平成25年度 入学式を挙行(2013/04/05)

イベント報告 2013/04/11

4月5日(金)、ミレニアムホールにおいて平成25年度入学式を挙行しました。

本学では、国内外を問わず、また出身大学での専攻にとらわ れず、高い基礎学力をもった学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の研究分野に対する強い興味と意欲をもっ た者の入学を積極的に進めており、このたび、395名の新入生を本学に迎えました。

当日は、生駒市 山下市長、公益財団法人奈良先端科学技術大学院大学支援財団 小山専務理事、奈良先端科学技術大学院大学同窓会 駒井会長を来賓に迎え、また本学入学式では恒例となった茂山家による狂言演能(大蔵流狂言『呼声(よびこえ)』)を行い、奈良の伝統芸能で盛大に新入生の 門出を祝いました。

【入学者数】
(博士前期課程)
  情報科学研究科      124名(うち留学生11名)
  バイオサイエンス研究科  100名(うち留学生 3名)
  物質創成科学研究科    99名(うち留学生 3名)
            計  323名

(博士後期課程)
  情報科学研究科      23名(うち留学生11名)
  バイオサイエンス研究科  29名(うち留学生 3名)
  物質創成科学研究科    20名(うち留学生 2名)
            計  72名

             総計  395名(うち留学生33名)


【小笠原学長式辞】

本 日、奈良先端科学技術大学院大学に入学された博士前期課程323名、博士後期課程72名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本学の教職員を代表 して、お喜びを申し上げます。また、今日の新入生の中には、33名の海外からの学生諸君が含まれています。母国を離れて、この日本で学ぶことを決意された 皆さんを、心から歓迎したいと思います。

まず、博士前期課程に入学された皆さんには、新しい可能性に挑戦して欲しいということを言いたい と思います。皆さんは、これまでの専門を活かし深化させていきたい、あるいは、新たな分野に挑戦したいなど様々な希望のもとで、今までの学修の場を離れて 本学に入学されました。本学では、どの研究室に所属し、どのような専門分野で研究活動を進めるのか、色々な可能性が開かれています。私は昨年度までバイオ サイエンス研究科の教授で微生物の教育研究をしてきました。そして、この4月に学長に就任した新米学長です。私の教授時代、卒業実験で微生物の研究をして いたが、それを続けたいので先生の研究室での研究内容を詳しく知りたいと、結構な数の新入生の方々がやって来ました。その時には、卒業実験でのテーマが一 番面白い分野と決めつけるのではなく、広く動物や植物の研究もどうなっているかを知ってから所属研究室を考えることを勧めてきました。これから、各研究科 で、各研究室の研究内容の紹介が本格的に始まると思いますが、どのような可能性が本学にあるのか、今までの知識や考えにとらわれることなく、広く見てくだ さい。今まで知らなかった、あるいは、気が付かなかった、皆さんにとって興味深い研究分野があるかもしれません。本学では、そうした皆さんの将来への新た な挑戦が可能なのです。

さて、奈良先端大は、新構想の独立大学院大学として、平成3年10月に設立されました。そして、ちょうど20年前 の平成5年4月から情報科学研究科、続いて平成6年4月からバイオサイエンス研究科、平成10年4月から物質創成科学研究科に学生の受け入れを始めまし た。こうした本学の設立にあたって取りまとめられた新大学の構想には、本学の研究と教育の使命について、以下のように書かれています。「先端科学技術分野 は、広範な学際的広がりを持つこと、基礎研究における全く新たな展開が見られること、しかもその展開が極めて急速であること、基礎研究における新しい知見 が、極めて短期間のうちに、それをもとにした技術開発につながっており、また技術の進歩が、これらの基礎研究の基盤としてその進展を可能にしているなど、 いわゆる科学と技術との一体化が、他の分野以上に顕著であること、等の共通の特色を持っている。したがって、これらの分野においては、従来の学問分野の枠 を越えて、それぞれの分野に焦点を当てた学際的な基礎研究の推進が極めて重要である」。教育に関しては、以下のように書かれています。「先端科学技術分野 の急速な進展に伴い、これらの分野の研究開発を担う研究者、技術者の組織的養成が、学術研究面でも産業経済面でも大きな課題となっている。特に、これらの 分野においては、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度な基礎力を持つ多様な人材を養成することが必要である」。 すなわち、本学は、急速に発展している情報・バイオ・物質という先端科学技術分野において、工学・理学・農学・医学等の従来の学問分野の枠を越えた学際的 な、そして科学と技術が一体化した研究活動を展開し、それを背景に、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる人材を育成 するために設立されたのです。そして、活発な研究活動を展開していた多様な背景を持つ気鋭の研究者が結集し、高度な研究活動とそれを背景にした組織的な大 学院教育により5,897名の修士課程修了者、1,105名の博士課程修了者を送り出してきました。こうした本学の研究教育活動については、客観的な数値 指標でも、また、文部科学省による国立大学の教育研究実績の評価においても、極めて高く評価されています。

