平成28年度 入学式を挙行(2016/04/05)

イベント報告 2016/04/08

 4月5日(火)、ミレニアムホールにおいて平成28年度入学式を挙行しました。

 本学では、国内外を問わず、また出身大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力を持った学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の研究分野に対する強い興味と意欲を持った者の入学を積極的に進めており、このたび、404名の新入生を本学に迎えました。

 当日は、奈良県 松谷幸和副知事、生駒市 小紫雅史市長、公益財団法人国際高等研究所 長尾真所長、公益財団法人奈良先端科学技術大学院大学支援財団 中村茂一専務理事、奈良先端科学技術大学院大学同窓会 駒井章治会長を来賓に迎え、また本学入学式では恒例となった茂山家による狂言演能(大蔵流狂言『寝音曲(ねおんぎょく)』)を行い、伝統芸能で盛大に新入生の門出を祝いました。

【入学者数】
(博士前期課程)
情報科学研究科     134名(うち留学生6名)
バイオサイエンス研究科 108名(うち留学生4名)
物質創成科学研究科     94名(うち留学生3名)
計  336名

(博士後期課程)
情報科学研究科      33名(うち留学生12名)
バイオサイエンス研究科  15名(うち留学生 2名)
物質創成科学研究科    20名(うち留学生 4名)
計    68名

総計  404名(うち留学生31名)


【小笠原学長式辞】

 本日、奈良先端科学技術大学院大学の博士前期課程に入学された336名の皆さん、また、博士後期課程に入学・進学された68名の皆さん、本学200名の教員、150名の職員を代表して歓迎致します。また、新入生のご家族の方々にも、お祝いを申し上げます。

 今日の新入生の皆さんの中には、世界16ヵ国からの31名の学生諸君が含まれています。母国を離れて、本学で学ぶことを決意された皆さんを、心から歓迎したいと思います。皆さんが入学されたことにより、本学に在籍する留学生は、世界34ヵ国からの211名となりました。本学は、近い将来、世界40か国以上から300名以上の留学生を受け入れ、約60の全ての研究室に留学生が在籍する教育研究環境を実現することを大学の基本的な目標の一つに掲げていますが、これが現実に近づいていると感じています。

 まず、本学が設立された経緯を話しておきたいと思います。奈良先端大の設立にあたって取りまとめられた構想には、本学の研究の使命について、以下のように書かれています。
 「先端科学技術分野は、広範な学際的広がりを持つこと、基礎研究における全く新たな展開が見られること、しかも、その展開が極めて急速であること、基礎研究における新しい知見が、極めて短期間のうちに技術開発につながっており、また技術の進歩が、これらの基礎研究の基盤としてその進展を可能にしているなど、いわゆる科学と技術との一体化が、他の分野以上に顕著であること、等の共通の特色を持っている。したがって、これらの分野においては、従来の学問分野の枠を越えて、学際的な基礎研究の推進が極めて重要である。」

 教育に関しては、以下のように書かれています。
「先端科学技術分野の急速な進展に伴い、これらの分野の研究開発を担う研究者、技術者の組織的養成が、学術研究面でも産業経済面でも大きな課題となっている。特に、これらの分野においては、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度の基礎力を持つ多様な人材を養成することが必要である。」

 すなわち、本学は、急速に発展していた情報・バイオ・物質という先端科学技術分野において、工学・理学・農学・医学等の従来の学問分野の枠を越えた学際的な、そして、科学と技術が一体化した研究活動を展開し、それを背景に、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる人材を育成するために設立されたのです。こうした本学の研究教育のミッションは、「世界を視野に入れ」というキーワードが付け加わっていますが、現在でも、強く社会から求められているものであり、先駆的なものでした。

 そして、活発な研究活動を展開していた、多様な背景を持つ気鋭の研究者が結集し、高度の研究活動とそれを背景にした組織的な大学院教育により、6,911名の修士課程修了者、1,310名の博士課程修了者を送り出してきました。こうした本学の研究教育活動については、客観的な数値指標でも、また、文部科学省による国立大学の教育研究実績の評価においても、極めて高く評価されてきました。例えば、文部科学省は、実績のある大学の研究力を一層強化するために、研究大学強化促進事業として全国で22機関を現在支援していますが、奈良先端大はその一つにも選ばれています。

 さらに、我が国の大学は、ともすれば視野が国内に限られていましたが、現在、世界の将来を見据えて世界の方々を受け入れ、日本の科学技術と社会を知ってもらい、また、日本人学生も世界における科学技術への要請と世界各国の社会を知ることができるよう、大学のグローバル化を進めることが求められています。そのため、文部科学省では、我が国の大学の国際化を牽引する大学を積極的に支援するスーパーグローバル大学創成支援事業を開始しましたが、本学は、その支援対象にも選ばれています。

 研究大学強化促進事業とスーパーグローバル大学創成事業の両方に選定されている大学は全国で17大学だけです。皆さんは、研究力と教育力において、我が国トップレベルの大学の一員となったことを誇りにするとともに、そのチャンスを最大限に活用していただきたいと思います。

