令和4年度学位記授与式を挙行(2022/6/24)

イベント報告 2022/06/29

 6月24日(金曜日)、学際融合領域研究棟2号館1階研修ホールにおいて学位記授与式を挙行しました。
 授与式では、塩﨑一裕学長から修了生に学位記を手渡され、門出を祝して英語で式辞が述べられました。
 また、当日は、式典の模様をインターネットによりリアルタイムで配信したほか、式典終了後の会場を記念撮影のために開放し、修了生たちは和やかな雰囲気のもと歓談し、喜びを分かち合いました。

 ※今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士後期課程修了者】

 先端科学技術研究科     4名(うち留学生3名)

 バイオサイエンス研究科   1名(うち留学生1名)

【論文提出による博士学位取得者】

 先端科学技術研究科     1名

 計 6名(うち留学生4名)

【学長式辞】

 遂にこの日を迎えました。ここに出席されている皆さん、そしてオンラインで参加されている皆さんにとって、本日はとても重要な一日です。皆さんはきっとワクワクされているでしょうし、私も同感です。

 初めに、本日、学位を授与される皆さん一人ひとり、皆さんのご両親、ご家族、ご友人の方々に心からの祝意を表します。博士号を取得するということは、平時においてさえ決して簡単なことではありません。まして、新型コロナウイルス感染症が2年半にわたり続いているという厳しい状況の下、皆さんは今日という人生の重要な節目に向けて懸命に努力してこられました。困難にくじけず、乗り越えた自分自身を誇りに思ってください。見事です!

 皆さんがこうして成し遂げたことをお祝いするとともに、皆さんの奈良先端大での学びを助け導いてくれた、教員、職員の方々にこの場で感謝を申し上げます。多くの人たちの助けがあってこそ、皆さんはこの記念すべき日を迎えることができたのです。

 本日、皆さんはこのキャンパスを離れ、自らのキャリアの次のステップに入ります。そこでは大学院でこれまで学んだことがその真価を発揮することになるでしょう。学位論文研究に取り組む中で様々なスキルや能力を身に付け、皆さんは大きく進化したに違いありません。入学した時とはまるで別人になったとさえ言えるでしょう。これは決して、多くの知識を身に付けたという意味ではありません。本学で学んだ最新の知識でさえ、このキャンパスを一歩出るやいなや、時代遅れのものとなってしまうでしょう。

 博士後期課程の学生として、皆さんは解決すべき重要な課題を見出し、関連した情報を収集し、それらを評価した上で、論理的に仮説を立て、吟味するトレーニングを積んできました。これら一連の研究活動を通じて、皆さんは物事を客観的に観察し、批判的に思考する能力を身に付けました。さらに、そのような能力が極めて重要であるということを認識しているということが、最も大切です。だからこそ皆さんは、失敗した実験から目を逸らすことはなかったでしょうし、今後、この世の「不都合な真実」にも正面から向き合おうとするでしょう。

 映画「マトリックス」の中で、主人公ネオの前に現れたモーフィアスは、青い錠剤と赤い錠剤を差し出してどちらかを選ぶようにと言います。青い錠剤を飲めばネオは住み慣れた、居心地のいい世界に戻ることができます。しかしそこは仮想現実の世界、真実ではありません。他方、赤い錠剤を飲めば真実を知ることになります。ネオにとっては受け入れがたい、現実の世界の姿を。少しためらいながらもネオは赤い錠剤を選びます。彼は科学者ではありませんが、科学的思考を持つ人であれば皆そうするであろう行動を選択したのです。

 もし、我々が見たいものだけを見て現実を直視しなければ、歪んだ、現実ではない世界を生きることになります。実際、自らが作り出した想像上の天国に安住しようとする人もいれば、心の中に地獄を作って自らを苦しめる人もいます。このような捻れた世界観は、個人の心のみならず、社会をも次第に蝕んでいきます。

 ユネスコ憲章の前文はこのように述べています。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」歴史上繰り返されてきた戦争が全てそうであったように、現在ウクライナで行われている軍事侵攻は人の心が生み出したものです。国境は私たちの心の中にしか存在せず、地上に線が引かれているわけではありません。しかし人はその線を巡って争います。パンデミックは天災です。それに対して戦争は人が引き起こし、自らその結果に苦しむものなのです。

 私たちはこれからも常に、世界的な危機に立ち向かうための知識と技術を生み出し続けなければなりません。皆さんもその取り組みに加わることが期待されています。この世界は皆さんを待望しているのです。加えて、皆さんは本学で培った科学的なスキルと思考法によって、自分の目の前で何が起きているか、世界で何が起きているかを客観的に観察し、論理的に思考し、批判的に判断できるはずです。このような能力は、決して心の中に空想の敵を作り出すことのない地球市民として、そして私たちの社会のリーダーとしての必要条件なのです。

 私たちは現在、前例のない様々な課題に直面し、その解決を迫られています。本日、皆さんは1万人を超える本学同窓生のひとりとなりました。先輩たちは皆さんと同じように本学で学び、この世界をより良いものにしようと頑張っています。同時に、皆さんは、科学を共通言語とするグローバルな研究者コミュニティーの一員にもなったのです。決して孤独ではありません。私たちは共に「赤い錠剤」を飲み、複雑で困難な課題を正面から受け止め、多様な専門性を結集して解決に取り組むのです。

 最後になりますが、改めて本学のモットーを思い起こしてください。"Outgrow your limits"。博士号はゴールではありません。皆さんはまだ自分の可能性を十分には見極めていないのですから、自分の限界を決めてしまうのは早すぎます。博士号は、自分をさらに成長させるための旅に出かけるための、単なる運転免許証のようなものです。皆さんはこれから新しい友人、同僚、チームメイトに出会います。大学院の後、学校に行って学ぶことはもうありませんから、彼らから様々なことを学んでいくことになります。違反者講習を受けるために交通学校に行くことはあるかもしれませんが。

 忘れないでください。修了後も皆さんは「奈良先端大コミュニティー」の一員なのです。大学は修了生の活躍によって評価されるものですから、本学は常に皆さんの成功を待ち望んでいます。ですから 同窓生の世界的なネットワークである本学同窓会に参加し、今後も近況を教えてください。

 最後にもう一度。修了おめでとう!本日、最も新しい同窓生となった皆さんを誇りに思います。

 Go and outgrow your limits!

令和4年6月24日 

奈良先端科学技術大学院大学長 塩﨑 一裕

式辞を述べる塩﨑学長
式辞を述べる塩﨑学長
学位記を受け取る修了生
学位記を受け取る修了生

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