平成24年度 学位記授与式を挙行(2013/3/22)

イベント報告 2013/04/03

3月22日(金)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う384名の修了者を送り出しました。

授与式では、磯貝学長より学位記が手渡され、式辞が述べられた後、小山博之 本学支援財団専務理事より祝辞が述べられました。

また、本学支援財団が優秀な学生を表彰するNAIST最優秀学生賞の表彰を行い、12名の受賞者に同支援財団から賞状及び賞金が贈られました。

式終了後には祝賀会・記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合っていました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。( )内は短期修了者数。

【博士前期課程修了者】
情報科学研究科 131名(2名)
バイオサイエンス研究科 112名
物質創成科学研究科 94名
計 337名(2名)

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科 21名(6名)
バイオサイエンス研究科 6名(1名)
物質創成科学研究科 18名(1名)
計 45名(8名)

【論文提出による博士学位取得者】
博士(工学) 2名

総計 384名(10名)

【学長式辞】
本 日の学位記授与式にあたり、修士の学位及び博士の学位を得られた修了生の皆さんに、本学教職員はじめ、全ての構成員を代表してお祝いを申し上げます。本日 は、修了生のご家族の方々も大勢見えられておりますが、ご家族の皆様にもお祝い申し上げますとともに、長い間、あたたかいご支援をいただいたことに、学長 として感謝申し上げたいと思います。


皆さんを含めて本学が開学以来これまでに与えてきた学位の数は、修士5,897名、課程博士 1,105名、論文博士42名であり、改めて本学の歴史を感じております。私は、この3月で学長の任期を満了し、本学を去ることになります。従って、皆さ んは、私の大学人としての最後の教え子であり、今日は私自身の卒業式でもあるということであります。


まず、留学生の皆さんへお礼 を申し上げたい。本日の修了生の中には、25名の留学生がおられます。皆さんはそれぞれのふるさとを離れ、生活や言葉の違う日本の中で勉学に励まれ、今日 めでたくその目的を果たされました。その努力に敬意を表したいと思います。本学は、ここ数年、急速に留学生の数が増えてきました。皆さんのお蔭で本学の国 際化が進み、日本人学生の国際的センスが鍛えられたのではないかと思っています。皆さんには、お国に帰られるにしても、日本で仕事をされるにしても、これ から日本とそれぞれの国との架け橋になっていただきたいと思っています。


そしてすべての修了生の皆さん。皆さんは本学在学中に、 コースワークや研究に励まれ、立派な学位論文を書かれました。皆さんにお渡しした学位記は、それぞれの学位に相応しい知識と能力を持っているという認定の 証しです。これまでの皆さんの努力に、学長として敬意を表したいと思います。皆さんの中には、まだこれから博士後期課程で勉学を続けられる人も大勢いるこ とと思いますが、そうした皆さんには、優れた研究者となるべく、いっそうの研鑽を積まれることを期待します。研究者になるということは、単に研究をすると いうことではなく、研究を職業とするということです。そのことの意味を自分自身でよく考えてみてください。

 
そして今日を機に大学を離れられる皆さん。皆さんには、これからも学び続けるという努力を忘れずにいて欲しいと思っています。学びは大学だけですればいいわけではありません。皆さんはこれからの人生の中で、どこにいても一生学び続けることが必要なのです。

さ て、皆さんのうちの大部分が入学してきた年、2011年は、日本のある意味では戦後最大の出来事があった年です。そして、その年は本学の創立20周年の年 でもありました。また、2012年は、山中伸弥先生のノーベル賞の受賞という、本学にとってもたいへんうれしいニュースがありました。一方、この年の12 月には総選挙が行われ、政権の再交代ということが起きた年でもあります。この2年間というのは、このように、皆さんにとっても、本学にとっても、また、日 本にとっても、大きな出来事があり、めまぐるしく変化した年でした。

私は2年前の入学式で、3月11日の大震災と原発事故について、次のように、述べました。

「皆 さんご存知のように、この3月11日に発生した東北関東大震災は、多くの人的、物的、また自然環境の被害をもたらしました。また、原発問題については危険 な状態が続いています。今回の事は、科学技術に依存した社会がその基盤を破壊するような大きな自然災害にはきわめてもろいことを私達に教えたものでもあり ます。自然科学に関わる者として、人間は地球生態系の一部であることを意識するとともに、自然に対する謙虚さを持つことが必要であるとあらためて感じまし た。それは科学するものの知恵でもあります。私達科学者の任務は、自然と科学と社会の関係を理解し、人類の幸福のために貢献することでありましょう。その 意味で、今こうした事態に対し、私達自身に何が出来るかは、それぞれの立場、また大学や、科学技術のコミュニティーとして考えていかなければなりません。 さらに言えば、今回の原発事故は、第2次大戦後、エネルギー消費型、一極集中型の社会構造を目指して発展し続けてきた日本の社会システムの一つの終焉を意 味し、新たな社会システムの構築のきっかけになるのかもしれないと思っています。その新たな社会システムを作って行くのは皆さんでしょう。その意味でも皆 さんは、自らの社会的な立場を理解し、自ら学び、科学者として成長して欲しいと思います。」


