令和4年度学位記授与式を挙行(2022/12/22)

イベント報告 2023/01/10

 12月22日(木曜日)、学際融合領域研究棟2号館1階研修ホールにおいて学位記授与式を挙行しました。
 授与式では、塩﨑一裕学長から学位記が手渡され、門出を祝して式辞が述べられました。
 また、当日は、式典の模様をインターネットによりリアルタイムで配信したほか、式典終了後の会場を記念撮影のために開放し、修了生たちは和やかな雰囲気のもと歓談し、喜びを分かち合いました。
 
※ 今回の学位授与者の内訳は、以下のとおりです。

【博士後期課程修了者】

 情報科学研究科        1名(うち留学生1名)
 

【論文提出による博士学位取得者】

 先端科学技術研究科      2名(うち留学生0名)

              計 3名(うち留学生1名)

【学長式辞】

 本日、博士の学位を授与された3名の皆さん、誠におめでとうございます。
 日々の研究を積み重ね、本日の博士号取得に至ったことは、まさに努力の賜物であり、賞賛に値します。自分自身を誇りに思い、今日という日の喜びを心に刻んでいただきたいと思います。
 そして、皆さんのご家族、ご友人の方々、加えて、皆さんを熱心に指導してこられた先生方にも心よりお祝いを申し上げます。皆さんの奈良先端大での学びを、様々な形で支えてきた全ての方々にとって、今日の日は大きな喜びに違いありません。

 さて、今、改めて奈良先端大での学びを振り返ってみて、皆さんはどのように感じるでしょうか。大学院で自ら研究課題に長期間取り組み、博士論文をまとめるというトレーニングは、学部までのそれとは全く違ったものです。Appleの創業者の一人であるスティーブ・ジョブズは、かつて、このような事を言ったことがあるそうです。

 「何かを徹底的に理解し、かみ砕くには情熱を傾ける必要がある。すぐ鵜呑みにするのとはわけが違うんだ。ほとんどの人がこういうことに時間をかけていない」

 皆さんは、それぞれが自らの研究テーマと徹底的に向き合い、考え抜き、異なったアプローチを試み、追求するということを学びました。ジョブズの言う「ほとんどの人がやっていないこと」ができるという証が博士号と言えるでしょう。そして、そのスキルは今後、様々な場面で問題解決能力として役に立つはずです。

 加えて、研究というものが、いかに思い通りに進まないものかを、身をもって経験したことでしょう。間違いないはずと思う仮説を立て、実験で検証したところ、その仮説が否定されてしまう。そこで、また別の仮説を立てて検証を繰り返すというようなことが多々あったのではないでしょうか。研究室には、失望とフラストレーションが詰まっているという人もいます。
 しかし、科学研究の面白さ、そして素晴らしさは、失望と希望のサイクルを繰り返しながら人類が叡智の地平を広げていくところにあります。ようやく見つけたと思った希望が失望に変わり、真実と思われていたことが誤りであったと分かる。哲学者のカール・ポパーが指摘したように科学者は飽くなき検証を続けることで、理論を発展させていきます。

 今では信じられないことですが、西洋では長らく、男性の肋骨は女性より1本少ないとされていました。旧約聖書に、アダムの肋骨を一本取ってイブが創造されたと書かれているためです。16世紀になって、現代人体解剖の創始者であるベサリウスがようやくこの誤りを正しました。また、コペルニクスやケプラー、ガリレオが登場するまで、地球を宇宙の中心とする天動説が信じられていたことは、皆さんもよくご存知かと思います。DNAが遺伝物質であると認められたのは、なんと20世紀も半ばになってからです。G、A、T、Cの4種類のヌクレオチドしか含まれていないDNAは、複雑な遺伝情報の媒体としては単純すぎるとして、むしろタンパク質こそが遺伝物質であるという説が唱えられていたのです。

 このように、長い時間軸で見てみると、私たちの知識は動的なもの、ダイナミックなものです。科学的事実とされていたものが、後に検証によって否定され、新たな「事実」や新たな「理論」に置き換わる。かつてノーベル賞を受賞した研究が、のちに否定されるということも起きています。科学の歴史は、非常に興味深い、失敗の歴史でもあり、失敗を繰り返すことで人類は新たな知見を獲得していきます。
 失望の中に希望を見つける。失敗を新しい発見のチャンスとする。それが科学研究の様式です。科学者の一人としては、サッカーの日本代表チームが、PKを失敗して敗れたことを、ぜひ新たな成長のきっかけとして欲しいと思っています。
 そして皆さんは、科学研究の進め方を学び、粘り強く自らのテーマに取り組んで博士号を取得したことで、失敗の大切さを理解し、さらにGRITとも呼ばれる「やり遂げる力」を身につけたはずです。加えて、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大という未曾有の状況も、皆さんはくぐり抜けてきました。未知の感染症が瞬く間に広がり、不安を感じながらも、それぞれが希望を探しながら努力を積み重ね、今日の日を迎えた経験は、これからの人生においても一つの自信となるはずです。

 さて先週、私は渡米し、カリフォルニア大学デービス校を訪ねてきました。私が奈良先端大に赴任する前に、微生物学の教授として勤めていた大学です。コロナ禍が2019年末に始まって以降の約3年間、オンラインでしかコミュニケーションできなかった元同僚たちと再会を喜び合い、これまで共に成し遂げたことを振り返りながら、これからの教育研究のコラボレーションの可能性を議論し、また、協力してくれる新しい仲間に出会うこともできました。

 ウイズコロナの時代が始まっています。未知のウイルスが私たちをオンラインに閉じ込めていた日々は終わりつつあります。
 そこで皆さんに一つ提案があります。旅をしましょう。新しい風景にひたり、新しい仲間に出会い、新しい体験をするために。長い時間と努力を傾けて、博士号を取得するという経験を経た皆さんが出かける旅は、新しい可能性、新しい希望、そして新しい自分を見つける一つのきっかけになるのではないかと思います。

 私の式辞は以上となりますが、最後に改めて皆さんの博士号取得に心からお祝いを申し上げます。

令和4年12月22日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 塩﨑 一裕                          

                                                       

学位記を受け取る修了生
学位記を受け取る修了生
式辞を述べる塩﨑学長
式辞を述べる塩﨑学長

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