令和5年度学位記授与式を挙行(2024/3/22)

イベント報告 2024/03/27

 令和6年3月22日(金曜日)、ミレニアムホールにて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う431名の修了者を送り出しました。
 今回の授与式は、課程ごとに開催する2部制で行われました。
 授与式では、塩﨑学長から博士前期課程の修了生の代表者及び博士後期課程全員に学位記が手渡され、式辞が述べられた後、来賓から祝辞が述べられました。続いて本学支援財団が優秀な学生を表彰する制度であるNAIST最優秀学生賞の受賞者14名に対して、同財団小林哲也理事長から賞状及び副賞が贈られました。最後に学生による音楽演奏が行われ、修了生の門出を祝しました。
 式典終了後、会場を開放し、多くの修了生が指導教員や在校生も交えて記念撮影を行っていました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】

先端科学技術研究科    363名(うち留学生30名) 

【博士後期課程修了者】

先端科学技術研究科     68名(うち留学生26名) 

総計           431名(うち留学生56名)

【学長式辞】

 初めに、本日、学位を授与された皆さんに心からのお祝いを申し上げます。コロナ禍の頃を振り返りますと、このミレニアムホールにこうして皆さんと集い、学位の取得と新たな門出を共に喜び合えることは、大変幸せなことと改めて感じます。また、お忙しい中、ご列席の上ご祝辞を賜ります、本学支援財団理事長で近鉄グループホールディングス株式会社 代表取締役会長・小林哲也様、そして本学同窓会の安原主馬先生に深く感謝いたします。
 皆さんのご家族や友人、そして、皆さんを入学以来、熱意をもって指導してこられた教員の方々にもお祝いを申し上げたいと思います。加えて、今、このステージ上にいらっしゃる研究科長や領域長、保健管理センター所長をはじめ、様々な形で皆さんの本学での学びをサポートしてくださった教職員にとっても、今日という日は特別な日です。本日、ここにいらっしゃらない方々も含め、皆さんの奈良先端大での学びを支えてくださった全ての方々に、大きな拍手を送りましょう。

 さて、本学での学びを終えた皆さんは、大学の学部あるいは高等専門学校での学びと、大学院での学修は大きく異なることがお分かりになったと思います。小学校から大学学部までは、既存の知識を理解し、それを活用することを学びます。これに対して、大学院での学びはORTです。皆さん、ORTという略語はご存知ですか?ORTは知らなくても、OJTはおそらく聞いたことがあるでしょう。OJTは "On the Job Training"、すなわち働きながら実務をとおして受ける職業内訓練です。これに対してORTは "On the Research Training"、つまり実際の研究に取り組みながらの学びです。
 大学院でみなさんは、自らの学位論文研究に取り組み、指導教員の先生方や研究室のメンバーからアドバイスやさまざまな指摘を受けながら、研究を進めてきたことでしょう。学会発表や論文発表をした場合には、学外の研究者からも批評や評価を受けることになります。このような研究のプロセスの中で、多様な第3者の視点からの意見に基づいて改めて自分の研究を見直し、考え直すということを繰り返すうちに、客観的な見方や、批判的な考え方、いわゆる "critical thinking"といわれるスキルを学ぶことができるのです。

 他人だけでなく、自らをも客観的に評価・批判する critical thinkingは、室町時代の能楽師、世阿弥の唱えた「離見の見」に通じるものがあります。世阿弥が芸事の知恵を息子に書き残した「花鏡」は、ここ奈良県生駒市にある宝山寺に文化財として保存されていますが、その中で世阿弥は「我見」「離見」「離見の見」という3つの視点が存在することを指摘しました。「我見」は能舞台に立つ自分自身の視点、「離見」は観客が舞台の上の自分を見る視点、そして「離見の見」は自分が客席にいるつもりで舞台上の自らを客観的に見る視点です。世阿弥は、この「離見の見」で自らを客観的に、批判的に見つめることで、独りよがりを避けなければならないと述べています。

 実は、この「離見の見」の重要性は最近になって、別の表現でよく耳にするようになりました。それはアメリカの心理学者 John Flavellが提唱した「メタ認知」という言葉です。「メタ認知」は、自分のさまざまな認知活動、すなわち知覚や行動、思考を客観的に認知してコントロールすることです。このメタ認知は、何かを実行している自分を見つめる「もう一人の自分」などと表現されており、まさに、世阿弥の「離見の見」と同じ概念です。
 本日、皆さんが授与された大学院の学位は、世阿弥の「離見の見」あるいはFlavellの「メタ認知」を含むcritical thinkingをはじめ、これから皆さんが多様な学術的、社会的課題に取り組む上で役にたつ、さまざまなスキルを身につけたという証です。すなわち、皆さんが奈良先端大で学んだことは、それぞれの学位論文研究の分野やテーマに限定されたものではなく、多様な仕事、課題、あるいは障害の克服に役立つスキルや能力なのです。ですから本学を修了する皆さんは、次の新しい挑戦をする準備ができています。今日がゴールではありません。皆さんにとって、わくわくするような "Outgrow your limits"がこれからまた始まるのです。

