平成22年度 学位記授与式を挙行(2011/03/24)

イベント報告 2011/04/06

3月24日(木)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う386名の修了者を送り出しました。

授与式では、磯貝学長より学位記が手渡され、式辞が述べられた後、馬殿繁美 本学支援財団専務理事より祝辞が述べられました。

また、本学支援財団が優秀な学生を表彰するNAIST最優秀学生賞の表彰を行い、13名の受賞者に同支援財団から賞状及び賞金が贈られました。

【修了者数】( )内は短期修了者数

○博士前期課程
・情報科学研究科     147名(6名)
・バイオサイエンス研究科  98名(1名)
・物質創成科学研究科    96名
           計 341名(7名)

○博士後期課程
・情報科学研究科      16名(5名)
・バイオサイエンス研究科  12名
・物質創成科学研究科    17名(5名)
            計 45名(10名)

           総計 386名(17名)


【磯貝学長式辞】
本日、平成22年度の学位記授与式にあたり、修士の学位及び博士の学位を得られた修了生の皆さんに、本学教職員はじめ、全ての構成員を代表してお祝いを申し上げます。

皆 さんはこれまで、本学の博士前期課程及び博士後期課程で勉学するとともに、先端科学技術分野の研究において立派な学位論文を書かれました。お渡しした学位 記は、それぞれの学位に相応しい知識と能力を持っているという認定の証しです。これまでの皆さんの努力に学長として敬意を表したいと思います。

さて本日は、修了生のご家族の方々も大勢見えられておりますが、ご家族の皆様にもお祝い申し上げますと共に、長い間、あたたかいご支援をいただいたことに,学長として、感謝申し上げたいと思います。

本 学が本日までに与えてきた学位の数は、修士5227名、課程博士983名、論文博士39名であります。本学はこの10月に創立20周年を迎えることになり ますが、この節目の年に、修士号5000人、博士号1000人という一つの大台を超えることが出来ました。この数字を見て、改めて本学が新設の大学院大学 として創立以来、人材育成の立場でその役割を十分に果たしてきたことを、皆さんと共に確認し合いたいと思います。昨年3月、国立大学法人の教育・研究・業 務運営の評価結果が発表され、本学が86国立大学法人のなかで総合第1位であるとされました。この事実も、これから社会の色々な分野で活躍されようとする 皆さんに、力強いバックアップになるものと思っています。皆さんは日本のなかで良く知られた、優れた大学院を修了したのです。どうかこのことを誇りに思っ て、これからの人生を生きて欲しいと思います。

修士の学位を得られた皆さん。

皆さんの大部分は、私が学長になって最初の 入学生です。あの入学式の挨拶のなかで、私は皆さんに本学で学生生活を送る上での幾つかのお願いをし、そして、そのなかで科学の作法を学んで欲しいと述べ ました。修了式に当たって、皆さんが入学してきたときのことを思い出し、改めてこの2年間のことを考えてください。皆さんのうちの大部分は、学生という時 代をこれで終了して社会人として活躍することになります。しかし、大学を出たからといって学習がこれで終わったというわけではありません。本学での2年間 という時間は、皆さんの一生から見れば決して長い時間ではありません。しかし、この2年間は、学習するということはどういうことかを学んだ貴重な時間で あったはずです。どうか、これからも、学習するという努力を続けて欲しいと思っています。

博士の学位を得られた皆さん。

皆 さんは、研究者として自立して研究活動を行うに足る高度の研究能力と、その基礎となる豊かな学識を身につけたものとして認定され、博士の学位を授与されま した。そして今、本格的な研究者、プロの研究者への道のスタートラインにいます。これから皆さんが直面する課題は、大学での研究課題以上に難しい問題とな るかもしれません。これに立ち向かう時、本学で学んだ、科学する力、即ち、科学するとはどういうことかについての考え方が、きっと役に立つはずです。これ からの社会は世界的に見れば、成熟しつつある社会と発展している社会が混在した複雑な社会です。そうしたなかにあって、科学者としての博士号を持つ皆さん に対する社会の期待は大きなものがあります。21世紀の社会のなかの中核的人材として、日本のみならず、世界のなかで活躍して欲しいと思います。そうした 皆さんの活躍は、博士後期課程に進もうとする学生諸君に大きな夢を与えることにもつながります。

留学生として本日修了式を迎えた皆さん。

皆 さんが母国を離れ、食事や風習も異なるこの国でこれまで努力され、本日目指す学位を得られたことに、深く敬意を表します。母国の友人やご家族の方々も喜ん でおられることと思います。皆さんの今後の進路は様々でしょう。しかし、皆さんには、科学者として活躍するなかで、それぞれの国と日本の架け橋になって欲 しい、また、それぞれの国と奈良先端大との架け橋になって欲しいと思います。そうした皆さんの活動を通じて、奈良先端大は世界とつながっていくことになり ます。お国に帰られる皆さんには、また、本学を訪問して皆さんの活躍ぶりを聞かせて欲しい、日本で知り合った先生や友人との連絡を絶やさないようにして欲 しいと思います。

