもしれませんが、この曲の中につぎのような歌詞が出てきます:
答えがある問いばかりを教わってきたよ
そのせいだろうか
僕たちが知りたかったのは
いつも正解など大人も知らない
皆さんが明日から取り組む大学院での学びは、これまで大学学部、あるいは高等専門学校まで積み重ねてきた学びとは大きく異なります。これまでは「答えがある問いばかりを教わってきた」かもしれませんが、奈良先端大では、最先端の研究に自ら取り組むことが学びとなります。「最先端の研究」とは、人類にとって未知の知識や技術を獲得するための挑戦であり、「正解など大人も知らない」、教授の先生方さえ知らないのです。例を一つ挙げますと、可能かどうか分からなかったiPS細胞の樹立に本学・奈良先端大で取り組み、後にノーベル賞を受賞した山中伸弥先生とその研究室の大学院生による研究があります。ぜひ、バイオサイエンス領域棟にある大講義室に行ってみてください。その入口脇に山中教授のノーベル賞受賞を記念する銘板があり、次のような山中先生からのメッセージが刻まれています:
野球の打率は3割あれば名選手ですが、研究は1割でも当たったら優秀です。しかも、9回失敗しないと、なかなか1回の成功が手に入りません。ですから、恐れることなく、思い切って挑戦し、たくさん失敗してください。
ここで山中先生のおっしゃる「研究は1割でも当たったら優秀」というのは、実際には1割を下回ることが多いという意味です。成功率が1%、あるいは0.1%ということもありえます。なかなかうまくいかない研究プロジェクトに取り組んでいるうちに、次第に途方に暮れて絶望さえ感じるかもしれません。著名なシステム生物学者であるUri Alon教授は、このような状況を「cloud (雲)」と呼びました。雲の中を飛ぶパイロットは、行き先が見えず、方向感覚を失ってしまいます。Alon教授は、この「雲」は研究活動の本質的な一部であり、「既知」と「未知」の間に立ちはだかるものであると言います。ですから、「未知」、つまり新発見に到達するためには、雲の中にまず飛び込まなければならないのです。では、研究において、発見への道に立ちはだかっている「雲」を抜け出すにはどうすればよいのでしょうか。Alon教授は、「連帯とサポート」が雲を抜け出す助けになると言います。
奈良先端大で皆さんはそれぞれ、研究室に所属します。繰り返しになりますが、最先端の科学技術研究においては、これまで誰も成し遂げていないこと、教授ですら正解を知らないことに挑戦します。つまり、研究室の先生方でさえ、「雲」を抜け出すためのルートや、その先に待ち構えている発見を予め知っているわけではないのです。しかしながら、先生方は経験豊富な「副操縦士」として、皆さんと一緒に「雲」の中を飛行し、くぐり抜けてくださいます。本学の教員は世界トップクラスの研究者であり、皆さんとの共同研究を楽しみにしています。
教授や研究室の仲間のサポートを得ながら、風の吹き荒れる雲の中をひたすら進んでいるうちに、突然、穏やかな青空が広がり、予想もしていなかったような発見が目に飛び込んでくる。そんな大学院での経験が、人生のさまざまな場面で活かせる能力やスキルを培うのであり、奈良先端大の "Outgrow your limits" すなわち「自らの限界を打ち破れ」という校訓 school mottoの言わんとするところでもあります。
数多くの魅力的な研究室をはじめ、本学のキャンパスには皆さんの"Outgrow your limits"を実現するための素晴らしい環境が整っています。ここは、皆さんが自身の新たな可能性を発見し、それまで思い込んでいた自らの限界を超えて、成長することを可能にする場所なのです。
ようこそ奈良先端大へ。
2026年4月6日
奈良先端科学技術大学院大学長
塩﨑 一裕



