令和4年度学位記授与式を挙行(2023/3/24)

イベント報告 2023/03/28

 3月24日(金曜日)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う365名の修了者を送り出しました。
 今回の授与式は、課程ごとに開催する2部制で行われました。
 授与式では、塩﨑学長から博士前期課程の修了生の代表者及び博士後期課程全員に学位記が手渡され、式辞が述べられた後、来賓から祝辞が述べられました。続いて本学支援財団が優秀な学生を表彰する制度であるNAIST最優秀学生賞の受賞者14名に対して、同財団理事長代理として増田専務理事から賞状及び副賞が贈られました。最後には学生による音楽演奏が行われ、修了生の門出を祝しました。
 式典終了後、会場を開放し、多くの修了生が指導教員や在校生も交えて記念撮影を行っていました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】

先端科学技術研究科    303名(うち留学生20名) 
計            303名(うち留学生20名)

【博士後期課程修了者】

情報科学研究科       1名〈うち留学生1名〉
バイオサイエンス研究科   1名〈うち留学生1名〉
先端科学技術研究科     58名(うち留学生18名)

【論文提出による博士学位取得者】

先端科学技術研究科     2名(うち留学生0名)
計             62名(うち留学生20名)

総計           365名(うち留学生40名)

【学長式辞】

 初めに、本日、学位を授与された皆さんに心からのお祝いを申し上げます。オンラインではなく、このミレニアムホールに皆さんとこうして集い、学位の取得と新たな門出を共に喜び合えることを大変うれしく思います。また、ご祝辞を賜ります、本学支援財団理事長・小林 哲也様、本学同窓会会長の清川 清先生に深く感謝いたします。

 大学院の学位を取得することは容易なことではありません。しかも、コロナ禍の中、多くの困難があったと思いますが、皆さんは日々、研究に取り組み、今日の学位取得という大きな目標に到達されました。ご自身が成し遂げたことに是非、誇りを持っていただきたいと思います。

 そして、皆さんのご家族、友人の方々、また、皆さんをこれまで熱意をもって指導してくださった教員の方々にもお祝いを申し上げます。加えて、本学が新型コロナウイルス感染症の発生を最小限にとどめながら、活発な教育研究活動を継続できたのは、今、このステージ上にいらっしゃる研究科長や領域長をはじめとする多くの教員の方々、また、昼夜・週末を問わず様々な形でサポートしてくださった職員の方々を含む奈良先端大コミュニティー全体の努力の賜物です。本日、ここにいらっしゃらない方々も含め、皆さんの奈良先端大での学びを、さまざまな形で支えてくださった全ての方々に、大きな拍手を送りましょう。

 さて、皆さんは、小学校から長年にわたって学びを積み重ね、本日、大学院を修了します。学校教育法によると大学院は、「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする」ものとされています。つまり皆さんは大学院で最も高度で深い学識、知識を学んだわけです。

 一方で、新型コロナウイルスが発生し、拡大を始めてからのこの3年間、さまざまな説や理論がこの新しい感染症やその対策について唱えられては、また別のものに書き換えられていく様を私たちは目撃してきました。その書き換えの速さは別としても、「正解」が更新されることは、科学の世界では決して珍しいことではありません。長い間信じられていた天動説が、コペルニクスやケプラー、ガリレオの登場によって地動説にとって代わられたことは、科学の歴史の中で最も有名な例の一つでしょう。

 つまり、皆さんが奈良先端大で学んだ高度で専門的な知識も、いつか書き換えられる可能性があります。私たちが持っている科学的知識は、必ずしも永遠の真理というわけでなく、これまでに得られているデータや情報、観察などから今のところ正しいと考えるのが合理的な、暫定的なものであるというのが、科学の「暫定性」です。実際、それまで「事実」とされていたことや「理論」が新たな事実や理論に置き換えられることで、科学は発展してきたと見ることができるのです。

