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研究者紹介 vol.30 バイオサイエンス領域 植物免疫学研究室(西條研)舘田 知佳 先生

2010年3月東北大学大学院生命科学研究科博士後期課程修了。2010年から2020年にかけて、日本学術振興会特別研究員、同海外特別研究員(シカゴ大学・米国)、シカゴ大学博士研究員、岩手生物工学研究センター研究員として、病原体と植物が出会った際に見られるそれぞれの生存をかけた攻防に関する研究に従事。2020年4月より現職。

研究者への道のり

私は出身が東北の青森県なのですが、研究者としてのスタートは、高校生の時に「地元青森で生活できるお給料を得て働けて、面白いことをしている職業に就きたい」と考えたことにあります。当時進路相談室にあった雑誌に「青森県グリーンバイオセンター」という青森県の研究所の紹介記事があり、県の研究機関であり、かつ高校生にもわかるくらいキャッチーで面白い研究テーマにも挑戦していることを知りました。それがきっかけで、農学の研究って面白そう、東北地方で盛んな農業に直結した仕事ができるかもしれないと思い、大学は農学系の学部に進学しました。

研究者になろうと決心したのは、博士後期課程に進学することを決めたときです。実は修士課程(博士前期課程)の時点では、企業での就職活動をしていて、研究開発職で企業からの内定もいただいていました。ただ、就職活動の過程で、企業での研究も面白そうではあるけど、大学で基礎研究を続けたいと思い直し、博士後期課程に進学することにしました。
博士号取得後は、英語に苦手意識があったこともあり、せっかくなら英語圏で研究をしたいと考えていたところ、アメリカのシカゴ大学で、学振の特別研究員として受け入れていただきました。当初は1年間で帰国する予定でしたが、その後、海外学振に採用していただけたこともあり、結局5年ちょっと滞在しました。
帰国後は、公益財団法人岩手生物工学研究センターで5年間働いたのですが、ここで従事していた研究で発見した現象の、より細かい分子メカニズムに取り組みたいと考えていた頃、タイミングよく本学で公募があり、応募して採用されました。

私の研究テーマは、植物が病気にかかったときにどのような方法で植物が病気と闘っているのか、どうやって植物を病気から守るかです。畑で育っている農作物が病気になる仕組みを、基礎研究から解き明かしていくことで、何故強い植物と病気になる植物がいるのか、強い植物を作るにはどうすればいいのかなどがわかるようになります。強くなった、または弱くなった植物に病原体を感染させると、目に見えて結果がわかるのも面白いです。また、研究を通して、将来的には研究成果を農業現場に還元したいという思いがあります。

研究と生活のバランス

私は「集中して頑張るときと休むときのメリハリをつける」ことをアメリカの研究生活で学んだので、この原則を日本に帰っても崩さないよう生活をしています。朝は8時頃か9時頃に大学に来て、どんなに遅くても19時くらいには帰宅します。月に数回は夜中までいることもありますが、ほんの数回です。土日は植物のお世話のために大学には来ますが、実験やディスカッションなどの予定は入れないようにしています。

シカゴでの研究生活以前は、夜中まで研究をすることが多かったです。11時過ぎなどの昼近い時間に始めて、夜中までずっと。土日も研究をしていました。ただ、シカゴの夜はそもそも危ないので、みんな適度な時間に家に帰るんですね。そしてプライベートの時間を楽しむ。生活を変えたきっかけは、同僚に「そんなにずっと実験だけしていて楽しいの?」「もうちょっと自分の生活を楽しみなよ」と言われたことです。そこで、土日に実験は基本的にやらないと決めて生活してみると、案外それまでとほとんど成果量が変わらないことに気づき、それ以降は今の生活スタイルになりました。
いまも、自宅で仕事をしないわけではありませんが、急を要する案件以外は、自分のこれからの研究の構想を考えるような仕事や外の研究者との交流などに限るようにしています。
お酒が好きなので、土日は家で美味しいお酒を楽しんでいます。奈良にはおもしろいビールや日本酒があるので、奈良市内のブルワリーや酒蔵に買いに行くのも好きです。コロナ禍じゃなければ飲み歩きもできるのにとは思います。

本学の研究環境と課題

NAISTの研究環境はとっても良いです。共通機器が揃っていて、他の大学なら徴収されるであろう機器使用料がほとんどないのもすごくありがたいです。研究環境は、本当に素晴らしいと思います。他のラボの教員と接する機会がもう少しあれば、さらに面白いことができるのかなとは少し思います。コロナ禍であることもあって、セミナーがあったとしてもオンラインであることが多いので。
学内の施設で要望があるとすれば、大学全体で女子トイレの数は少ないように思います。特に、バイオサイエンス領域は女子学生在籍率が4割近くなのに現状に合っていないのではないでしょうか。授業の後の休憩時間などは特に混むので困ることがあります。
また、大学の近くに徒歩で行ける範囲に気軽に行けるカフェやレストランがあればいいなと思います。いつもと違う空間で書き物とかできたら、キャンパスライフももっと楽しくなるのかなと思っています。

(令和4年8月)

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