どこにいても受講や指導が可能な完全遠隔授業システムを開発 AIと指導者が連動して効率的な集団型教育 講師不足もカバー 奈良先端大で5月からスタート

2020/04/24

どこにいても受講や指導が可能な完全遠隔授業システムを開発
AIと指導者が連動して効率的な集団型教育 講師不足もカバー
奈良先端大で5月からスタート

【概要】

 奈良先端科学技術大学院大学(学長:横矢直和)先端科学技術研究科 情報科学領域 ソフトウェア工学研究室の平尾俊貴氏(2020年3月修了)、松本健一教授、石尾隆准教授は、指導者や学生の居場所を問わず、完全遠隔で授業が可能なプログラミング授業システム「カメレオン」を開発しました。学生はオンラインで授業に参加し、指導者側は学生が作成したプログラムのチェックなど一括管理して、どこからでも個別に教育することができます。さらに、学生の理解度を人工知能(AI)が自動的に判断するなど、指導者が効率的に濃密な教育ができる機能を加える予定です。

 本学では、この完全遠隔で受講可能な授業として「プログラミング演習」を5月11日(月)から開講します。  

 本遠隔授業システムは、平尾俊貴氏(工学博士)が大学発ベンチャーとして創業した株式会社 dTosh (2020年 4月創業) から商用提供される新しいオンライン授業システムです。本学ソフトウェア工学研究室が学術的な授業ノウハウと専門的知見を提供し、さくらインターネット株式会社からの計算資源のサポート、そして本学の在学生と修了生の有志によって、短期間で実現することができました。

図1

 このシステムの最大の特徴は、遠隔で集団型のプログラミング授業を実施できる点です。従来のプログラミング授業では、数人の指導者(教員、補助指導者など)と10〜40人程度の学生らが教室に集まり、指導者らが各学生のプログラムを直接添削指導する方式でした。本授業システム「カメレオン」では、学生がオンラインで授業に参加でき、指導者らは遠隔で各学生の進捗状況をクラウド上で一括管理できます。また、AIが困っている学生を自動検知する機能や、よくある質問を対話形式でAIが自動対応する機能を研究開発するための試みです。

 本システムの導入により、国内外を問わず、様々な専門講師(地域、大学、企業の専門家)から遠隔で技術支援を募ることが可能となります。特に、文科省が掲げる「GIGAスクール構想」などの政策を進める中で、教育現場が直面しやすい「専門講師の不足」を解消することが期待されます。

【解説】

  1. 学生らは遠隔で授業に参加できます。チャットシステムを通じて、いつでも指導者から質問対応を受け取れます。
  2. 指導者らは、各学生の進捗状況をクラウド上で一括管理できるため、遠隔でも全ての学生を効率良く指導できます。さらに、AIが困っている学生を自動検知して指導者に通知することで、遠隔でも各学生の進み具合に沿った個別対応が可能となります。
  3. 様々な業界の専門講師を国内外問わず遠隔で招聘できるため、より幅広い技術支援を教育現場に届けることができます。本システム上では、AIが対応可能な質問はAIに任せるため、指導者らは複雑な質問対応だけに集中できることが期待されます。AIと指導者の連携によって指導者の負担を削減するため、教育現場の働き方改革にもつながると期待されます。
図1

【背景と目的】

 従来のプログラミング授業では、指導者らが学生のパソコン上で進捗状況を現場で確認し、直接添削指導する方式が一般的でした。しかし、授業を遠隔で実施した場合、各学生の進捗状況をビデオ通話で管理することが困難であり、各学生に十分な教育指導が行き届きにくいという課題がありました。  

 本取り組みの目的は、AIを活用して集団型プログラミング授業を完全遠隔で実施することです。本システム上で、学生は遠隔でプログラミングを学習することができます。そして、指導者らは場所を問わず、各学生の進捗状況を一括管理できます。さらに、プログラミング初心者が陥りやすい技術的問題をAIが機械的に学習し、その解決方法を自動で推薦するチャットボットの開発に取り組みます。本チャットボットには、ソフトウェア工学領域のプログラム解析技術を基盤とした、様々な最新研究技術が搭載されます。本授業システム「カメレオン」の導入によって、AIと指導者が効率良く連動でき、従来よりも多くの学生へ効果的な指導を完全遠隔で提供することが期待されます。

【今後の展開】

 授業の実施場所を問わず、様々な専門講師から遠隔で技術支援を受けることができる、新しいオンライン授業形態の確立を目指します。

【用語解説】

  1. 完全遠隔授業:従来の現地実施(同じ教室に学生と指導者が集まる方式)とは異なり、どこからでも学生と指導者が遠隔で参加できる授業環境。
  2. プログラミング授業:一般的な情報科学分野の授業(主に講義形式)とは異なり、各学生がプログラムを開発してプログラミング技術を習得する演習形式の授業。

【本プレスリリースに関するお問い合わせ先】

奈良先端科学技術大学院大学 企画・教育部 企画総務課 広報渉外係
TEL: 0743-72-5026  
E-mail:s-kikaku[at]ad.naist.jp

株式会社 dTosh 代表取締役社長 平尾俊貴   
URL: https://www.d-tosh.com/
E-mail:toshiki.hirao[at]d-tosh.com

さくらインターネット株式会社 経営企画部 広報担当
URL:https://www.sakura.ad.jp  E-mail:press-ml[at]sakura.ad.jp

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