学位記授与式を挙行(2011/09/22)

イベント報告 2011/09/29

9月22日(木)、事務局棟2階大会議室において学位記授与式を挙行しました。

13名の修了生に対して、磯貝学長から出席者一人ひとりに学位記を手渡し、門出を祝して、式辞を述べました。

式終了後には記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分ち合っていました。

※ 今回の修了生の内訳は以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】
情報科学研究科 2名(うち留学生2名)
物質創成科学研究科 1名
計 3名(うち留学生2名)

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科 6名(うち留学生2名)
バイオサイエンス研究科 1名(うち留学生1名)
物質創成科学研究科 3名
計 10名(うち留学生3名)

総計 13名(うち留学生5名)


【磯貝学長式辞】

本日、平成23年度第2回の学位記授与式にあたり、修士の学位及び博士の学位を得られた修了生の皆さんに、本学教職員はじめ、全ての構成員を代表してお祝いを申し上げます。

皆 さんはこれまで、本学の博士前期課程及び博士後期課程で勉学するとともに、先端科学技術分野の研究において立派な学位論文を書かれました。お渡しした学位 記は、それぞれの学位に相応しい知識と能力を持っているという認定の証しです。これまでの皆さんの努力に学長として敬意を表したいと思います。また本日の 博士前期課程修了者3名、博士後期課程修了者10名、合計13名のうち、5名が留学生であります。留学生の皆さんには、祖国を離れ、文化も習慣も違う国で 勉学、生活をされ、ここにその目的を達せられたことに、改めて心からのお祝いを申し上げます。

また、本日は、修了生のご家族の方々も大勢見えられておりますが、ご家族の皆様にもお祝い申し上げますとともに、長い間、あたたかいご支援をいただいたことに,学長として、感謝申し上げたいと思います。

本 学はこの10月1日に創立20周年を迎えることになりますが、最近特に、本学の教育研究についての社会的評価は高まってきております。皆さんはこうした優 れた大学を修了したのだということに、誇りを持っていただきたいと思います。学位を本日授与された皆さんを含めて本学が開学以来これまでに与えてきた学位 の数は、修士 5232名、課程博士1000名、論文博士39名であります。すでに修了された皆さんは、今、日本のみならず、世界の中で、科学者として、 また、科学技術者として活躍しておられます。今日修了される皆さんは、こうした本学修了生の一員として、これから社会の色々な分野で活躍していくことにな りますが、皆さんへの社会の期待は大きなものがあります。また、留学生の皆さんは、お国に帰られるにしても、日本で勉学あるいは研究を続けられるにして も、これから、日本とそれぞれの国との架け橋になっていただきたいと思っています。

この9月は色々なことを考えさせられる月でした。9月 11日はアメリカ、ニューヨークの世界貿易センタービルがテロにより破壊されてから10年目の日でした。私は10年前のあの日、科学技術の粋である超高層 ビルに、これも科学技術の粋である飛行機が突っ込んでいく光景を目のあたりにして、矛盾という言葉を思い起こしました。最も強い矛と盾がぶつかるとどうな るのか、こんなことがあっていいのだろうか。科学技術とは何だろうかという思いでいっぱいでした。9月11日は、本年3月11日の東日本大震災から丁度半 年でもありました。まだまだ津波の被害から回復への道は遠いようで、被害に遭われた方々や地域の生活は元には戻っていません。福島の原発も安定的停止への 道は綱渡り状態で、まだまだでしょう。今もなお放射能汚染のため、自宅に帰れない人たちが大勢おられます。「天災は忘れた頃にやってくる」と言ったといわ れる寺田寅彦が1934年、『天災と国防』という文章の中で書いた、「いつも忘れがちな重要な要項がある。それは、文明が進めば進むほど天然の暴威による 災害がその激烈の度を増すという事実である。」という言葉を改めて思い出します。

また、この9月初めの台風12号では、近畿の南部地方が 大きな被害を受けました。特に、奈良の十津川村では、数日の間に、1700ミリもの雨が降ったということです。私も十津川村へは行ったことがありますが、 急峻な山に挟まれた谷間の地域です。十津川村ではかつて1889年に大水害が発生し、多くの人が亡くなり、村は壊滅状態になりました。そこで、2500人 もの村民が北海道に移住し、新十津川村を作ったというつらい歴史があります。今回の水害はそれ以来の大水害なのかもしれません。あれから100年、色々な ことを可能としてきた科学技術も、こうした自然災害を未然に防ぐ力はまだ持っていないのです。

私は、科学技術は基本的には、人の暮らしを 助けるためのものであると思っています。この100年、科学技術の進歩によって、私達の生活は随分と便利になりました。しかし、それだからこそ、科学技術 によって作られたシステムの何処かが壊れたとき、その影響は大きいものがあります。光の部分が大きければ大きいほど、その陰の部分も大きいということで す。しかし、これからの世界や日本がどういう状況になるにしても、科学技術を基礎にした社会であることには変わりがないはずです。私達は科学者として、あ るいは科学技術者として、科学技術の力を信じると同時に、それが、人の暮らしを助けることに正しく使われるよう努力しつつ、その陰の部分を理解し、自然 や、社会に対して謙虚であることが必要であろうと思います。それが科学者としてあるいは人としての倫理観でありましょう。こうした立場を維持していくに は、いつも自分と社会との関係を考えていくことが必要でしょう。

さて、話を大学構内のことに移します。このところ、大学構内の正面入口か らのメインルートのケヤキの周りを掘っているのに、気がついたでしょうか。このケヤキ並木は本学創立時に植えたものですから、植えてからほぼ20年経ちま す。普通ケヤキは20年も経つと相当大きくなるのですが、ここのケヤキはあまり大きくならないばかりか、先端が枯れてしまっています。私は工事中のその穴 を見たことがありますが、表面の土は50センチくらいでその下は粘土のようでした。そのため、通常は木が大きくなるには、根が張ってどんどん水を吸い上げ ていかなければいけないのに、それができず、先端も枯れたのでしょう。土台がだめでは木は大きくなれないのです。

私は、教育というのは、 こうした木が育っていくのを助けるために環境を整備する土台作りだと思っています。今すぐには目立たなくとも、10年経って、20年経って、木が大きくな るにつれて、その効果があらわれてくる土台をしっかり作る事だと思っています。皆さんは本学で、科学者としての土台を作ってきました。そして今、学位記と いう科学者としてのライセンスを与えられました。ただ、今までは、こうした土台作りのため、構内道路を指導されつつ走ってきた状態であるのかもしれませ ん。皆さんはこれから、町に出て、国道や高速道路での本格的な運転をすることになります。その中で、皆さんの本当の成長というのが始まることになります。 その成長のためには、人生は生涯学習であるという視点を持たないといけないでしょう。本学で培った科学者としての土台というのは、皆さんが身につけた今の 知識だけではなく、学ぶ力、判断する力、コミュニケートする力、そして人のネットワークであります。これからの社会、特に日本の社会のなりたちは皆さんの 世代の肩に掛かっているとも言えます。皆さんにはこれから、本学で培ってきた土台を使って、大きく成長して欲しい。そしてその活躍が、皆さんが本学を支援 することにつながります。どうか健康で、有意義な人生を送ってください。そして、ときどきは、本学に来て、皆さんの活躍を聞かせてください。

おめでとう。

平成23年9月22日 奈良先端科学技術大学院大学 学長 磯貝 彰

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