〔プレスリリース〕複数のスライスされた標本から、元の立体形状を復元する 画像処理技術を開発 ~ヒトの成長過程の解明にも寄与~

研究成果 2019/07/31

 奈良先端科学技術大学院大学(学長:横矢直和)先端科学技術研究科 情報科学領域の向川康博教授、舩冨卓哉准教授、久保尋之助教らの研究グループと京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センターの山田重人教授は、生体組織を薄くスライスした試料(連続切片)の顕微鏡像から、スライスする前の3次元形状を復元する画像処理技術を開発しました。本技術により、先天異常標本解析センターが所蔵するヒト胚子(主要な組織や器官が形成される受精後3~9週で、胎児になる前の状態)の連続切片試料から、元の3次元形状を復元することができました。この研究成果は、情報学における国際論文誌Pattern Recognition に採録されました。

 組織を物理的にスライスする際に起こる変形の影響で、連続切片を積層してもきれいな3次元形状を復元することは困難でした。このため、顕微鏡で撮影した連続切片の画像を解析することで変形を推定し、これを補正しながらずれることなく順番に積層する技術を開発することで、スライスする前の立体的な形状を復元することに成功しました。

 先天異常標本解析センターが所蔵するヒト胚子および胎児の標本群は世界最大の標本数で知られています。中でも、正常・異常合わせて1,000例に及ぶ連続切片標本は何十年も前に製作されたものが存在していますが、新規の標本を収集することは倫理的に難しく、完全な連続切片標本を新たに製作することは技術的にも難易度が高いことから、大変貴重な研究試料となっています。

 今回開発した技術により、既存の連続切片標本からその3次元形状を復元することができ、器官などヒト胚子内部の形態を忠実に可視化することも可能となりました。ヒトの胚子や胎児はサンプルの稀少さから研究が困難であり、現代でも未解明な部分が多々ありますが、本技術により連続切片標本の活用が進み、ヒトの成長過程の解明に寄与することが期待されます。

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