ホーム  > メッセージ  > インタビュー  > 研究者紹介 vol.6

研究者紹介 vol.6 バイオサイエンス研究科 発生医科学(笹井研)西晶子助教

2009年埼玉大学大学院理工学研究科博士後期課程生命科学専攻修了。博士(理学)。理化学研究所吉田化学遺伝学研究室特別研究員、2010年The Francis Crick Institute (Cancer Research UK) 研究員を経て、2015年10月より奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科発生医科学研究室助教。専門は細胞生物学と分子遺伝学。現在の研究テーマは幹細胞を用いた初期神経分化の機構解析と発生に関わる繊毛の機能解析。

研究者への道のり

高校生のころまでは化学や物理が好きでしたが、大学入試直前に、海洋生物学の研究者である叔父のところで話を聞く機会があり、生物はもっと面白そうだと思いました。ちょうどヒトゲノム計画が完了した時(2003年)で、ゲノム解析の話題が豊富にあり、そちらに興味を持ったために、学部から博士後期課程まで分子遺伝学を専攻しました。2010年にポスドクとしてイギリスの国立がん研究所に勤め始めるときに分野を細胞生物学に変えることになり、ヒト細胞を扱うプロジェクトの立ち上げに関わりました。共同研究に取り組むなかで自分のやっていることが発生学の分野に関わりが強くあるのだとわかり、このまま同じ細胞生物学をやるか、統合して新しいことをやるかとなったときに、新しいことを挑戦したいと思い、発生医科学のラボである本学の笹井研に着任するに至りました。

研究環境改善をテーマにしたミーティング@イギリス国立がん研究所

イギリスのがん研究所では、執行部は女性の割合が半分を占めていましたが、PI(グループリーダー)の女性割合は10~15%で、まだまだ低いと言われていました。3年ほど前にPI達が研究所のメンバーに声をかけて、女性が科学研究をするにあたって困っていることはないか、大変なことはないかを話すミーティングを始めました。そのミーティングでは、子どもを連れて学会参加するのが大変だとか、そもそも子育てと研究の両立は体力的にもたないとかといった普段話などから、両立のために使える社会制度や資金資源は何かといった具体的な話題が出ていました。主にはどうやったらうまくバランスをとれるのか、その具体的な解決策を探ったり情報交換をしたりしました。参加していた人の世代は60代から20代まで、女性ばかりではなくて、ノーベル賞をとった研究者も参加していた時もありましたし、学生もいました。結婚をしていたり、結婚しない関係で子どもがいたり、海外から家族を連れて赴任していたり。こういったさまざまなメンバーで研究環境の改善のためには何が課題かについて議論する機会がありました。
仕事の効率に関しては、イギリスと日本では大きな違いを感じます。特に事務手続きの効率化がもっとできないのだろうかと思います。今は出張に行くのも、物を買うのも書類が必要ですが、イギリスではシステム上で上司に当たる人が承認すればよいだけで、日本ほど時間がかかりませんでした。時間をもっと節約して、自分の研究のための時間や学生とのディスカッションに割きたいですね。

一日のスケジュール、家事分担

自宅が大学まで車で1時間半と遠いこともあって、9時~9時半に大学に到着します。午前のうちに自分の実験を集中して行い、午後は続きの実験やミーティングが入ることが多いですね。帰りは19時前後に大学を出て、21時くらいに帰宅します。基本的に土日のどちらかには大学に来て実験をしていますが、プレートを取り込むだけなどのことは学生に協力してもらっていて助かっています。夫とは博士後期課程を終えた時期に結婚して、ほぼ同じ時期に渡英しました。夫も同じ年に帰国し他の大学で研究者をしています。

夫との家事分担はお互いに勤務時間がフレキシブルなこともあって、フィフティフィフティですね。朝私が準備をしている間に夫が朝ごはんをつくる、私が晩御飯をつくったら彼が洗い物をしてくれる、日曜にまとめて掃除をするときは役割分担する、というような具合です。でも役所に出すような書類関係は夫がしてくれるので、もしかしたら夫の方が負担が大きいかもしれません。また、イギリスにいた期間は「日本にいたら行けないところに行こう」と二人でよく旅行しました。

これから研究者を目指す人に向けて

研究者を目指す人に関わらず、将来の計画をこれしかないと考えないほうがいいのかなと思います。たとえば博士後期課程に進みたいと思った時に、その博士習得後どうするかは先に決めることはできず、その過程に決まっていくように思えます。私自身、先のことを考える時に、何が面白く感じていて、何がやりたいかのかを見つけるように動くということをしてきました。学生にも将来のことは決め付けなくてもいいと言っています。それは何もしなくていいということではなくて、とにかく興味があることが何か考える。そうやって自分に何ができるのかを常に考え、人にも聞いてみたりして、最終的に自分で選択する。それなら途中で止めるときも責任をもって止められます。とりあえずその選択肢をたくさん持つために、いろんなことに挑戦して欲しい。自分の選択肢を狭めないで、もっと自由に考えてもらえたらと思います。
また、研究者を目指すときに留学はとてもいい選択肢ではないかと思います。一度海外に出たら戻って来られる場所がないのではないかといった不安があるのかもしれないですけど、もっと出て行ってもいいのではないかな。とくに女性の方が留学に向いているのかもしれませんね。女性の研究者も多いですから、選択肢を広げるためには留学はよいと思います。

(平成29年3月)

interview content