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2010年奈良先端科学技術大学院大学博士後期課程修了。博士(バイオサイエンス)。理化学研究所横浜研究所研究員、フランス国立科学研究センター(フランス) 研究員、ハンブルク大学(ドイツ) 研究員を経て、2017年7月より現職。専門は植物細胞生物学と分子遺伝学。現在は紡錘体形成チェックポイントとゲノム倍加について研究している。

研究者への道のり

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幼稚園の頃から「研究者」なのか「教授」なのか「先生」なのかの区別はついていないなりにも「大きくなったら実験したりする人になりたい」と思っていました。両親が理科系の教員だったこともあり、家にはさまざまな生き物がいて、自然にずっと触れて育ってきました。父親はとくに虫が好きでしたね。植物はどちらかというと虫のエサという感じでした(笑)。この頃から新しいことを発見する人になりたいという思いがずっとありました。

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大学に進学したのはクローン羊をはじめとした遺伝子工学が全盛期の頃でした。大学3年生でラボを選ぶとき、牛のクローンをテーマにした研究室、虫の分類などをしている研究室、植物系の研究室があり、それぞれを訪問したのですが、一番よく覚えているのは、ビンのなかにいっぱいになった植物です。クローンを作るために特殊な条件が必要な動物とは異なり、植物の場合は切っただけで同じものが生えてくる。植物はもともとクローンがつくりやすいのです。ビンのなかに同じ個体が切っただけでいっぱいに増えているのがとてもおもしろいと思って、それが植物に最初に興味をもったきっかけでした。そして植物系の研究室に所属したあと、何の迷いもなく修士課程に進学し、ドクターに進むなら設備の整っているところにしてはどうかと指導教員に助言されて本学の博士後期課程に入学しました。

本学のバイオサイエンス領域は、博士後期課程に入学すると、旅費や滞在費を大学が支援する海外英語研修・海外ラボインターンシップに参加することができます。私の世代はその第一号で、米国カリフォルニア大学デービス校生物科学部で研究実験に携わったり、教員や学生との議論を経験しました。このとき、海外で勉強するのはすごくおもしろいと思いました。私の人生を変えたといえますね。一番大きかったのは「自分の拙い英語でもなんとかやれる」と思えたことです。けっして英語が上手なわけではないのですが、なんとか意思疎通ができると思えました。その思いを持ったまま、博士後期課程修了後は、理化学研究所の環境資源科学研究センター細胞機能研究チームの杉本慶子先生のラボに所属しました。

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ラボのメンバーの半数以上が海外の方で、使用言語は英語でした。在籍途中にドイツの大学でポスドクを募集しているという話があり、すぐに行きたいと思い、ちょうど子どもが産まれた時期だったのですが単身でドイツに移りました。妻は仕事を持っていたので日本に残り、子どもとも3歳半まで会えませんでした。妻は近くに親族もいなくて仕事も育児も大変だったと思います。ドイツに滞在していた期間の最後の半年は、妻も私が所属していた大学のポスドクになって子どもと一緒にドイツに移ったので、そのままドイツにいようかと考えていたのですが、本学の公募があり、日本に戻ってきました。

一日のスケジュール

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朝、妻といっしょに朝ご飯の準備をして、私が子どもを保育園に連れていってから大学に出勤します。夕方の保育園のお迎えは妻の担当ですが、バス通勤のため道路事情で遅れるときは私がお迎えに行きます。妻の帰りが遅いことがあらかじめわかっているときは夕飯の準備をして子どもと食べます。保育園のお迎えを担当しないときは19時半くらいに職場を出て、20時前には自宅に着き、夕飯を食べて、子どもと遊んで、お風呂に入り、できるときはベッドで絵本を読みます。その間に妻がお風呂を済ませて寝る準備を整えたら、私と交代します。そしたら私はその後の時間を使って、論文や申請書書きなどの書類仕事をします。

夕飯づくりは妻が担ってくれていますが、そのほかの家事分担としては、妻が洗濯機を回し、私は干してある洗濯物を取り込んでたたみます。私はなんでもかんでも洗濯機に入れてしまうので回さないでくれということで・・・。土日は子どもと遊んだり、一週間の食材の買出しをします。子どもをもつまでは知らなかったのですが、週末は地域のいろいろなところで小さい子ども向けのイベントをやっているので、家族3人で参加したりもします。

本学に求められる研究者支援

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この先、子どもが保育園を終えても低学年の間は学校までお迎えにいかないといけないので、今と生活スタイルは変わらないのではないかと思います。アカデミックアシスタント制度は子どもが小学校3年生になるまで利用資格があるとのことですが、これからも継続してサポートしていただければと思います。また、私のような助教が獲得できる競争的資金の額は大きくなく、科研費の基盤Cであっても年に100万円程度のため、それをアシスタントの人件費に当てるとほぼなくなってしまいます。アシスタントの方がいないと実験がまったく進まないため、本制度を利用できることはありがたいです。

現在、アカデミックアシスタント制度には3年間の利用上限がありますが、3年経っても助教の人は助教のままなのではないでしょうか。微生物とは異なり、植物はゆっくり成長しますので、1世代を回すために短くても3ヶ月というスパンが必要です。上限期間に合わせてなんとか実験を進めなさいというのは難しい。この制度がずっと続いて欲しいのはもちろん、上限期間がもうすこし長くならないだろうかと思います。
本制度は女性への優先配置をうたっていますが、これは難しい問題ですね。いまのところ男性は出産できないので、出産の面で女性にかかる負担を取り除くのは難しい。だから女性が優先されるのは、わかります。ただ、産まれてから育児にかかる負担が男女のどちらに重いかは、家庭によるのではないかと思います。

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(平成31年3月)

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