平成28年度学位記授与式を挙行(2016/09/26)

イベント報告 2016/09/27

 9月26日(月)、学際融合領域研究棟2号館1階研修ホールにおいて学位記授与式を挙行しました。

 授与式では、小笠原直毅学長から出席した37名の修了生一人ひとりに学位記を手渡し、門出を祝して、式辞が述べられました。

 式終了後には祝賀会・記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合いました。

※今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】
情報科学研究科     10名
バイオサイエンス研究科  7名
物質創成科学研究科  1名
計 18名

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科     17名
バイオサイエンス研究科  6名
物質創成科学研究科  2名
計 25名

【論文提出による博士学位取得者】
博士(理学) 1名

◆総計 44名

【学長式辞】
 本日、修士の学位を授与された18名の皆さん、博士の学位を授与された26名の皆さん、おめでとうございます。

 11名の前期課程を修了された方は、後期課程に進学して研究者を目指してさらなる研鑽を目指すとのことですが、多くの方は、修士・博士の学位を持つ、研究者、技術者、あるいは専門的職業人として、自立した、新しい生活がこれから始まります。

 今、科学技術が大変革の時代にあり、世界は変わりつつあります。今までの社会発展モデルを変革し、地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化などの問題と人類の活動を両立させ、人類社会の持続的な発展を実現することが必要になっていますが、それに対する新しい回答が、その中から生まれてくることが期待されます。

 特に、ICT技術の動向は急速です。前期課程の皆さんが入学された2年前のキーワードはビッグデータでしたが、今は、Internet of Things(IoT)、人工知能(AI)です。そして、あらゆるものがネットワーク化されることにより、「サイバー世界」と「実世界」が融合した、必要なもの・ことを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供でき、社会の様々なニーズに対し、きめ細やかに、かつ、効率良く対応できる「超スマート社会」ともいうべき社会が展望されています。ICT技術は、様々な社会基盤に展開することにより、新しい社会システムが生まれるかもしれません。  

 また、ICT技術は科学技術の発展の駆動力にもなりつつあります。ライフサイエンスの分野ではデータ駆動型サイエンスという新しいパラダイムが生まれ、物質科学の分野でもマテリアルズインフォマティックスという言葉も登場しています。例えば、人の疾病や健康に関係するゲノム配列の多様性について、膨大なデータが蓄積しつつあり、AI技術により、それから患者さんの病因や治療の指針についての情報を迅速に得ることができたという研究成果が、ごく最近、報道されています。こうした技術を、ゲノム多様性の特性が異なる、様々な国に拡張していくことも必要です。

 皆さんは、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる人材として、新しい科学技術の創造と活用に、主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。

 基礎的な研究の成果とその社会的展開の距離が短くなっていることも重要です。基礎研究を指向する方もその社会展開という視点もきちんと持ち、また、様々な課題解決のための技術開発やその活用、普及を指向する方も、基礎科学技術の新たな展開に注目し続けていただきたいと思います。  

 そのために、皆さんに求められていることは何でしょうか。最近、機会がある毎に紹介しているのですが、文部科学省の委員会の報告書にある、以下の文章を是非紹介したいと思います。

 知のフロンティアが急速に拡大している現代において、研究者に求められていることは、何よりも知を基盤にして独創的な探究力により新たな知の開拓に挑戦することであり、 研究者は常に自らの研究課題の意義を自覚し、明確に説明しなければならない(挑戦性)。新たな知の開拓のためには、学術研究の多様性を重視し、伝統的に体系化された学問分野の専門知識を前提としつつも、細分化された知を俯瞰し総合的な観点から捉えることが重要である(総合性)。また、異分野の研究者や国内外の様々な関係者との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出すことも求められる(融合性)。さらに、世界の学術コミュニティーにおける議論や検証を通じて研究を相対化することにより、世界に通用する卓越性を獲得し、世界に貢献する必要がある(国際性)。

 私は、本学での専門知識の習得はもちろんですが、学位論文研究を通して身につけた、課題を発見し、その解決法を考え、実践し、その結果を評価し、様々な人と議論し、論文にまとめるという経験、そして、本学で築いた様々な人的ネットワークが、皆さんの今後の創造的な生活を保証していると確信しています。

 また、奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、変化して行く科学技術・社会の中で、皆さんが持続的にクリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築して行くことも重要な役割であると教職員は考えています。

 今日、学位が授与された修了生の皆さんの中には、29名の留学生の方がいらっしゃいます。皆さんを通じて、世界の問題解決のために、世界で活躍する修了生の方々とのネットワークを広げていきたいと思います。

 皆さん、おめでとうございます。今後の活躍を期待するとともに、今後も奈良先端科学技術大学院大学は、皆さんの活躍を支援していきたいと思います。

平成28年9月26日 
奈良先端科学技術大学院大学長 小笠原直毅

NEWS & TOPICS一覧に戻る