令和5年度学位記授与式を挙行(2023/6/26)

イベント報告 2023/06/28

 6月26日(月曜日)、学際融合領域研究棟2号館1階研修ホールにおいて学位記授与式を挙行しました。授与式では研究科長、指導教員らが見守る中、塩﨑一裕学長から修了生ひとりひとりに学位記が手渡されました。続いて、塩﨑学長から式辞が述べられ、博士号取得後も様々な形で学び続け「自分らしさ」を追求してほしいというメッセージと共に、"Outgrow your limits"という本学のスピリットに触れ、この精神で結ばれた奈良先端大コミュニティーの一員として今後の活躍を期待しているという言葉が贈られました。

 当日は、留学生のご家族等に向けて式典の模様をインターネットによりリアルタイムで配信したほか、式典終了後の会場を記念撮影のために開放し、修了生たちは和やかな雰囲気のもと歓談し、喜びを分かち合いました。
 
※ 今回の学位授与者の内訳は、以下のとおりです。

【博士後期課程修了者】

 先端科学技術研究科        6名(うち留学生3名)

                計 6名(うち留学生3名)

【学長式辞】

 本日、博士の学位を授与された皆さんに、まずは心からのお祝いを申し上げます。コロナ禍という未曾有の状況の中、多くの困難があったと思いますが、皆さんは日々、研究に取り組み、今日の学位取得という大きな目標に到達されました。ご自身が成し遂げたことに誇りを持つとともに、今日という日の喜びを心に刻んでいただきたいと思います。

 そして、皆さんのご家族、ご友人の方々、加えて、皆さんを熱心に指導してこられた先生方にも心よりお祝いを申し上げます。皆さんの奈良先端大での学びを、様々な形で支えてきた全ての方々にとって、今日の日は大きな喜びに違いありません。

 さて、皆さんは、小学校から長年にわたって学びを積み重ね、本日、博士号を取得して大学院を修了します。おそらく学校に通って学ぶことはもうないでしょう。しかしながら、みなさんの学びはこれで終わりではありません。アメリカのプラグマティズムを代表する哲学者であるJohn Deweyは、「学ぶことは今を生きる過程そのものであって、将来を生きるための準備ではない」という言葉を残しています。例えば、皆さんを指導してくださった教員の方々が大学院を修了したのはずいぶん前のことではないかと思います。しかしながら、先生方は大学院修了後もそれぞれが自ら学びを積み重ねつづけることで、常に最先端の研究分野において学生を指導することができるわけです。

 もし、私たちが学びを続ける努力をやめてしまったとしたら、何が起きるでしょうか。
 皆さんは、熱力学の第二法則、あるいはエントロピー増大の法則をご存知かと思います。私は生物学者ですが、私たち人間を含めて生き物は食物などの形でせっせとエネルギーを取り込み、懸命に体内の秩序を維持しています。このような恒常性、すなわちホメオスタシスを維持する活動が止まってしまうと、エントロピー増大の法則に従って生命体としての秩序は失われていきます。例えば、体温は周囲の温度と同じになるなど、環境との平衡状態、すなわち「生命体の死」に近づいていきます。

 AmazonのCEOだったJeff Bezosという方をご存知でしょうか?一昨年、CEOを辞任したJeff Bezosは、Amazonの株主への最後の書簡で、エントロピー増大に絶え間なく抗う生命活動の特徴を面白い例えとして使っています。すなわち、生物がその命を維持するための活動のように、絶え間なくエネルギーを注ぎ続けなければ、私たちは周りとの平衡状態に陥ってしまう、すなわち自分らしさやオリジナリティーを失ってしまうと述べています。周囲と同じになってしまわず、自分らしくあり続け、独創性を発揮していくには、弛まぬ努力を続けることが必要であり、私はその一つが学び続けることだと考えます。

 学びにはいろいろな形があります。本を読んだり、学校で先生から知識や技術を学んだりする以外にも、学びの機会を自ら求めていくことができます。これから本学を離れ、社会に出ていく皆さんは、新しい友人、同僚に出会うでしょう。とても個性的な人、ユニークな経験や経歴の持ち主と知り合うかもしれません。多様な人々の、自分とは違った生き方を学ぶことで、それまでの自らの経験だけでは知り得なかった人生の可能性や選択肢に気づいたり、ロールモデルを見つけたりすることがあるでしょう。私自身、これまでの自分の経歴を振り返ると、アメリカに留学したり、カリフォルニア大学の教授を務めたりという人生の岐路には、やはり色々な出会いがあったように思います。

 今日、皆さんが授与された博士号は、運転免許証に例えられることがあります。自分をさらに進化させるための旅に出かけるための運転免許証です。博士号は決してゴールではありません。卒業しても"Outgrow your limits"という奈良先端大スピリットを胸に、弛まぬ努力で学びを重ねて自分の限界を次々と打ち破り、Jeff Bezosの言う「自分らしさ」を追求し続けてください。そんな皆さんはいつか、誰かの貴重なロールモデルになるに違いありません。

 この"Outgrow your limits"という奈良先端大スピリットで結ばれた皆さんは、卒業してもこの大学コミュニティーの一員です。教職員も含めた奈良先端大コミュニティーとの繋がりは、皆さんの財産の一つだと思います。本学はこれまで1万人を超える修了生を輩出し、同窓会は修了生による世界的ネットワークの場となっています。本学同窓会や毎年秋に開催しているホームカミングデーなどを通して、是非、奈良先端大との繋がりを、今後のキャリアの中でも活かしていって頂ければと思います。

 最後に改めて、本日の博士号取得に心からのお祝いを申し上げるとともに、皆さんのこれからの活躍と輝かしい未来を祈念して、私の式辞の結びといたします。

令和5年6月26日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 塩﨑 一裕  

学位記を受け取る修了生
学位記を受け取る修了生
式辞を述べる塩﨑学長
式辞を述べる塩﨑学長

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