平成24年度 秋学期入学式を挙行(2012/10/02)

イベント報告 2012/10/11

10月2日(火)、先端科学技術研究推進センター1階研修ホールにおいて平成24年度 秋学期入学式を挙行しました。

本学では、国内外を 問わず、また出身大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力をもった学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の 研究分野に対する強い興味と意欲をもった者の入学を積極的に進めており、このたび、35名の新入生を本学に迎えました。

海外からの留学生も多数含まれていたため、当日は学長の式辞が行われている間、英語訳の式辞がスクリーンに映し出されました。

【入学者数】
(博士前期課程)
  情報科学研究科 14名(うち外国人留学生 11名)
  計 14名
(博士後期課程)
  情報科学研究科 8名(うち外国人留学生 5名)
  バイオサイエンス研究科 7名(うち外国人留学生 6名)
  物質創成科学研究科 6名(うち外国人留学生 4名)
  計 21名

総計 35名(うち外国人留学生 26名)

【磯貝学長式辞】

本日、奈良先端科学技術大学院大学に入学されました博士前期課程入学者14名、博士後期課程入学者21名、合計35名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本学の教職員や学生を代表して、心からお喜び申し上げます。

また、本日の新入学生の中には、26名の海外からの留学生諸君が含まれています。母国を離れて、この日本で学生生活を送ることを決意された皆さんにも、深く敬意を表したいと思います。

本学は、「先端科学技術分野の研究の推進」、「その成果に基づく高度な教育による人材の育成」によって、「科学技術の進歩と社会への発展に寄与する」ことを目的として、学部を持たない大学院大学として、けいはんな学研都市の一角に1991年に設立されました。

私たち教職員はその理念や目的の実現のために、この20年努力してきました。こうした本学の教育・研究、運営の実績は、国立大学の中で高く評価されました。

そして今、政府機関の統計などでも、情報科学、基礎生命科学、化学・材料化学の分野において、その研究成果の質がきわめて高いことが客観的に示されております。

また、こうした高い研究力を背景とした組織的な教育体系は、新しい大学院教育システムとして高く評価されてきています。そして、これまでの間に博士号取得者1096名、修士号取得者5560名を世に送り出してきました。

皆さんは、こうした優れた大学に入学してきたということに、まず、誇りを持ってください。

今回の入学生は、35名のうち26名という半数以上が海外からの学生であります。このように留学生が主体であることから、本日は初めに、本学の国際化の話を少しすることにします。

先に述べましたように、本学は日本の新しい大学院の研究教育システムを作っている大学として日本の大学の中で認知されてきました。

そして、次のステップとして本学の国際化を目指して、教育体系の国際化や留学生の獲得に努力してきました。

その結果、2000年代前半には50名程度であった留学生の数は、現在146名にも及んでいます。この数は全学生の10%を超え、博士課程で見ると20%を超えております。

また、これまでに学位を得た留学生は、博士113名、修士135名、合計248名となっています。

この機会にあらためて日本の大学の国際化とは何かを考えてみたいと思います。

それは、日本の大学を世界に開放して、その中で、世界の国々からの学生を受け入れ、国際社会のいろいろな場で活躍できる人材を育てるということでありましょう。

さらには、海外からの学生諸君が日本の文化や社会を理解し、日本人の知り合いを多く作るということでしょう。

そして同時に、日本の学生が国際社会の状況を理解し、海外でも活躍するということでしょう。

そのためには、色々な国からの留学生と日本人学生が交わる中で、お互いの国々の状況を理解し合える国際的感覚を養い、また、お互いの文化の多様性を知り合うことが、国際化の第一歩であると思っています。

本日入学された皆さんが、科学技術の専門家であると同時に、優れた国際人になるよう努力して欲しいと思っています。

その意味で、皆さんが本学で学生生活を送るにあたって、こうした国際的センスの問題以外にも、いくつかお願いをしておきたいと思います。

(1) まず、本をたくさん読み、また、自分で考えること。自分で考え抜いて得た知識が真の知識であります。知識はハードディスクやコンピュータメモリーの中にあるものではありません。
そして真の知識は、皆さんの科学者としての血となり肉となるもので、皆さんがこれから一生使えるものです。こうして、自ら学び、学修することが教育の本質であります。
そして、それによって、変わっていく自分を自分で見ることが人間としての成長なのです。

