ホーム  > メッセージ  > インタビュー  > 研究者紹介 vol.19

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2013年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)取得。JSPS特別研究員、大阪大学大学院工学研究科特任研究員、大阪大学大学院理学研究科特任研究員、同特任助教を経て、2018年4月より現職。専門は錯体化学と光化学。現在は湾曲状コラニュレンモチーフを用いた有機・錯体化合物の合成と光化学特性に関する研究を行なっている。

なぜ研究者に?

高校生のころから理系に進むなら研究者かなと漠然と思っていました。純粋な好奇心というか、気になったことは考えたり突き詰めるのが好きだったのと、父親が物理の研究者だったので、憧れもあったかもしれません。大学に進み、実際に研究を始めると楽しかったので、決心を固めました。私は博士前期課程から東大に進学したのですが、この時点で「博士号を取って研究者になろう」と考えていましたし、後期課程進学の時点でさらなる覚悟を決めたといえます。博士後期課程までいくと研究の道以外の選択肢はなかったですね。

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語弊を恐れずにいうならば、役に立たない研究をしたかったんです。すぐに応用につながる研究は企業でもできるけれど、何百年後といった将来に役に立つかもしれない、でもすぐにわかりやすい応用につながらないような基礎研究をしたいと思っていて、そういった研究ができるのは大学の研究者かなと考えていました。もちろん好奇心もありますが、今の科学技術の多くがそういう基礎的な発見から始まっていることを考えると、社会の礎となる重要な研究だと思っています。

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分野は学部生のときから錯体化学を専攻しました。錯体化学は色がきれいな化学なんです。金属と有機物を分子レベルでくっつけた錯体は、インク、血液の赤い成分である赤血球、触媒などにも使われています。色の変化が見えるだけでも楽しいのですが、それが人間の視覚では見えない分子や電子のレベルで説明できるところがおもしろいと思っています。たとえば、発光材料が欲しいとき、どうやったら光度が強くなるのか、何色になるのかは、ある程度設計できるようになっていますが、今までにない設計指針を考えたい、これまでの理論では説明できない部分を明らかにしたいと考えています。分子はものすごい速さで動いていますが、その動きよりも速い光を利用すれば分子の動きを見たり性質との関係を明らかにすることもできるのではないかと思うので、そういう意味でも光化学にも興味をもっていて、錯体化学と光化学の融合領域でこれからも研究をしていきたいと思っています。

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博士後期課程を終えたあとは、大阪大学工学研究科で2年間、ポスドクとして光化学と錯体化学の研究をしました。そのあと、同じ阪大で錯体化学がメインのプロジェクトの特任助教に着任しました。でもやっぱり光化学に取り組みたいと考え、本学に着任しました。
本学の機器など研究環境はいいと思います。研究室だけでなく、共通機器の数が多く、利用料が高くないので使いやすいです。過去には、機器利用料を考えながら測定の量を考えることもあったので、負担が少ないのはありがたいですね。しかもそれぞれの測定機器に技術職員さんがいらっしゃるので、依頼測定や専門外の機器を使う際の相談をすることもできます。学外に測定を依頼する場合には、結果が出ないと共同研究者に申し訳ないと思う場面もあるので、ある程度結果が出る目処がつかないと依頼しにくいことがあります。つまり、成功率が低い測定依頼のハードルが高いのです。そういう意味で本学はハードルが低く、チャレンジがしやすいといえます。
研究室では週に1回か2回、雑誌会や報告会などがあります。河合先生のサポートが手厚いと感じます。ディスカッションは随時行っています。研究テーマ設定など自主性を尊重する一方、研究や教育の指導だけでなく様々な相談にも乗ってくださいます。ただ、学内で海外からゲストを招いたシンポジウムや講演会に参加できる機会は少ないように思います。立地が理由かもしれません。

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一日のスケジュール

朝は9時頃から私がサポートしている学生10名弱からなる研究室内のグループで進捗確認のミーティングを30分程します。そのあとは、主に学生の指導をしています。例えば、学生とディスカッションや学会の準備などをします。個々の学生に合わせた指導は難しく、試行錯誤の毎日です。学生の出したデータをもとに、一緒に勉強しながら進め、論文にまとめます。並行して、次の研究を考えたり、自分の実験をしたり、論文を書いたりします。このほか、国内外の共同研究もあり、最近だとインドネシアの研究者や学生の招聘やワークショップの企画がありました。

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生活スタイルは模索中です。最近は、自分のデスクにいるときは些細な相談にも時間が取れるように、昼間は学生指導と雑務を集中してやっています。実験がなければ20時を目標に帰宅し、夕飯後に落ち着いて論文を書いたり勉強したりしています。学生が誘ってくれて一緒にご飯に行くこともあります。本学に着任する前までは帰宅時間は1時でしたが、今は生活習慣が改善され、さらに自分で考えたテーマの研究を学生と一緒に進められるので恵まれていると感じます。

学会などがない週末はしっかり休んでいます。着任直後は大阪まで遊びに行ったりしていましたが最近は奈良の静かな環境を楽しんでいます。買い物は大変でしたが、ネットスーパーを使うようになってから時間に余裕ができ、友達と会うこともできるようになりました。本を読んだり、映画を観たり、お茶を飲んでゆっくりするものも好きです。学内に畑を借りているのですが、昨年は学生さんにも助けてもらってなんとか収穫までこぎつけ、美味しくいただきました。旅行に行く時間はなかなかありませんが、代わりに学会など出張先では美味しいものなどを楽しみにしています。お盆や正月は地元の石川に帰ります。母は何かというと奈良まで遊びに来るので一緒に観光に行ったりもします。

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研究環境整備に関する課題について

研究のための国の予算がどんどん減っているように思います。科研費などは若手には手厚くなってきていると思うのですが、私の場合、これからが厳しい状況になるのではと思っています。今後若手から外れたときにベテランの先生方と戦わないといけなくなるのではと不安をもっています。 また、ノーベル賞を受賞された先生方をはじめ多くの研究者が基礎研究の重要性に言及されているにも拘らず、基礎研究には予算が割かれにくくなっていると思います。財団の助成金などの申請書においては、何にどう役に立つのか直截的に研究の有用性を明示しなければいけない場合もあり、身近な技術につながらないと価値を理解してもらうのは難しいのかもしれません。研究費を科研費だけで賄うのは厳しいので、今後課題になってくるだろうなと考えています。

物質領域の女性の先生方のランチミーティングでお話を聞いていると、出産などのライフイベントがあると大変そうだと思います。けれど、自分がその状況になってみないとわからないですね。見た目で甘く見られることはありますが、普段特別男女差も感じません。 ライフイベントは体験しないとわからないというのは男女を問わないと思いますので、そういう機会を通して知ることができるのはよいと思います。

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(令和2年3月)

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