平成26年度学位記授与式を挙行(2014/06/25)

イベント報告 2014/06/27

6月25日(火)、事務局棟2階大会議室において学位記授与式が挙行され、小笠原直毅学長が、出席した4名の修了生一人ひとりに学位記を手渡し、門出を祝して、式辞を述べました。

式終了後には記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合いました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。


【博士前期課程修了者】
情報科学研究科      1名

計 1名

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科      1名
バイオサイエンス研究科    2名
物質創成科学研究科    2名

計 5名


総計 6名


本日、修士・博士の学位を授与された皆さん、おめでとうございます。修士の学位を授与された方はこれから社会の第一線で働き、博士の学位を授与された方は博士研究員として、更なる研鑽を積んで行くと聞いています。

い ずれにしても、皆さんの新しい生活がこれから始まるわけですが、今、我が国の科学技術について、多くの課題に直面していることが指摘されています。すなわ ち、少子高齢化の進展により人口が減少に転じ始めるとともに、社会の成熟化により、国民や社会のニーズが変化し、また、多様化しています。単なる物質的な 豊かさよりも、心の豊かさがより重視されるようになり、健康や安全・安心といった生活の質の向上が強く求められるようになっています。環境問題等の地球規 模問題の解決のためには、世界の研究者が、国や専門分野を超えて連携協力する必要性が明白になっており、様々な知識や発想、グローバルな視点等が科学技術 研究者に求められるようになっています。そうした中で、我が国では、研究者が社会や産業界のニーズの変化に対応し、臨機応変に研究領域を拡大・変更してい くということができていないのではないか、また、我が国の世界における論文数のシェアは順位を落としており、世界の研究活動における我が国の存在感はむし ろ低下し始めているのではないかという声が挙っています。

同時に、科学技術の新しい展開により新しい世界を築く可能性が広がっていること も指摘しておかなければなりません。ビッグデータが現在のキーワードの一つになっていますが、全世界がインターネットでリアルタイムにつながれ、世界の 様々なデータを一体的に活用することが可能な時代になり、それが支える新しい世界が作られることが期待されています。バイオサイエンスの分野では、DNA 塩基配列であるゲノム情報のみならず、細胞や個体のレベルで働く様々な生体分子の時間的空間的分布が可視化され、情報として蓄積されるようになり、ビッグ データバイオロジーという情報科学と密接な融合領域が生まれています。物質の分野でも、分析・計測技術の高度化により、新しい物質世界の姿が見えるように なり、情報科学、バイオサイエンスの進展を支えています。今後の科学技術の展開は、私たちの現在のイメージを超えたものになるのではないでしょうか。

皆さんには、今後、奈良先端大の修了生として、こうした新しい科学技術の創造と活用に、主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。それには何が必要か、最近、文部科学省の委員会で議論されている事を紹介したいと思います。

学 術研究が「国力の源」としての役割を果たすために基本となることは、何よりも新たな知の開拓に挑戦することであり(挑戦性)、研究者は常に自らの研究課題 の意義を自覚し、明確に説明しなければならない。グローバル化や情報化等が加速する中、新たな知の開拓のためには、学術研究の多様性を重視し、伝統的に体 系化された学問分野の専門知識を前提としつつも、細分化された知を俯瞰し総合的な観点から捉えることが必要であり、異分野の研究者や国内外の様々な関係者 との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出すことも求められます。また、人文学・社会科学から自然科学まで分野を問わず、世界の学術コミュニティー における議論や検証を通じて研究を相対化することにより、世界に通用する卓越性を獲得したり新しい研究枠組みを提唱するなど、世界に貢献する必要がありま す。
したがって、研究者は、自己の専門分野の研究を突き詰めた上で、分野、組織などの違い、さらには国境を越えて、異なる価値や文化と切磋琢磨しつつ対話と協働を重ね、社会の変化に柔軟に対応しながら、新しい卓越知を生み出すために不断の挑戦をしていくことが求められる。

さ らに、基礎的な研究の成果とその社会的展開の距離がどんどん近くなっていることも、現在の科学技術の特徴の一つであり、両者は新しい社会の形成への科学技 術の貢献のための両輪です。その意味で、基礎研究を指向する方もその社会展開という視点もきちんと持ち、また、様々な課題解決のための技術開発はその活 用、普及を指向する方も、基礎科学技術の新たな展開に注目し続けていただきたいと思います。

奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出し たことで終わるのではなく、変化して行く科学技術・社会の中で、皆さんが持続的にクリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的 な関係を構築して行くことも奈良先端大の重要な役割であると教職員は考えています。その仕組みの具体化は今後の課題ですが、私たち、教職員は、今後も、皆 さんの常に最先端を目指す生活を、支援していきたいと思います。

皆さん、学位授与、おめでとうございます。今後の活躍を期待しています。

平成26年6月25日   奈良先端科学技術大学院大学長 小笠原直毅

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