(2) 正しい情報の発信・受信をすること。
今、ネット社会の中で多くの乱雑な情報が氾濫しています。その中で、情報の海に溺れないという智恵を身に付けてほしいと思います。
そのためには、何が正しいのかを判断できる力が必要です。また、情報を発信する場合の責任を知っておくことも必要です。

(3) 身の回りの自然に親しむこと。自然を理解したいというのは、哲学や科学の原点です。
西洋の自然科学は、自然を神の力のあらわれであるとして、それを理解することから始まりました。自然の中には、まだまだ未知の課題が沢山あります。その中に、これからの皆さんの課題も見つかるかもしれません。
同時に、自然を畏怖する心も持って欲しいと思います。それは東洋の心なのです。まだまだ、人間は自然を完全には制御出来ないのです。

(4) 人と親しむこと。人を毛嫌いすることを避け、友人を作り、よき教師を探してください。それが見つかれば、それは皆さんの一生の宝となるでしょう。
そして人との語らいは是非、face-to-faceでやってください。それはメールなどより、はるかに情報量の多いものです。

(5) 自分と社会との関わりを考えること。科学と社会との関係が強くなっている今、科学者として、自分の責任を自覚してください。また、科学者である以前に社会人であることも自覚してください。

(6) 日本や奈良の文化に親しむこと。奈良は、かつての最先端学術都市であり、多くの日本の文化が残っています。
特に留学生の皆さんは、日本の文化に親しんでください。それはあなたたちが奈良に来た特権でもあります。
また、日本人学生も海外で日本の文化について語れる国際人になるため、日本の古い文化に興味を持ってください。文化は人にとって科学と同じくらい必要なものです。

(7) 専門のサイエンスと同じくらいそれ以外のサイエンスについても、興味を持つこと。
皆さんが単なる専門バカと言われないよう、科学者として必要な幅広い教養と知識を身につけてください。その中で、科学の作法についても学んでください。
作法という言葉には、単に、書かれた知識だけでなく、考え方や理念、身体で覚えることや、文字に書けない当然の決まり事、また、身の処し方、生き方などの科学者としての倫理なども含まれます。科学の作法とは科学の文化そのものなのです。

(8) 英語をマスターすること。英語は国際生活語であり、国際学術語となっています。
国際人として活躍するための必須の道具と理解して、英語力を高めて欲しいと思います。そのためには日常的に英語を使う努力をすることが大切です。
日本人学生には留学生との交流の場を活用してください。なお、留学生には日本語の勉強もして欲しいと思っています。それは、日本で生活し、日本を知るためには必要なものです。

(9) 最後に、心身とも健康であること。これは、よりよい学生生活を送るために一番大事なことです。
そして、何か悩むことがあったら、初心を思い出してください。皆さんは何をしたくて本学に入ってきたのかを。

今話をした9つの項目は、私が学長としての最初の入学式で話した挨拶の中のものです。

実は、私の学長としての任期もあと半年で、皆さんは、最後の入学生になります。私も改めて初心に返り、学長として皆さんに言いたいことを思いだし、皆さんにお話しました。

さて、昨年3月11日の大震災による原発事故は、将来のエネルギー問題について大きな課題を投げかけております。それは実は、日本だけの問題ではなく、地球規模あるいは世界レベルの課題でもあります。

さらに、地球環境問題、水の問題、食糧の問題や、それらの南北問題も含め、世界には、多くの困難な課題があります。そうした問題の解決のためには、皆さんが本学で学んでいく知の方法が、将来きっと役に立ってくるはずです。

皆さんが、厳しい中でも楽しい学生生活を送り、世界のどこでも活躍できる人材へと成長していくことを期待して、お祝いの挨拶とします。

おめでとう。


2012年10月2日
奈良先端科学技術大学院大学 学長 磯貝 彰

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