令和元年度秋学期入学式を挙行(2019/10/2)

イベント報告 2019/10/04

 10月2日(水)、本学研修ホールにおいて令和元年度秋学期入学式を挙行しました。

 本学では、国内外を問わず、また出身大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力を持った学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の研究分野に対する強い興味と意欲を持った者の入学を積極的に進めており、このたび、80名の新入生を本学に迎えました。

入学者数

(博士前期課程)
  先端科学技術研究科 25名(うち留学生19名)

(博士後期課程)
  先端科学技術研究科 55名(うち留学生43名)

総計 80名(うち外国人留学生62名)

【学長式辞】

 本日、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科の博士前期課程に入学された25名の皆さん、また、博士後期課程に入学あるいは進学された55名の皆さん、おめでとうございます。本学の教職員370名を代表して歓迎致します。

 皆さんの中には、世界14ヵ国・地域からの62名の留学生の方々がいらっしゃいます。母国を離れて、この古都・奈良の奈良先端大で学ぶことを決意された皆さんを、心から歓迎したいと思います。皆さんが入学されたことにより、本学に在籍する留学生は、世界29ヵ国・地域からの237名となりました。

 これは全学生数1,040名の約23%であり、本学が標榜しているグローバルキャンパスの実現が近づいていることを実感します。

 本学は、昨日、創立28周年を迎えましたが、昨年には、従来の情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科を統合した先端科学技術研究科を設置するという組織改革を行いました。今日入学された皆さんは、先端科学技術研究科の2期生として奈良先端大の新しい歴史を創っていくことになります。

 先端科学技術研究科設置の背景として、まず、現在、科学技術はICTの進化等によって大変革の時代を迎えているということをお話ししておきたいと思います。科学技術の変革は産業や社会に大きな変化をもたらします。

 産業面でのこの変革を表現した最も代表的な標語はドイツから提唱されたIndustry 4.0です。

 ①蒸気機関の発明に端を発した移動手段・作業の機械化による19世紀の第1次産業革命、②電力を活用した大量生産による20世紀初頭の第2次産業革命、③コンピュータ技術と電子システムがもたらす自動化による20世紀後半の第3次産業革命に続いて、④インターネットとセンシング技術の融合がもたらす機械・システムの自律化による第4次産業革命の時代を迎えているというわけです。

 また、我が国では、Industry 4.0に対応する形で、社会の形態について、①狩猟社会、②農耕社会、③工業社会、④情報社会の次に来る社会として、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した⑤超スマート社会としてのSociety 5.0が展望されています。

 現在起こっている産業や社会の変化の特徴は、その変化が、かつて経験したことがないほど速いスピードで、世界規模で起こるということです。例えば、新しいビジネスモデルを掲げて登場したベンチャー企業が瞬く間に世界的な大企業になり、国家レベルの経済規模を有する巨大企業になっている現実を目のあたりにすると、このことを実感できると思います。

 科学技術の変革は多くの場合、異分野の融合によって起こっていると言えます。本学は、「先端科学技術分野における研究を推進するとともに、優れた研究成果に基づく高度な教育により人材を育成し、もって科学技術の進歩と社会の発展に貢献する」ことを教育研究活動の基本的な目標として掲げていますが、研究の対象となる先端科学技術は本学設立時と現在では、研究の方法論を含めて大きく変わってきています。

 情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科が設立された当初は、それぞれ独立した学術分野と考えられ、バイオインフォマティックスの萌芽は見られたものの、研究科の枠を越えた共同研究は少なかったと思います。

 それが現在では、ゲノム情報や生体分子の時空間分布が大量の情報として蓄積されるようになり、ビッグデータバイオロジーと呼ばれる情報科学とバイオサイエンスの融合領域が生まれています。

 また、物質科学の分野においても、マテリアルズインフォマティックスと呼ばれる情報科学との新しい融合領域の存在感が高まっています。

 本学は、キャンパスと組織がコンパクトで、研究室間の壁が低いことが大きな特徴です。このような特徴を活かして、現在では、複数の領域・研究室にまたがった共同研究が活発に行われています。

 このような現在の状況は想定されていなかったわけではなく、実は、本学の創設に先だって、平成3年8月に取りまとめられた『奈良先端科学技術大学院大学の構想』において述べられていることでもあります。

 例えば、研究に関しては、「先端科学技術分野は、広範な学際的広がりを持ち、基礎研究における新しい展開が見られ、しかもその展開が極めて急速である」「これらの分野においては、従来の学問分野の枠を越えて、学際的な基礎研究の推進が極めて重要である」と述べられています。

 また、教育に関しても、「これらの分野においては、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度の基礎力を持つ多様な人材を養成することが必要である」と言っています。

 先端科学技術研究科の設置は、このような本学創設の理念を具現化するものです。先端科学技術研究科には7つの教育プログラムを設定しており、そのうち3つは従来の3研究科の教育プログラムに対応していますが、4つは新たに設定した融合領域の教育プログラムです。

 皆さんはこれから、どの研究室に所属し、どの教育プログラムを履修するかを決めることになります。今までの経験や知識にとらわれることなく、新しい教育プログラムでの授業カリキュラム等を活用して、常に周辺分野の動向に目を配り、幅広い視野を養っていただきたいと思います。是非、『足を大きく前に一歩踏み出す』つもりで、本学で新しい可能性に挑戦して下さい。

 本学の教職員は、皆さんが本学で新しいことに挑戦できるよう、努力を惜しまないつもりです。

 皆さんのこれからの有意義な学生生活とそれを通した将来の大いなる飛躍を期待して、式辞とします。

 本日は、入学おめでとうございます。

令和元年10月2日
奈良先端科学技術大学院大学長
横矢直和

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