平成27年度秋学期入学式を挙行(2015/10/02)

イベント報告 2015/10/06

10月2日(金)、学際融合領域研究棟2号館1階研修ホールにおいて平成27年度秋学期入学式を挙行しました。

 本学では、国内外を問 わず、また出身大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力をもった学生、あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の 研究分野に対する強い興味と意欲をもった者の入学を積極的に進めており、このたび、45名の新入生を本学に迎えました。

【入学者数】
(博士前期課程)
情報科学研究科 9名(うち外国人留学生 9名)
バイオサイエンス研究科 5名(うち外国人留学生 5名)
物質創成科学研究科 4名(うち外国人留学生 4名)
計 18名
(博士後期課程)
情報科学研究科 10名(うち外国人留学生 7名)
バイオサイエンス研究科 9名(うち外国人留学生 9名)
物質創成科学研究科 8名(うち外国人留学生 6名)
計 27名

総計 45名(うち外国人留学生 40名)

【学長式辞】

  本日、奈良先端科学技術大学院大学の博士前期課程に入学された18名の皆さん、また、博士後期課程に入学・進学された27名の皆さん、本学200名の教 員、150名の職員を代表して歓迎致します。今日入学された方のうち40名の皆さんは、世界7カ国から来ています。母国を離れて、この日本で学ぶことを決 意された皆さんを、心から歓迎したいと思います。

 1週間前に、19名の留学生の方々に博士、修士の学位を授与しましたが、今日、新たに40名の方々が入学されたことにより、本学に在籍する留学生は、世界38ヵ国、地域からの207名となり、全学生数1,073名の19%となりました。

  今まで、我が国の大学は、ともすれば視野が国内に限られていましたが、現在、世界の方々を受け入れ、日本の科学技術と社会を知ってもらい、また、日本人学 生も世界における科学技術への要請と世界各国の社会を知ることができるように、大学のグローバル化を進めることが求められています。そのため、文部科学省 では、我が国の大学の国際化を牽引する大学を積極的に支援するスーパーグローバル大学創成支援事業を推進していますが、本学もその支援対象に選ばれていま す。この経費を活用して、皆さんが生活しやすい支援体制を一層強化し、また、多様な文化・科学技術への要請を持っている国からの留学生が在籍しているとい う、本学学生の多様性をいかすために、教育においても、交流の機会を積極的に提供していきたいと考えています。

 ここで、本学が設立された経緯を話しておきたいと思います。奈良先端大は、新構想の独立大学院大学として、1991年10月に設立されました。

  本学の設立にあたって取りまとめられた構想には、本学の研究と教育の使命について、以下のように書かれています。「先端科学技術分野は、広範な学際的広が りを持つこと、基礎研究における全く新たな展開が見られること、しかもその展開が極めて急速であること、基礎研究における新しい知見が、極めて短期間のう ちに技術開発につながっており、また技術の進歩が、これらの基礎研究の基盤としてその進展を可能にしているなど、いわゆる科学と技術との一体化が、他の分 野以上に顕著であること、等の共通の特色を持っている。したがって、これらの分野においては、従来の学問分野の枠を越えて、学際的な基礎研究の推進が極め て重要である」。教育に関しては、以下のように書かれています。 「特に、これらの分野においては、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度の基礎力を持つ多様な人材を養成すること が必要である。」

 すなわち、本学は、急速に発展している情報・バイオ・物質という先端科学技術分野において、工学・理学・農学・医学等 の従来の学問分野の枠を越えた学際的な、そして科学と技術が一体化した研究活動を展開し、それを背景に、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を 開拓し続けることのできる人材を育成するために設立されたのです。こうした本学の研究教育のミッションは、世界を視野に入れるというキーワードが付け加 わっていますが、現在、強く社会から求められているものであり、先駆的なものでした。

 そして、活発な研究活動を展開していた多様な背景を持つ気鋭の研究者が結集し、高度の研究活動と、それを背景にした組織的な大学院教育により6,582名の修士課程修了者、1,268名の博士課程修了者を送り出してきました。

