〔プレスリリース〕神経細胞が脳内を移動するための仕組みを解明 ~移動に必要な推進力を生み出す分子が明らかに~ 脳疾患解明への応用に期待

研究成果 2018/10/17

 奈良先端科学技術大学院大学(奈良先端大、学長:横矢 直和) 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域の嶺岸卓徳研究員、稲垣直之教授、名古屋市立大学大学院 医学研究科の澤本和延教授らのグループは、神経細胞が脳内で移動する際に、その推進力を生み出す鍵となる分子を発見し、神経細胞を移動させて的確に目標の場所に到達させるための新しい仕組みを明らかにしました。また、この分子が働かなくなると、神経細胞が正しい場所をめざして移動できなくなり、その結果、脳の奇形が起こることも突き止めました。

 わたしたちの脳内では、数多くの神経細胞が連携して神経ネットワークを形成し、生きるために必要な知覚など脳の高次機能活動を支えています。神経細胞は、発生の過程で脳の形成のために脳内で大規模な移動を行うことが知られており、目的地に到着後は、そこで神経細胞の軸索と樹状突起を伸ばして神経ネットワークを形成します。また、大人になっても脳の一部では神経細胞が継続して移動し、神経ネットワークの形成と維持を支えます。神経細胞は、移動の際に進行方向に向かって先導突起と呼ばれる突起をダイナミックに伸ばしたり縮めたりして、シャクトリムシのように目的地に向かって這ってゆきます。しかし、神経細胞が移動するための推進力を生み出す仕組みはよくわかっていませんでした。

 そこで稲垣教授らは、先導突起の先端で「シューティン1b」という分子が濃縮されることにより神経細胞の移動に必要な推進力を生み出すことを見つけ、その仕組みを解明しました。また、この分子が働かないマウスの脳内では、神経細胞が目的地に到達できず、脳の奇形が起こることも突き止めました。

 本研究の成果により、脳の形成やヒトの脳疾患についての理解が深まります。この研究成果は平成30年10 月16 日(火)午前11 時(現地時間)に米国科学雑誌Cell Reports に掲載されました。

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