平成26年度 学位記授与式を挙行(2015/03/24)

イベント報告 2015/03/27

3月24日(火)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う355名の修了者を送り出しました。

授与式では、小笠原直毅学長から学位記が手渡され、式辞が述べられた後、小山博之本学支援財団専務理事から祝辞が述べられました。

また、本学支援財団が優秀な学生を表彰するNAIST最優秀学生賞の表彰を行い、13名の受賞者に同支援財団から賞状及び賞金が贈られました。

式終了後には祝賀会・記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合っていました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】
情報科学研究科 128名(うち短期修了2名、留学生14名)
バイオサイエンス研究科 91名(うち留学生3名)
物質創成科学研究科 97名(うち留学生3名)
計 316名(うち短期修了2名、留学生20名)

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科 11名(うち短期修了1名、留学生3名)
バイオサイエンス研究科 11名(うち短期修了1名、留学生1名)
物質創成科学研究科 16名(うち短期修了3名、留学生3名)
計 38名(うち短期修了5名、留学生7名)

【論文提出による博士学位取得者】
バイオサイエンス研究科 1名

総計 355名(うち短期修了7名、留学生27名)




【学長式辞】

本日、修士の学位を授与された316名の皆さん、博士の学位を授与された39名の皆さん、おめでとうございます。皆さんを含めて、奈良先端大の前期課程の修了者は6,573名となり、6,500名を越しました。後期課程の修了者も1,238名となりました。

今日、修士・博士の学位を授与された方々の中には、世界14カ国からの27名の留学生の方がいらっしゃいますが、これで、本学で学位を取得された留学生の方々は、54国カ国365名となり、本学修了生のネットワークが、世界に広がっていくことを嬉しく思います。

また、修了生のご家族の皆さんにもお祝いを申し上げるとともに、修了生の学生生活をご支援いただいたことを、本学を代表して感謝いたします。さらに、留学生の方々の勉学・生活にご支援をいただいた、個人・団体の皆様にも感謝の意を表したいと思います。

さ て、前期課程を修了された方の中には、後期課程に進学し、研究者を目指し、さらなる研鑽を目指す方もいらっしゃいますが、多くの方は、修士・博士の学位を 持つ、研究者、技術者、あるいは専門的職業人として、産業界あるいはアカデミアで、自立した新しい生活がこれから始まります。

今、世界は 変わりつつあります。言い尽くされたことですが、情報、人、物が国境を越えて流動化し、そうした世界の中でアジアやアフリカ諸国の経済発展が進んでいま す。その結果、地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化などの問題と人類の活動を両立させ、人類社会の持続的な発展を実現するための取り組みの重要性が ますます鮮明になっています。そのためには、ある意味では画一的な物質的な豊かさを追及してきた今までの社会発展モデルの変革が必要であり、その意味で、 踏襲すべきモデルがない時代となっていることが指摘されています。

こうした変化の背景には、科学技術の新しい展開が進んでおり、その結 果、社会が大きく変化しようとしていることがあります。例えば、米国内で現在、人間が担っている仕事の半分は今後10~20年間のうちに機械化される可能 性が高く、今、アメリカの小学校に入学した子供たちの半数以上は、大学卒業後、今は存在していない職業に就くだろうというレポートもあります。

わ が国でも、「現在の研究の最前線では、測定、分析、計算技術の進展等により自然現象や社会現象に関する認識の範囲が急速に拡大しており、情報量の増 加、計算科学の飛躍的進歩による情報処理速度の加速、交通・通信ネットワークの進展による情報の伝播・共有の高速化などを背景に、学術研究自体が急速 に拡大し、その有り様が変化している。生命科学、材料科学など広範な領域で新たな学際的・分野融合的領域が展開するなど、知のフロンティアが急 速に拡大している」と議論されています。

すなわち、ICT技術の発展を基盤に、バイオ・物質等の分野で、知のフロンティアが急速に拡大しているということが指摘されています。実際、ビッグデータバイオロジーという言葉に象徴されるようなパラダイムシフトも、バイオの分野で起こりつつあります。

そ して、基礎研究とその成果の社会的展開の関係にも変化が起こっており、「知のフロンティアの拡大により、研究の最前線では質の高い知が次々に生み出さ れており、何が新たな社会的な価値に繋がるのかの予測が困難となっている」ことが指摘されています。こうしたことから、現在、我々は新たな科学技術 革命の最中にいるのではと考えている研究者もいます。

皆さんは、こうした社会の変革を担う、研究者、技術者、あるいは専門的職業人として、社会に巣立っていくのですが、今、皆さんに求められていることは何でしょうか。文部科学省の委員会の報告書にある以下の文章を是非紹介したいと思います。

「知 のフロンティアが急速に拡大している現代において、学術研究が「国力の源」としての役割を果たすために基本となることは、何よりも研究者の知を基盤に して独創的な探究力により新たな知の開拓に挑戦することであり(挑戦性)、研究者は常に自らの研究課題の意義を自覚し、明確に説明しなければならな い。新たな知の開拓のためには、学術研究の多様性を重視し、伝統的に体系化された学問分野の専門知識を前提としつつも、細分化された知を俯瞰し総合的な観 点から捉えることが重要である(総合性)。また、異分野の研究者や国内外の様々な関係者との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出すことも求め られる(融合性)。

さらに、自然科学のみならず、人文学・ 社会科学を含め分野を問わず、世界の学術コミュニティーにおける議論や検証を通じて研究を相対化することにより、世界に通用する卓越性を獲得し、世界に貢献する必要がある(国際性)。

し たがって、研究者は、自己の専門分野の研究を突き詰めた上で、分野、組織などの違い、さらには国境を越えて、異なる価値や文化と切磋琢磨しつつ対話 と協働を重ね、社会の変化に柔軟に対応しながら、新しい卓越した知やイノベーションを生み出すために不断の挑戦をしていくことが求められる。このよ うに、現代の学術研究には、いわば「挑戦性、総合性、融合性、国際性」が特に強く要請されている。」

この文章は、直接的には科学技術 研究者に向けられたものですが、科学技術の活用・普及を志す方にも通ずるものがあると思います。皆さんは、奈良先端大の修了生として、こうした姿勢で新し い科学技術の創造と活用により、新たな社会、世界の創造に、主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。

さらに、基礎的な研究の成 果とその社会的展開は、新しい社会の形成への科学技術の貢献のための両輪です。その意味で、基礎研究を指向する方もその社会展開という視点もきちんと持 ち、また、様々な課題解決のための技術開発やその活用、普及を指向する方も、基礎科学技術の新たな展開に注目し続けていただきたいと思います。

私は、本学での専門知識の習得はもちろんですが、学位論文研究を通して身につけた、課題を発見し、その解決法を考え実践し、その結果を評価し様々な人と議論し、論文にまとめるという経験が、皆さんの今後のクリエイティブな生活を保証していると確信しています。

さ らに、奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、変化していく科学技術・社会の中で、皆さんが持続的にクリエイティブな生活 を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築してくことも奈良先端大の重要な役割であると教職員は考えています。

皆さん、おめでとうございます。今後の活躍を期待するとともに、今後も皆さんの活躍を支援していきたいと思います。

平成27年3月24日奈良先端科学技術大学院大学長 小笠原直毅

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