 これからの皆さんの新しい挑戦に必要なのは、まず、自分が取り組むべき新しい「問い」を見つけることです。何が取り組むべき、正しい問いなのかを見極めることも、本学でのORT "On the Research Training"で磨いてきたスキルの一つです。現代経営学の発明者と言われるPeter Druckerは:
「重要で、かつ難しいのは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、役に立たないものはない。」と述べています。本学を修了した皆さんなら、それぞれが次に情熱を傾けて取り組むべき「問い」を見つけられると信じています。

 そして近い将来、本学が誇る同窓生の一員となった皆さんに再びお会いできる日を楽しみにしています。本学はこれまで1万人を超える修了生を輩出し、同窓会は修了生による世界的ネットワークの場となっています。是非このネットワークに加わり、そしてこのネットワークを積極的に活用していってください。
 最後に改めて、修了生の皆さんにお祝いを申し上げるとともに、卒業後も"Outgrow your limits"という奈良先端大スピリットで切り開く、輝かしい未来を祈念して、私の式辞の結びとさせていただきます。

2024年3月22日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 塩﨑 一裕

【支援財団理事長祝辞】

【R6.3.22令和5年度学位記授与式 祝辞(第1部用)】

 奈良先端科学技術大学院大学の令和5年度学位記授与式にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。本日、学位記を受けられました皆様、博士前期課程を修了されましたこと、誠におめでとうございます。また、塩﨑学長をはじめご指導に当たられた教職員の皆様、これまで支えてこられたご家族の皆様に心よりお祝いを申し上げます。

 日本は革新的な製品やサービスを生み出せず、長らく停滞の時を過ごしてきました。過去の成功体験から抜け出せず、変化を恐れ、従来のやり方に捉われ続けたことがその原因と言っても良いでしょう。
 変化を生み出すには、常識に捉われず、現状に少しでもおかしな点、不合理な点はないか気づく必要があります。私たち支援財団のシンボルでもあるアインシュタインは、「大切なのは、疑問を持ち続けることだ。神聖な好奇心を失ってはならない。」という言葉を残しました。今まで当たり前だと思っていたことも、好奇心を持って見つめれば何かしら発見があり、疑問が浮かんでくるものです。変えることを恐れず、疑問の芽をさらに追求していくことが、新しい理論や技術に結びつくものと思います。

 現代社会は、複雑かつ多様で困難な問題があふれておりますが、皆様がこの大学で蓄積してこられた最先端の知識や創造力、研究力は、世界でも十分に通用するものと思います。新たなステップに進まれても、「神聖な好奇心」を忘れず、社会の発展や人々の生活向上のために精進され、素晴らしい未来を切り開かれることを願っています。
 最後になりましたが、本日ご出席の皆様のご健勝、ご多幸と奈良先端科学技術大学院大学のますますのご発展を祈念して、簡単ではございますがお祝いの言葉といたします。

令和6年3月22日
公益財団法人 奈良先端科学技術大学院大学支援財団
理事長 小林 哲也

【R6.3.22令和5年度学位記授与式 祝辞(第2部用)】

 奈良先端科学技術大学院大学の令和5年度学位記授与式にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。本日、学位記を受けられました皆様、博士後期課程を修了されましたこと、誠におめでとうございます。また、塩﨑学長をはじめご指導に当たられた教職員の皆様、これまで支えてこられたご家族の皆様に心よりお祝いを申し上げます。

 イギリスの科学者チャールズ・ダーウィンが、その著書「種の起源」の中で説いた、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは変化できる者である。」という進化論は、皆様もよくご存じだと思います。キリンは高い場所の草を食べるために首を伸ばしたわけではなく、環境に適した少しだけ首の長い個体が生き残ったという説です。固定概念や過去の成功体験に縛られず、現実を直視し、環境に適応する適切な変化、すなわち、変えるべきものは変え、変える必要のないものはしっかりと守っていくことが重要であると、いう文脈でよく紹介される言葉であります。

 日本は、過去の成功体験から抜け出せず、従来のやり方に捉われ続けたため、革新的な製品やサービスを生み出せず、長らく停滞の時を過ごしてきました。偶然に支配される動物の世界とは異なり、私たち人間は自らの意思で変わることができます。皆様には、社会の変化を敏感に捉え、多様性を受け入れることのできる柔軟でしなやかな思考と感性を磨き、自らを変革させていただきたいと思います。

 現代社会は、複雑かつ多様で困難な問題があふれておりますが、皆様がこの大学で蓄積してこられた最先端の知識や創造力、研究力は、世界でも十分に通用するものと思います。その卓越した能力を如何なく発揮していただき、混沌とした社会を変革する先兵として、ご活躍されることを願っています。
 最後になりましたが、本日ご出席の皆様のご健勝、ご多幸と奈良先端科学技術大学院大学のますますのご発展を祈念して、簡単ではございますがお祝いの言葉といたします。