 逆に言うと、既存の知識や理論を学び、受け入れる、英語で言う"Learn"だけでは、科学や技術が発展することはありません。自らが学んだ知識を批判的に見つめ、いったん手放すこと、すなわち"Unlearn"というプロセスによって、これまでの思い込みや常識を打ち破るブレークスルーを生み出す必要があります。この"Unlearn"という言葉は、日本語では「学習棄却」あるいは「学びほぐし」などと訳されていますが、常識にとらわれていてはいけないという意味では、かつてSteve Jobsがスタンフォード大学の卒業式のスピーチで述べた"Stay foolish"という有名な言葉に通じるところもあるように思います。皆さんが大学院という最も高度な学びの課程を終えた今こそ、あえて"Unlearn"を意識し、社会のいたるところでブレークスルーを生み出してくれることを大いに期待しています。

 そしてもちろん皆さん自身も、これから社会へと旅立ち、自分の可能性をさらに拡げ、活躍することを心に誓いながら、新しいスタートに胸を躍らせていることと思います。一方で、どのような進路を選ぼうとも、その道のりは平坦ではなく、物事が自分の思い通りにいかないこともあるでしょう。そのような時に私自身が思い出す言葉がありますので、皆さんと共有したいと思います。

 「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」

 これは、ノーベル文学賞の候補になったこともある作家、井上 靖の言葉です。苦しいとき、不満がある時こそ希望を語り、自らが望む未来に向かってやれることを一歩ずつ積み重ねていっていただきたいと思います。コロナ禍という未曾有の状況の中、不安を感じながらもそれぞれが希望を探しながら努力を積み重ね、今日の日を迎えた皆さんなら、それができるはずですし、この井上靖の言葉に共感してくださるのではないかと思います。

 最後に改めて、修了生の皆さんにお祝いを申し上げるとともに、卒業後も皆さんは奈良先端大コミュニティーの一員であることをお伝えしたいと思います。本学の同窓会は修了生による世界的なネットワークの場となっていますので、是非、積極的に活用してください。本学が誇る、一万人を超える同窓生の一員となった皆さんの活躍を期待し、毎年秋に開催しているホームカミングデイ等の場で皆さんと再会できる日を楽しみにしています。

2023年3月24日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 塩﨑 一裕

【支援財団理事長祝辞】

 (本日はおめでとうございます。理事長の小林は余儀ない所用のため、出席が叶いませんでした。お祝いのメッセージを預かってきておりますので、事務局長の増田から披露させていただきます。)

 奈良先端科学技術大学院大学の令和4年度学位記授与式にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。

 本日、学位記を受けられました皆様、コロナという未知の試練に翻弄されながらも、博士課程を見事、修了されましたこと誠におめでとうございます。また、ご家族の皆様や塩﨑学長をはじめご指導に当たられた教職員の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。

 中国儒教の経典のひとつ「大学(だいがく)」に「苟(まこと)に日に新たに、日々に新たに、又日に新たなり」という言葉があります。毎日新たな気持ちで新たな学びを続けていくことで、自分も成長し周りにもいい影響を及ぼすことが大切だ、と言う意味です。日本は、過去の成功体験から抜け出せず、変化を恐れ、従来のやり方に捉われ続けたため、革新的な製品やサービスを生み出せず、長らく停滞の時を過ごしてきました。昨日と同じ今日を繰り返していたのでは成長は期待できません。常に問題意識を持ち、現状の改善を図り、新しいことに挑戦する姿勢が求められます。

 現代社会は、複雑かつ多様で困難な問題があふれておりますが、皆様がこの大学で蓄積してこられた最先端の知識や創造力、研究力は、世界でも十分に通用するものと思います。社会に出られましても「日々に新たに」を忘れず、社会の発展や人々の生活向上のために精進され、素晴らしい未来を切り開かれることを願っています。

 最後になりましたが、本日ご出席の皆様のご健康、ご多幸と奈良先端科学技術大学院大学のますますのご発展をお祈りいたしまして、簡単ではございますがお祝いの言葉といたします。

