平成25年度秋学期入学式を挙行(2013/10/02)

イベント報告 2013/10/04

10月2日(水)、先端科学技術研究推進センター1階研修ホールにおいて平成25年度 秋学期入学式を挙行しました。

本学では、国内外を 問わず、また出身大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力をもった学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の 研究分野に対する強い興味と意欲をもった者の入学を積極的に進めており、このたび、32名の新入生を本学に迎えました。

入学者のほとんどが海外からの留学生であったため、今回初めて、学長式辞が英語で行われました。

【入学者数】
(博士前期課程)
  情報科学研究科 13名(うち外国人留学生 12名)
  計 13名
(博士後期課程)
  情報科学研究科 9名(うち外国人留学生 8名)
  バイオサイエンス研究科 5名(うち外国人留学生 4名)
  物質創成科学研究科 5名(うち外国人留学生 3名)
  計 19名

総計 32名(うち外国人留学生 27名)

【小笠原学長式辞】

本 日、奈良先端科学技術大学院大学の博士前期課程に入学された13名の皆さん、また、博士後期課程に入学された19名の皆さん、入学おめでとうございます。 本学の200名の教員、150名の事務職員を代表して歓迎致します。今日の新入生の中には、世界10ヶ国27名の海外からの学生諸君が含まれています。そ のため、今日の挨拶は英語で行うことにしました。
まず、母国を離れて、この日本で学ぶことを決意された皆さんに敬意を表したいと思います。1週間 前に、15名の留学生の方に学位を授与しました。一方で、今日、スイスからの初めての入学者の方を含め27名の方を海外から迎えたことにより、本学に在籍 する留学生は、世界39ヶ国・地域からの144名となり、全学生数1,030名の14%となりました。加えて、16名の方が研究生として在籍されていま す。

今、世界はインターネットでリアルタイムに繋がれ、アジアやアフリカ諸国の経済的発展は目覚ましいものがあり、現在の科学技術に従事 するものは、世界を視野に入れた活動が求められています。今まで我国の大学は、ともすれば視野が国内に限られていましたが、現在、世界の方々を受け入れ、 日本の科学技術と社会を知ってもらい、また、日本人学生も世界における科学技術への要請と世界各国の社会を知ることができるように、大学のグローバル化を 進めることが求められています。今日、本学に入学した留学生の皆さんは、日本人学生のみならず、様々な国からの学生さんと、勉学の上ばかりでなく、日常的 にも交流を進めていただきたいと思います。大学としても、そうした交流の機会を積極的に提供していきます。

さて、奈良先端大は新構想の独立大学院大学として、1991年10月に設立されました。本学の設立にあたって取りまとめられた新大学の構想には、本学の研究と教育の使命について、以下のように書かれています。
「先 端科学技術分野は、広範な学際的広がりを持つこと、基礎研究における全く新たな展開が見られること、しかもその展開が極めて急速であること、基礎研究にお ける新しい知見が、極めて短期間のうちに、それをもとにした技術開発につながっており、また技術の進歩が、これらの基礎研究の基盤としてその進展を可能に しているなど、いわゆる科学と技術との一体化が、他の分野以上に顕著であること、等の共通の特色を持っている。したがって、これらの分野においては、従来 の学問分野の枠を越えて、それぞれの分野に焦点を当てた学際的な基礎研究の推進が極めて重要である。」

教育に関しては、以下のように書かれています。
「先 端科学技術分野の急速な進展に伴い、これらの分野の研究開発を担う研究者、技術者の組織的養成が、学術研究面でも産業経済面でも大きな課題となっている。 特に、これらの分野においては、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度の基礎力を持つ多様な人材を養成することが 必要である。」

すなわち、本学は、急速に発展している情報・バイオ・物質という先端科学技術分野において、工学・理学・農学・医学等の従 来の学問分野の枠を越えた学際的な、そして科学と技術が一体化した研究活動を展開し、それを背景に、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓 し続けることのできる人材を育成するために設立されたのです。