奈良先端大誕生からの20年の 間に、科学技術は飛躍的に発展してきました。20年前、情報の分野ではインターネットが社会に浸透し始めた時代でしたが、今や、コンピュータの性能は桁違 いに向上し、全世界がインターネットでリアルタイムに繋がれ、科学技術データも含んだビッグデータを扱う時代を迎えています。バイオの分野では個々の遺伝 子の構造と機能を研究する時代から、配列解析技術の革新により、我々個人のゲノムを含め、様々な生物のゲノム配列を簡単に決められる時代になり、自然界の 生物の多様性の根源を研究できるようになりました。物質の分野でも、分析・計測技術の高度化により、新しい物質世界の姿が見えるようになり、20年前には 考えられなかった新しい物質の創成が可能になっています。こうした科学技術の発展は、情報とバイオの融合領域である情報生命科学の誕生に代表されるよう に、情報・バイオ・物質をまたぐような、新しい学際的科学技術分野を生みだしつつあります。また、基礎科学技術研究とその社会的な展開の間の距離も20年 前よりずっと近くなっています。皆さんが本学を修了し、研究者、技術者などとして社会を担う10年、20年先には、科学技術がどのように発展し、それが社 会にどのようなインパクトを与えているか、現在の我々の想像を超える物になっていると私は思います。皆さんには、急速な科学技術の進展に柔軟に対応し、常 に新しい分野を開拓し続けることのできる高度の基礎力と幅広い視野を本学で養っていただきたいと思います。

昨年、ノーベル生理学・医学賞 に本学栄誉教授の山中伸弥京都大学iPS細胞研究所長が選ばれたことに日本中が沸きました。その研究は、体細胞にいくつかの遺伝子を導入して初期化し、多 能性の幹細胞をつくり、それをどんな臓器にもなる万能細胞として再生医療に使うというものですが、こうしたアイデアが生まれた背景を皆さんご存じでしょう か。その背景には、日本の独創的な研究の蓄積があったことが指摘されています。すなわち、ヒトの様々な組織器官で発現している遺伝子をデータベース化する プロジェクト、そうしたデータベースから生物学的な知識を抽出するバイオインフォマティクス技術、細胞に高効率で遺伝子を外部から導入するための技術開発 等です。山中先生は、こうした当時の最先端の研究動向を見極め、それを頭の中で組み合わせて、独創的な研究戦略を構想したのです。そして、研究を開始する にあたり、各分野に精通している研究者の協力を求めました。このことは、皆さんに、自分の専門分野に閉じこもることなく、常に様々な研究の動向に目を配 り、それを創造的に活用する能力を身につけることの重要性を伝えるものです。これから皆さんは色々な研究室に所属して、学修と研究活動を進めていくわけで すが、他研究室の考え方や手法を取り込むことにより面白い展開が可能になるかもしれません。本学は、研究室・研究科の壁が低いことが大きな特徴です。皆さ んも、様々な人との交流を是非進めてください。

また、中国や東南アジア諸国等の経済的発展に見られるように、世界も大きく変貌したこと も、この20年の重要な変化です。その結果、地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化の問題と人類の活動を両立させ、持続的な社会を作って行くための取 組の重要性がますます鮮明になっています。さらに、東日本大震災とその結果発生した福島原発事故は、科学技術のこれからに多くの問題を投げかけています。 このように、世界の、さらには、未来の問題を解決するための新しい科学技術の展開が必要になっています。画一的な豊かさ・便利さを追い求める社会から多様 な豊かさを深める持続可能な社会への転換とも言われていますが、モデルのない世界で自ら考え、グローバル社会を舞台に新たな科学技術の創出やその活用を行 うことができる人材が今求められています。本学ではこのためにも、大学の国際化を図り、海外との交流を積極的に進め、また、留学生の受け入れも増やしてき ており、今、留学生数は全学生の10%以上となっています。私は、皆さんには国際化という言葉の意味として、これからの世界を作っていくアジアやアフリカ 地区の理解を深め、そうした地域への科学技術からの貢献ということを、是非考えて欲しいと思います。本学で学ぶ留学生の多くはアジア地区からの留学生で す。日本人学生の諸君には留学生諸君と、また留学生諸君は日本人学生と交流を深め、お互いの理解を深めてください。そうした経験を生かして、皆さんには将 来、日本やアジアや世界を支える科学技術者として活躍して欲しいと思っています。

最後に、皆さんには、心身共に健康で楽しい学生生活を 送って欲しいと思っています。本学で新たな生活を始めるにあたって、皆さんは新たに多くの人と知り合いになるはずです。そして、そうした出会いを意味ある ものとして継続し、絆というネットワークに広げていくことは、皆さんの学修・研究活動の幅を広げるだけでなく、皆さんの心の健康を支え、さらに、これから の人生を支える一生の財産になるはずです。

皆さんの意義ある学生生活とその未来に期待して、式辞とします。入学おめでとうございます。我々教職員は皆さんを心から歓迎します。

奈良先端科学技術大学院大学
学長 小笠原 直毅

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