令和6年3月22日
公益財団法人 奈良先端科学技術大学院大学支援財団
理事長 小林 哲也

【本学同窓会会長祝辞】

 皆様、奈良先端科学技術大学院大学 同窓会 会長の清川と申します。

 本年度の学位記授与式にあたりまして、同窓会を代表しまして、一言ご挨拶を申し上げます。

 本日、奈良先端科学技術大学院大学を修了される皆さん、大変おめでとうございます。

 ご両親、ご家族の皆様ならびに関係各位の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。

 これまでに、奈良先端大の修了生はのべ10,000名を数えます。多くの先輩方が国内外の大学、研究機関、大企業などで活躍しており、奈良先端大のブランドを不動のものにしています。皆さんが社会に出た後に、本学で学んだことに誇りを感じたり、本学との繋がりを実感したりする機会が多々あることと思います。また、そうした有り難みは年を経るごとに強まっていくことでしょう。

 奈良先端科学技術大学院大学 同窓会では、修了生や在学生を支援する様々な事業を展開しています。ぜひ本学同窓会に御入会いただき、その繋がりを最大限に活用していただければと思います。

 さて、皆さんは、初めて奈良先端大の門をくぐった日のことを覚えていますか。
 私自身は、1994年に入学した本学の2期生です。1993年に受験した当時、奈良先端大のことを知る人は稀で、親からはどうしてそんな海のものとも山のものとも分からないところに行くのかと言われました。情報棟は半分だけで、何にもないキャンパスの真ん中に小さな食堂のプレハブがあるだけでした。本当にこんなところでやっていけるのかな、と思いました。

 ですが、世界で活躍する先生方と熱い志をもった学生たちが結集して、実に生き生きと楽しそうに研究している様子を見て、奈良先端大はすごいところだ、自分もこの中に飛び込んでわくわくしたいと思いました。そして、博士後期課程を修了するまで、実際に毎日わくわくしながら研究することができました。

 皆さんも、入学するときに思い描いたような研究生活、学生生活を送ることができたでしょうか。

 実は、奈良先端大に入学し、本日無事修了する皆さんは、例外なく、現代社会で求められる人物像を体現しています。ですから、自信を持って、社会で大活躍してほしいと思います。

 具体的に、皆さんは次の3つの強みを持っているのです。

 1つ目はチャレンジ精神です。変化の激しい現代社会では、変革を恐れずむしろ追い求める姿勢が必要です。慣れ親しんだ大学や高専などを飛び出して奈良先端大の門をくぐり、新しい環境で新しい研究成果を生み出してきた皆さんは、間違いなく人一倍強いチャレンジ精神を備えています。

 2つ目は問題解決能力です。研究には答えがありません。最先端の研究であればなおさらです。皆さんも、専門知識を身に着け、先行研究を調べ尽くして、それでも何度も何度も失敗して、最後に世界最先端の成果をあげてこられたのではないでしょうか。問題解決の方法論、その難しさや尊さを体得していることは、皆さんの非常に大きな強みです。

 3つ目はヒューマンネットワークです。研究はひとりではできません。指導教員や先輩とディスカッションを繰り返し、友人と励ましあい、切磋琢磨して、日々を過ごしてきたはずです。この人脈は一生の宝です。修了してからも長きにわたり、恩師や友人たちの活躍する姿に刺激を受け、励まされることと思います。また、冒頭でも申し上げたように、10,000名を超える奈良先端大の修了生が社会で大活躍しておられます。こうしたパワフルな人脈を抱えていることも、皆さんの非常に大きな強みです。

 現代はこれまでの常識が通用せず、誰にも正解が分からない時代です。AIが産業構造を根底から大きく変えつつある一方で、少子高齢化、地球温暖化、国際紛争などなど、一筋縄ではいかない喫緊の課題が山積しています。皆さんには、このような激動の時代に積極的に立ち向かい、社会に貢献してほしいと思います。当事者意識を持ち、変化を恐れず、平和で豊かな世界を作るために自分に何ができるのかを真剣に考え、提案し、実行していってください。

 社会に巣立つ皆さんひとりひとりの活躍が、人類の未来を変えていきます。ぜひ、奈良先端大で育んだチャレンジ精神、問題解決能力、ヒューマンネットワークを最大限に活用して、それぞれの立場で新しい時代を切り拓き、力強く引っ張っていってください。皆さんひとりひとりが、社会を変えるような大活躍をされることを祈念しています。

 最後になりましたが、改めまして、本日は修了おめでとうございます。

令和6年3月22日
奈良先端科学技術大学院大学同窓会
会長 清川 清

式辞を述べる塩﨑学長
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学位記を受け取る修了生
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NAIST最優秀学生賞の授与
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課外活動団体おいさーによる演奏の様子
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