 さて、本学の教育研究のミッションと密接に関係することですが、現在の科学技術は大きく変貌しつつあり、我々は新たな科学技術革命の最中にいるとも言えます。

 情報科学分野の新しいキーワードは、ビッグデータ、IoT(Internet of Things)であり、人口知能です。コンピュータ、センサー、ネットワークの性能が高度化し、全世界がインターネットでリアルタイムに繋がれ、世界の様々なデータを一体的に活用することが可能な時代になりました。また、車をはじめ様々なものが、常にインターネットに接続されている時代がやってこようとしています。その結果、「サイバー世界」と「実世界」が融合した、必要なもの・ことを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供でき、社会の様々なニーズに対し、きめ細やかに、かつ、効率良く対応できる「超スマート社会」ともいうべき社会が展望されています。ICT技術は、先進国と言われている社会だけでなく、様々な社会基盤に展開することにより、新しい社会システムが生まれるかもしれません。

 また、ゲノムDNAの塩基配列解析技術や細胞活動のイメージング技術等の革新等により、ヒトを含めた多様な生物の様々な細胞活動、生物活動について、膨大な情報を得ることが可能な時代になりました。その結果、バイオサイエンスは、個々のプロセスを理解する時代から、それらがどのように統合されて多様な生物が生きているのか、そして、地球環境上で、様々な生物がどのように相互作用しているかを理解する時代になっています。 

 物質の分野でも、分析・計測技術の高度化により、新しい物質世界の姿が見えるようになり、原子・分子の挙動の解明に基づき、新しい物質の創成が目指されています。

 さらに重要なことは、科学技術の大変革の中で、情報・バイオ・物質の3領域をまたぐ融合領域の研究者・技術者が求められていることです。例えば、バイオサイエンスの分野では、ゲノム情報や、細胞や個体のレベルで働く様々な生体分子の時間的空間的分布が可視化され、情報として蓄積されるようになり、ビッグデータバイオロジーという情報科学と密接な融合領域が生まれています。新たな物質の創生の上でも、マテリアルズインフォマティックという新しい融合分野も生まれつつあります。一方、生体分子の振る舞いの観察は、ピコ秒、ピコメートルの時間的空間的分解能に達し、ケミカルバイオロジー・ピコバイオロジーという領域が生まれています。情報科学における医療データベースの構築とバーチャルリアリティを応用した遠隔操作技術の発展、物質創成科学における素子の微小化による生体埋包型デバイスの開発、材料の柔軟化と生体適合性付与、新規蛍光物質や抗がん剤開発、バイオサイエンスにおける先端発生生物学や細胞生物学の進展等、3領域を結びつけることで、最先端医用工学の展開も期待されています。

 また、基礎研究とその社会的な展開の間の距離も、ますます近くなっています。そして、「知のフロンティアの拡大により、研究の最前線では質の高い知が次々に生み出されており、何が新たな社会的な価値に繋がるのかの予測が困難となっている」ことが指摘されています。

 今、グローバル社会を舞台に、モデルのない世界で自ら考え、新たな科学技術の創出やその活用を担う、挑戦性・総合性・融合性・国際性を備えた人材が求められています。皆さんには、将来、社会の第一線で、新しい科学技術の開拓・活用により、新しい世界を築いていくために、急速な科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度な専門性と幅広い視野、さらに、異分野、異文化の人々とのコミュニケーション力、協同力を本学で養っていただきたいと思います。

 そのために、博士前期課程に入学された皆さんには、新しい可能性に挑戦して欲しいと思います。皆さんは、これまでの専門知識を深化させていきたい、あるいは、新たな分野に挑戦したい、といった様々な希望のもとで今までの学修の場を離れて本学に入学されました。本学では、どの研究室に所属し、どのような専門分野で研究活動を進めるのか、色々な可能性が開かれています。これから各研究科で、各研究室の研究内容の紹介が始まりますが、どのような可能性が本学にあるのか、今までの知識や卒業研究の経験等にとらわれることなく、広く見てください。今まで知らなかった、あるいは、気が付かなかった、皆さんにとって興味深い研究分野があるかもしれません。本学は、「無限の可能性、ここが最先端」というキャッチコピーを掲げていますが、本学では、皆さんの将来への新たな挑戦が可能なのです。

 また、自分の専門分野に閉じこもることなく、常に様々な研究の動向に目を配り、それを創造的に活用する能力を身につけることも重要です。これから皆さんは色々な研究室に所属して、学修と研究活動を進めていくわけですが、他研究室や他研究科の考え方や手法を取り込むことにより、面白い展開が可能になるかもしれません。本学は、研究室・研究科の壁が低いことが大きな特徴です。皆さんも、様々な人との交流を是非進めてください。

 最後に、皆さんには、心身共に健康で楽しい学生生活を送って欲しいと思っています。本学で新たな生活を始めるにあたって、皆さんは新たに多くの人と知り合いになるはずです。そして、そうした出会いを意味あるものとして継続し、ネットワークに広げていくことは、皆さんの学修・研究活動の幅を広げるだけでなく、これからの人生を支える一生の財産になるはずです。

 皆さんの意義ある学生生活とその未来に期待して、式辞とします。

 入学おめでとうございます。我々教職員は皆さんを心から歓迎します。

平成28年4月5日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 小笠原直毅

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