薬剤に対する微生物の耐性や感受性を素早く高精度に分析し判定できる AI搭載型マイクロ流体デバイスを初めて開発 ~診断、創薬、治療法の開発や生命科学研究の大幅効率向上に期待~

研究成果 2022/10/10

薬剤に対する微生物の耐性や感受性を素早く高精度に分析し判定できる AI搭載型マイクロ流体デバイスを初めて開発
~診断、創薬、治療法の開発や生命科学研究の大幅効率向上に期待~

概要

 奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩﨑一裕)先端科学技術研究科 物質創成科学領域 生体プロセス工学研究室のヤリクン ヤシャイラ准教授、細川 陽一郎教授、分子複合系科学研究室の上久保 裕生教授、山崎 洋一助教、バイオサイエンス領域 分子医学細胞生物学研究室の末次 志郎教授とオーストラリア・マッコーリー大学のLi Ming(リ ミン)講師、中国科学院深海科学技術研究所の Yang Yang(ヤン ヤン)教授らは、大腸菌など微生物の薬剤に対する耐性や感受性について、細胞の電気的な特性を調べる電気(インピーダンス)計測という手法により、高精度で素早く自動的に測定・分析・判定できる装置として、「AI搭載型マイクロ流体デバイス」を世界に先駆けて開発しました。

 これまでの微生物の電気計測システムでは、あらかじめ球状の微粒子をチップ状のデバイスの流路に流して電気信号を測定しておき、これを参考データとして微生物からの信号を更正していました。しかし、楕円形、円形など様々な微生物の形の違いによる計測精度の低下や、参考粒子の残留による測定試料の汚染と不要な信号の発生があることから、熟練経験者によるデータ分析と判定が必要といった問題がありました。

 今回、開発されたデバイスは、測定試料と参考試料を隔離して流す独立チャネル(流路)からなる並列型マイクロ流体構造のチップです。測定試料に含まれる微生物の形状や特性の違いを考慮するため、参考試料として、微粒子ではなく測定対象の微生物そのものを使用し、自然状態で測定したデータから、人工知能(AI)の機械学習により、電気的な特徴を抽出して自動的に薬剤感受性などの判定基準を作成します。さらに、同時並行にもう一方の流路に抗生物質など薬剤を投与した微生物を流し、その状態の変化を作成したばかりの判定基準により評価し、微生物の感受性などをリアルタイムで詳細に表示する技術を開発しました。

 これらの新たな技術により、形状や状態を反映した詳細な微生物分析を高精度に極めて効率的に行えるようになりました。本研究で得られた成果は、薬剤耐性や感受性の評価システムの智能化をはじめ、高効率化、高精度化、自動化の実現に繋がります。

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問い合わせ先

研究に関すること

  • 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 物質創成科学領域 生体プロセス工学研究室
    教授 細川 陽一郎
    TEL:0743-72-6095 E-mail:hosokawa[at]ms.naist.jp

報道に関すること

  • 奈良先端科学技術大学院大学 企画総務課 渉外企画係
    TEL:0743-72-5026/5063 FAX:0743-72-5011 E-mail:s-kikaku[at]ad.naist.jp

※上記の[at]は@に置き換えてください。

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