令和5年3月24日
公益財団法人 奈良先端科学技術大学院大学支援財団
理事長 小林 哲也

(本日は誠におめでとうございました。)

【本学同窓会会長祝辞】

 奈良先端科学技術大学院大学を修了される皆さん、本日は大変おめでとうございます。ご両親、ご家族の皆様ならびに関係各位の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。

 奈良先端科学技術大学院大学同窓会では、修了生や在学生を支援する様々な事業を展開しています。皆さんが社会に出た後に、本学で学んだことに誇りを感じたり、本学との繋がりを実感したりする機会が多々あることと思います。また、そうした有り難みは年を経るごとに強まっていくことでしょう。ぜひ本学同窓会に御入会いただき、その繋がりを最大限に活用していただければと思います。

 さて、これから社会に出ていく皆さんは、今どんな気持ちを抱いているでしょうか。長い学生生活が終わってようやく経済的に自立できると安心しているでしょうか。仕事をうまくこなせるだろうか、この先社会情勢はどうなるのだろうかと不安になっているでしょうか。私はぜひ皆さんに、「よしやってやるぞ」という強い気持ちを持って、これまで以上に様々なことに前向きにチャレンジしていって欲しいと思います。

 これまでに、奈良先端大の修了生はのべ11,000名を数えます。多くの先輩方が国内外の大学、研究機関、大企業などで活躍しており、奈良先端大のブランドを不動のものにしています。昨年、日本経済新聞などが実施した大手企業による大学イメージ調査で,奈良先端大は行動力で1位,独創性で2位と評価されました。行動力を構成する項目のうち、「チャレンジ精神」は1位、「主体性」は3位だったそうです。皆さんの先輩方は、日本で一番チャレンジ精神がある学生だと評価されているのです。

 そして、そのような資質は奈良先端大の遺伝子として、皆さんにも受け継がれています。

 振り返ってみましょう。皆さんは、慣れ親しんだ大学や高専などを飛び出して、新しいことにチャレンジしようという思いで奈良先端大の門をくぐりました。奈良先端大には皆さんの熱い想いを受け止めて、様々なことにチャレンジできる環境があったのではないでしょうか。世界で活躍する先生方と熱い志をもった学生に囲まれて、かけがえのない日々を過ごされたことと思います。

 研究はそもそもうまく行くかどうか分からないものです。やってみないと分からない、頑張ったのに結果が出ない、皆さんの研究活動はそのようなことの連続だったのではないでしょうか。今皆さんは,チャレンジすることの尊さ、成功する喜び、そして成功する可能性を高める方法論を学んだのです。

 こうした資質や心構えは、現代社会で最も重要であると思います。いつ来るか分からないパンデミック、不安定な国際情勢、地球温暖化、人口爆発、国内的には急激な少子高齢化、などなど私たちの社会には未曾有の難題が山積しています。これまでの常識が通用せず、誰にも正解が分からないのです。

 皆さんには、このような激動の時代に積極的に立ち向かい、社会に貢献してほしいと思います。当事者意識を持ち、変化を恐れず、平和で豊かな世界を作るために自分に何ができるのかを真剣に考え、提案し、実行していってください。そして、それぞれの立場で奈良先端大で学んだことを発揮し、新しい時代を切り拓き、力強く引っ張っていってください。皆さんひとりひとりの活躍が、人類の未来を変えていきます。小さな活躍ではなく、大活躍されることを祈念しています。

 最後になりましたが、改めまして、本日は修了おめでとうございます。

令和5年3月24日
奈良先端科学技術大学院大学同窓会
会長 清川 清

式辞を述べる塩﨑学長
式辞を述べる塩﨑学長
学位記を受け取る修了生
学位記を受け取る修了生
NAIST最優秀学生賞の授与
NAIST最優秀学生賞の授与
課外活動団体おいさーによる演奏の様子
課外活動団体おいさーによる演奏の様子

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