平成26年度 学位記授与式を挙行(2014/12/22)

イベント報告 2014/12/25

12月22日(月)、事務局棟2階大会議室において学位記授与式を挙行しました。

小笠原直毅学長が、出席した5名の修了生一人ひとりに学位記を手渡し、門出を祝して、式辞を述べました。

式終了後には記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合いました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。


【博士後期課程修了者】
情報科学研究科    2名
バイオサイエンス研究科  4名
計  6名

総計 6名


【学長式辞】

本日、博士の学位を授与された皆さん、おめでとうございます。これで、自立した研究者として免許皆伝です。

皆 さんのこれからの研究活動を考える上で、現在の科学技術研究について、最近、文部科学省の委員会で議論されている事を紹介したいと思います。それは、私が 思っていることが端的に表現されているものであり、また、奈良先端大での研究そして人材育成のあり方を指し示すものです。

まず、現在の科学技術の変化という問題です。

「現 在の研究の最前線では、測定、分析、計算技術の進展等により自然現象や社会現象に関する認識の範囲が急速に拡大しており、情報量の増加、計算科学の飛 躍的進歩による情報処理速度の加速、交通・通信ネットワークの進展による情報の伝播・共有の高速化などを背景に、学術研究自体が急速に拡大し、その有 り様が変化している。

生命科学、材料科学など広範な領域で新たな学際的・分野融合的領域が展開するなど、知のフロンティアが急速に拡大するとともに、新たな原理の探求や領域の創出に向けた熾烈な国際競争が行われている」。

すなわち、ICT技術の発展を基盤に、バイオ・物質等の分野で、知のフロンティアが急速に拡大しているということが指摘されています。実際、ビッグデータバイオロジーという言葉に象徴されるようなパラダイムシフトも、バイオの分野で起こりつつあります。

そして、基礎研究とその成果の社会的展開の関係にも変化が起こっていることが指摘されています。

「知のフロンティアの拡大により、研究の最前線では質の高い知が次々に生み出されており、何が新たな価値に繋がるのかの予測が困難となっている。

迅 速な価値創出が求められる今日、基礎研究、応用研究、製品開発と直線的に進展する古典的なリニアモデルのイノベーションは機能しにくくなっている。 イノベーション創出に向けた研究開発も、基礎研究、応用研究、製品開発が相互に作用しながらスパイラル的に進展していくなど、イノベーション 自体の構造が変化している」。

こうした変化の中で、今、科学技術研究者に求められていることはなんでしょうか。報告書にある、以下の文章を是非皆さんに紹介したいと思います。

「知 のフロンティアが急速に拡大している現代において、学術研究が『国力の源』としての役割を果たすために基本となることは、何よりも研究者の知を基盤に して独創的な探究力により新たな知の開拓に挑戦することであり(挑戦性)、研究者は常に自らの研究課題の意義を自覚し、明確に説明しなければならな い。

新たな知の開拓のためには、学術研究の多様性を重視し、伝統的に体系化された学問分野の専門知識を前提としつつも、細分化された知を俯瞰し総合的な観点から捉えることが重要である(総合性)。

ま た、異分野の研究者や国内外の様々な関係者との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出すことも求められる(融合性)。その際、学術研究の融合性は、 それ自体を目的化するものではなく、研究者の内発的な独創性を基盤としつつ、他分野との創造的な交流や連携からおのずと生み出されることに留意が必 要である。

さらに、自然科学のみならず、人文学・ 社会科学を含め分野を問わず、世界の学術コミュニティーにおける議論や検証を通じて研究を相対化することにより、世界に通用する卓越性を獲得したり新しい研究枠組みを提唱したりして、世界に貢献する必要がある(国際性)。

し たがって、研究者は、自己の専門分野の研究を突き詰めた上で、分野、組織などの違い、さらには国境を越えて、異なる価値や文化と切磋琢磨しつつ対話 と協働を重ね、社会の変化に柔軟に対応しながら、新しい卓越した知やイノベーションを生み出すために不断の挑戦をしていくことが求められる。このよ うに、現代の学術研究には、いわば「挑戦性、総合性、融合性、国際性」が特に 強く要請されている」。

皆さんには、奈良先端大の修了生として、こうした姿勢で新しい科学技術の創造と活用により、新たな社会、世界の創造に主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。

さらに、基礎的な研究の成果とその社会的展開は、新しい社会の形成への科学技術の貢献のための両輪です。

その意味で、基礎研究を指向する方もその社会展開という視点もきちんと持ち、また、様々な課題解決のための技術開発は、その活用、普及を指向する方も基礎科学技術の新たな展開に注目し続けていただきたいと思います。

私は、皆さんの本学での学修と学位論文研究の経験が、皆さんの今後のクリエイティブな生活を保証していると確信しています。

さ らに、奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、 変化して行く科学技術・社会の中で、皆さんが持続的にクリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築していくことも 奈良先端大の重要な役割であると教職員は考えています。

皆さん、おめでとうございます。今後の活躍を期待するとともに、今後も皆さんの活躍を支援していきたいと思います。

平成26年12月22日 
奈良先端科学技術大学院大学長 小笠原直毅

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