  この中には、世界54国からの386名の留学生の方々が含まれ、世界で活躍しています。例えば、2週間ほど前に、本学修了生の集まりに出席するために、イ ンドネシアに行ってきました。インドネシアでは、既に、30名以上の修了生の方が様々な大学で教育・研究に活躍しています。その中の2人は、インドネシア のトップ100科学者に選ばれたそうです。また、ガジャマダ大学、ボゴール農科大学、インドネシア大学等で、大学としての新しい研究プロジェクトの立ち上 げの中心メンバーになっています。皆さんも、将来、こうした先輩たちのように世界で活躍して欲しいと思います。

 こうした本学の研究教育活動は、極めて高く評価されてきました。例えば、文部科学省は、実績のある大学の研究力を一層強化するために、研究大学強化促進事業として全国で22機関を現在支援していますが、奈良先端大は、その一つにも選ばれています。

  今、科学技術は大変革の時代にあることが、様々な場で議論されています。情報・バイオ・物質が、幅広い科学技術の基盤となっていることは変わりませんが、 そのあり方は変化し、3分野の融合も進んでいます。我が国の科学技術の推進方策を議論している文部科学省の会議で、「現在の研究の最前線では、測定、分 析、計算技術の進展等により自然現象や社会現象に関する認識の範囲が急速に拡大しており、情報量の増加、計算科学の飛躍的進歩による情報処理速度の加 速、交通・通信ネットワークの進展による情報の伝播・共有の高速化などを背景に、学術研究自体が急速に拡大し、その有り様が変化している。生命科 学、材料科学など広範な領域で新たな学際的・分野融合的領域が展開するなど、知のフロンティアが急速に拡大している。

 そして、 例えば、コンピュータ性能の飛躍的向上により、実験の代替・補完や未知の状況を予測するシミュレーションによる方法や、ゲノムデータ、地球観測データ、人 の活動データ等の多様なビッグデータの統合により新たな知を創出するデータ科学が台頭しつつある。」と議論されています。

 ICT技術は、先進国と言われている社会だけでなく、様々な社会基盤に展開することにより、新しい社会システムが生まれるかもしれません。また、ICT技術は科学技術の発展の駆動力にもなりつつあります。

 ライフサイエンスの分野ではデータ駆動型サイエンスという新しいパラダイムが生まれ、モデル生物のシステムとしての理解に加えて、自然界の多様な動植物・微生物を理解し、保全・活用することが期待されています。

 物質科学の分野でもマテリアルズインフォマティックスという言葉も登場しています。今後の科学技術の展開は、私たちの現在のイメージを越えたものになるのではないでしょうか。

  一方で、地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化などの問題と人類の活動を両立させ、人類社会の持続的な発展を実現するための取組の重要性がますます鮮 明になっていることも忘れてはなりません。そのためには、大量生産・大量消費により物質的な豊かさを追及してきた今までの社会発展モデルの変革が必要であ り、その意味で、踏襲すべきモデルや先例がない時代となっており、新たな解決すべき問題を発見し、それへの創造的な回答を導く、異分野の研究者・技術者間 の連携が求められていることが指摘されています。

 皆さんには、将来、世界の様々な場で、新しい科学技術の開拓・活用による新しい世界を 築いていくために、急速な科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度な専門性と幅広い視野、さらに、異分野、異文化の 人々とのコミュニケーション力、恊働力を本学で養っていただきたいと思います。そのためには、自分の専門分野に閉じこもることなく、常に様々な研究の動向 に目を配り、それを創造的に活用する能力を身につけることが重要です。これから皆さんは色々な研究室に所属して、学修と研究活動を進めていくわけですが、 他研究室や他研究科の考え方や手法を取り込むことにより面白い展開が可能になるかもしれません。

 本学は、研究室・研究科の壁が低いことが大きな特徴です。皆さんも、様々な人との交流を是非進めてください。

 皆さんが、こうした意義ある学生生活を送ることができるように、本学教職員は努力を惜しまないつもりです。

 入学おめでとうございます。我々教職員は皆さんを心から歓迎します。

平成27年10月2日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 小笠原 直毅

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