〔プレスリリース〕ミドリムシのメタボ診断法を開発 ~地球温暖化対策、藻類利用の拡大に期待~

研究成果 2018/06/01

 奈良先端科学技術大学院大学(奈良先端大、学長:横矢 直和) 生体プロセス工学研究室の細川陽一郎教授・前野貴則研究員らは、理化学研究所 鵜澤尊規(うざわ たかのり) 専任研究員らと共同で、藻類の一種のEuglena gracilis(ミドリムシ)が光合成により細胞内に蓄積する「パラミロン」という多糖を蛍光標識し、短時間で定量できる技術を開発しました。本研究成果を利用する事で、パラミロンを生産する仕組みの解明や、パラミロン高生産株を作出する事ができます。またこの方法論は、さまざまな藻類の蓄積物質に適用できることから、幅広く有用物質の測定に応用でき、急速に高まっている藻類産業(スマートセル産業)への展開が期待されます。

 近年、地球温暖化対策を産業に結びつけるため、環境に排出される二酸化炭素を使い、植物や微生物が行う光合成により有用物質をつくる研究が進んでいます。なかでもミドリムシのつくる特徴的な多糖であるパラミロンは、健康食品、医薬、バイオプラスチック、バイオ燃料の原料として注目されています。工場が排出する高濃度な二酸化炭素を処理できる細胞株の選別や培養条件の検討には、一つ一つの細胞に含まれるパラミロンの量を知る、いわばミドリムシのメタボ診断が必要となります。しかし、パラミロンを簡便に検出する試薬が無く、細胞内の蓄積量を評価することは困難でした。

 本研究成果では、パラミロンに結合すると蛍光を発するペプチドを新たに開発し、フェムト秒レーザーにより細胞に穴を開けて、ペプチドを細胞の中に入れることで、ミドリムシに含まれるパラミロン量を個別診断し、その個々の個性を見分けることに成功しました。本研究成果で用いた方法論は、パラミロン以外にもさまざまな藻類の有用物質に展開できるため、藻類の基礎研究から地球温暖化対策としての藻類利用までを幅広く加速する有望な技術になると期待されます。

 今回の研究成果は、内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「セレンディピティの計画的創出による新価値創造;セレンディピターのための細胞計測技術および細胞分取技術の開発」(プログラム・マネージャー:合田圭介東大教授)で得られました。本成果は、5月29日にScientific Reports誌 (Nature Publishing Group, UK)にインターネット掲載されました。

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