こうした本学の教育研究のミッションとの関係で、科学技術の展開は、今、非 常に面白い時代になっています。20年前、情報の分野ではインターネットが社会に浸透し始めた時代でしたが、今やコンピュータの性能は桁違いに向上し、全 世界がインターネットでリアルタイムに繋がれ、 科学技術データも含んだビッグデータを扱う時代を迎えています。バイオの分野では個々の遺伝子の構造と機能を研究する時代から、配列解析技術の革新によ り、我々個人のゲノムを含め、様々な生物のゲノム配列を簡単に決められる時代になり、自然界の生物の多様性の根源を研究できるようになりました。物質の分 野でも、分析・計測技術の高度化により、新しい物質世界の姿が見えるようになり、20年前には考えられなかった新しい物質の創成が可能になっています。こ うした科学技術の発展は、情報とバイオの融合領域である情報生命科学の誕生に代表されるように、情報・バイオ・物質をまたぐような新しい学際的科学技術分 野を生みだしつつあります。また、基礎科学技術研究とその社会的な展開の間の距離も20年前よりずっと近くなっています。皆さんが本学を修了し、研究者、 技術者などとして社会を担う10年、20年先には、科学技術がどのように発展し、それが社会にどのようなインパクトを与えているか、現在の我々の想像を超 えるものになっていると私は思います。皆さんには、急速な科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度の基礎力と幅広い 視野を本学で養っていただきたいと思います。

昨年、ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥京都大学教授(本学栄誉教授)の研究はこの奈良先端大で始まりました。その事実を伝えるためのモニュメントが明日、バイオサイエンス研究棟でオープンされます。是非、ご覧ください。

山中教授の研究は、体細胞にいくつかの遺伝子を導入して初期化し、多能性の幹細胞をつくり、それをどんな臓器にもなる万能細胞として再生医療に使うというものです。

こうしたアイデアが生まれた背景を皆さんご存じでしょうか。

そ の背景には、様々な研究の蓄積があったことが指摘されています。すなわち、ヒトの様々な組織器官で発現している遺伝子をデータベース化するプロジェクト、 そうしたデータベースから生物学的な知識を抽出するバイオインフォマティクス技術、細胞に高効率で遺伝子を外部から導入するための技術開発等です。山中先 生は、こうした当時の最先端の研究動向を見極め、それを頭の中で組み合わせて、独創的な研究戦略を構想したのです。そして、研究を開始するにあたり、各分 野に精通している研究者の協力を求めました。

このことは、皆さんに、自分の専門分野に閉じこもることなく、常に様々な研究の動向に目を配 り、それを創造的に活用する能力を身につけることの重要性を伝えるものです。これから皆さんは色々な研究室に所属して、学修と研究活動を進めていくわけで すが、他研究室の考え方や手法を取り込むことにより面白い展開が可能になるかもしれません。本学は、研究室・研究科の壁が低いことが大きな特徴です。皆さ んも様々な人との交流を是非進めてください。

また、先週発表された、気候変動に関する政府間パネル、IPCC、の報告書では、今世紀末の 地球の平均気温は、最近20年間に比べ最大で4.8度上がり、海の水位は最大81センチ上昇する可能性が高いという、従来よりも厳しい予測が盛り込まれま した。こうした気候変動は人間活動によってもたらされた可能性が極めて高いとも指摘されているそうです。地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化の問題 と人類の活動を両立させ、持続的な社会を作って行くための取り組みの重要性がますます鮮明になっています。世界の、さらには、未来の問題を解決するための 新しい科学技術の展開が必要になっています。画一的な豊かさ・便利さを追い求める社会から多様な豊かさを深める持続可能な社会への転換とも言われています が、モデルのない世界で自ら考え、グローバル社会を舞台に新たな科学技術の創出やその活用を行うことができる人材が今求められています。

先ほど述べたように、日本人学生の諸君は留学生諸君と、また留学生諸君は日本人学生と交流を深め、お互いの理解を深めてください。そうした経験を生かして、皆さんには、将来日本やアジアや世界を支える科学技術者として活躍して欲しいと思っています。

皆さんの意義ある学生生活とその未来に期待して、式辞とします。
入学おめでとうございます。我々教職員は皆さんを心から歓迎します。

奈良先端科学技術大学院大学
学長 小笠原 直毅

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