〔プレスリリース〕力と分子の滑りを利用した神経ネットワーク形成の新しい仕組みを解明 ~ヒトの脳疾患の分子病態も明らかに~

研究成果 2018/02/27

 バイオサイエンス研究科の稲垣直之教授、箱嶋敏雄教授、独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センターの金村米博部長、東京大学大学院 工学系研究科の渡邉力也講師らのグループは、神経細胞と細胞外の異なる環境との間に生じる力と、それを弱める分子の滑りを巧妙に利用して進行方向などを調節するという神経ネットワーク形成の新しい仕組みを解明しました。また、この仕組みが働かなくなると、神経ネットワークの形成障害や精神発達遅滞、失語症、歩行障害等の症状を伴う「L1症候群」という病気を引き起こすことも突き止めました。

 脳内の神経細胞は、軸索と呼ばれる長い突起を適切な場所に伸ばして、適切な神経細胞と結合することで脳の活動に必要な情報ネットワークを作ります。その方法の一つとして、軸索の先端が伸びて、道路に相当する細胞外基質上を走り、そこにある化学標識に直接触れて探索しながら正しい進行方向を決定することが知られています。しかし、軸索の先端がどのようにして道路上の化学標識を検知して進行方向を決めるのか、その仕組みはよくわかっていませんでした。稲垣教授らは、「L1-CAM」という軸索先端を動かすタイヤの役割の分子が路面上の化学標識をとらえて推進力を生み出したり、路面とスリップを起こして推進力を弱めたりして進行方向や速度を決める仕組みを解明しました。また、L1症候群ではL1-CAMに変異が起こるが、変異したL1-CAMではこの仕組みに障害が生じて、軸索が正しい方向に伸びることができないことも証明しました。

 本研究の成果により神経ネットワーク形成やヒトの脳疾患についての理解が深まるとともに、再生医療への応用などが期待されます。この研究成果は平成30年2月26日(現地時間)付けで米国科学アカデミー紀要のオンライン版に掲載されました。

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