この言葉は、今思い返しても大変重要 なメッセージを皆さんに伝えているものと思っています。あれから2年がたち、地震や津波からの復興は少しずつ進みつつあるものの、まだまだ、第1次産業を 中心とした地域コミュニティーが元に戻ったとは言えません。また、原発事故は、原子炉の問題だけでなく、放射能汚染地域の除染の問題は、ほとんど手つかず と言ってもいいのかもしれません。ふるさとの土地に戻れない人々もたくさんいます。一方、私達は、政権が変わり、日ごとのいろいろなニュースがある中で、 こうした大きな問題が起きたことを、「古いニュース」として忘れつつあるのかも知れません。しかし私達は、日本の中で科学技術に由来する大きな負の遺産を 抱えてしまっていることを、決して忘れてはいけないのです。

日本は今、社会構造の基盤であるエネルギー問題で、大きな岐路に立っていると 言わねばなりません。日本のエネルギー供給の30%に達している原子力発電を今後どうするのか。原子力発電には、発電に要する直接コスト以外にも、政策的 コストあるいは社会的なコスト、さらには使用済み核燃料の処理コストや廃炉のコストなどの発電後の膨大なコストがかかることが明らかになってきました。一 方、現在の発電量のかなりの部分を占めている化石燃料などによる発電は、地球の炭酸ガス濃度の増大を招いていくことになることは明らかです。こうした状況 の中で、私達はある種の選択を迫られていると言えます。

さらには、地球上には10億人の飢えた人々がいると言われ、世界の中で、遅れてき た人々と先進国の間で大きな対立があります。また、私達の後の世代の人々のことも考えなければいけません。今、飢えている人々や、私達の後に続く人々のた めに、自然資源や天然資源をどう活用していくのかも考えなければいけない時になっています。それが持続可能な社会を考えるということだろうと思います。皆 さんは、今こうした時代の中にいるのです。


私は、科学は私達が自然を理解する知を増やしていくものだと思っています。それは、人 の心を豊かにするものです。そして、科学に基づいた科学技術は、人の生活を豊かにするもののはずです。しかし、科学によって自然のすべてが理解されている のではないように、科学技術は時として、私達が十分には理解できなかった弊害をもたらすことがあるのです。そのため、科学技術は常に検証の対象として、そ の有用性や必要性を判断しなければなりません。そこでは、科学の知と人文社会学の知の総合化が必要であります。社会の中の科学、あるいは科学技術とは、そ うしたもののはずです。


今、日本の社会では、大学、特に国立大学への風当たりが強く、「役に立つ」大学であれという社会的な要求 が声高に言われています。それは、裏返せば大学への期待と言えないこともありません。しかし、私達はあらためて、役に立つとはどういうことかを考える必要 があります。大学の2大機能は研究と教育であります。そして、その教育の成果の評価は、実は皆さん修了生の活躍によって決まるべきものであります。日本 は、明治時代も、また戦後の復興の時も、先進国に追いつけ追いこせを指標に社会を築いてきました。その目的の中で、大学が育ててきた人材が活躍してきた、 つまり大学が機能してきたのだと私は思っています。今、先進国の先頭に立つようになり、追いつくべき目標がない世界の中で、しかも資源の無い国として、ま た、国として大きな岐路に立っている状況の中で、これからどんな国を、どんな社会を作っていけばいいのかが問われています。大学は、こうした時代の要請の 中にあります。日本の同世代の10数パーセントしか学ばない、大学院というある意味ではエリート教育システムの中で育ってきた皆さんには、現在の世界情勢 の中で、これからの日本の社会を切りひらき、引っぱっていくことが期待されております。皆さんがそれに将来貢献するということが、実は大学が役に立つとい うことであろうと私は思っています。そこではきっと、かつてとは違った知の使い方が期待されているのでしょう。本学はその意味でも、社会に役に立つ人材を 育て上げてきたと自負しています。どうか、皆さんの人生を賭けて、こうした課題に挑戦して下さい。


高村光太郎の作品の一つに有名な「道程」という詩があります。この機会に、皆さんにこの詩を送りたいと思います。最初の一節はこう始まります。

どこかに通じている大道を僕は歩いているのじゃない
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
道は僕のふみしだいて来た足あとだ
だから
道の最端にいつでも僕は立っている


皆 さんは、道の無い広い荒野のような世界に自分で道を作りつつ、これからの人生を歩いていかなければいけないのです。皆さんがこれから作っていく道が、決し て楽ではないが楽しいものであることを祈っています。そして、皆さんが頑張って歩いていく姿は、きっと、誰かが見ていると思って下さい。私達教師も、その 一人でありたいと思っています。皆さんのこれからの活躍を期待しています。


修了、おめでとう。

平成25年3月22日

奈良先端科学技術大学院大学 学長 磯貝 彰

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