社会人として本学に入学し、本日を迎えた皆さん。

科学の進歩が今のように極めて早い時代には、社会人と して活躍している人々の再教育が必要であるといわれるなか、本学は開学当初からそれを一つの使命としてきました。本日、皆さんのような社会人修了生を送り 出すことが出来ることは、本学がそうした機能も果たしていることの証しとしてうれしく思っています。皆さんは大部分が職場に復帰され、それぞれの第一線で 働いていくことになると思いますが、本学で新たに得た経験と知識、人脈を活かして活躍していって欲しいと思います。また、皆さんの同僚や部下の方達が、皆 さんと同じように再び大学で学ぶ機会が得られるように、ご尽力ください。

今、改めて会場を見渡して、本日の修了生が、年齢、性別また国籍 の点でいかに多様であるかがわかります。また、それぞれの皆さんの過ごしてきた大学や学部も様々なのでしょう。本学では、このように多様な背景をもった学 生諸君が、教員や、研究員と一緒になって学んでいます。このことも学部がない大学院大学としての一つの特徴であります。こうした多様な人々の存在が社会の 正常なあり方であり、そのなかで、皆さんの社会的対応能力や国際対応能力が磨かれてきたはずです。あらためて皆さんは良い大学で学ばれたと思っています。

さ て、皆さんご存知のように、この3月11日、東北関東大震災が発生し、大津波によって多くの人々が亡くなりました。さらに、福島原発で炉心溶融という大事 故が起きました。地震、津波、原発事故とまさに自然と科学技術の戦いのなかでの災害でありました。皆さんは、皆さんが本学を修了して行く年のこの大震災 を、きっとこれから一生覚えていくことになるでしょう。現代のように社会が科学化している時代、すなわち、日々の生活が高度の科学技術で支えられた世界で は、その技術基盤の想定を超えるような自然災害が起きた場合には、今回のように極めて広範な、また甚大な被害がもたらされます。科学技術に支えられた社会 のもろさと危うさを私達は知らされました。こうした場合、それによる被害が最小限になるよう、できるだけ早くそこから復興するよう、そして再びこうしたこ とが起きないようにするためには、やはり科学技術を中心として対応する以外にはありません。又、こうした事態に対して、風評に惑わされず適切な対応を社会 やそれぞれの人がとるためには、社会や個人が共感の精神を持ったコミュニティーを形成することが必要であると同時に、社会や個人が科学に基づいた知恵と高 い科学リテラシーを持っていることが必要であります。皆さんは、選ばれたものとして、国立大学という国民の期待を担う形のなかで教育を受ける機会を得まし た。科学者として、又、科学技術者として、皆さんには、こうしたコミュニティーを作るための努力と同時に、社会の科学力を高めるための努力もして欲しいと 思います。それが国立大学出身者としての皆さんの責任でもあります。この大災害は、一地方の災害ではなく、日本全体の災害であります。皆さんには、未曾有 の国難とも言える大災害からの日本の社会の復興に、是非それぞれの立場でご尽力ください。


最後に、若い力が時代を開くという話を したいと思います。私が敬愛する東大名誉教授の岡田吉美先生が、最近現代化学という月刊誌に連載している「若い力」というエッセーがあります。岡田先生は 日本の分子生物学を切りひらいてきた人々の一人です。先生はこう言います。「半世紀前、新しい生命科学の扉が開かれた。その原動力となったのは、20代か ら30代の若い研究者達が導き出した成果の数々であった。新しい時代を開くのは、斬新なアイデアと情熱という若い力だ」と。そして、「ワトソンとクリック がDNAの二重らせんモデルを出したとき、ワトソンは25歳、クリックは37歳。メッセルソンとスタールがDNAが半保存的に複製することを証明したと き、メッセルソンは28歳、スタールは29歳。ニーレンバーグがはじめて遺伝暗号を解読したときは34歳。また、遺伝学の原点である遺伝の法則を明らかに したメンデルがエンドウ豆の交配実験を始めたのは34歳の時である」と数々の例を上げています。こうした若い力は生命科学の分野だけではありません。物理 の世界でも、マリー・キュリーが放射線の研究を始めたのは31歳の時で、コンピュータの世界でもアップルコンピュータを作ったとき、ジョブスは21才、 ウォズニアックは26歳でした。このように、科学の新しい時代を開いてきたのは若い力なのです。本日、本学を修了する皆さんはある意味では若い力の象徴で す。どうか、皆さんの活躍で、今、やや混迷しているように見える世界の次の時代を作ってください。科学はそのために大きな力となるはずです。

私は、学長通信の「大学の歴史は誰が作る」というテーマのなかで、修了生の活躍が大学の歴史を作っていくのだと書きました。今改めて、皆さんにも、本学の歴史を皆さんが作っていって欲しいとお願いして、お祝いの言葉にしたいと思います。

本日はおめでとうございました。

                              平成23年3月24日
                              奈良先端科学技術大学院大学長 磯貝 彰

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