奈良先端科学技術大学院大学とドイツフラウンホーファIESEソフトの欠陥を未然に発見、予防するソフトウェアレビューをテーマに国際連携ワーキンググループを設立 ベストプラクティスの探求と発信によりソフト品質向上に貢献

2009/02/24

【概要】
開発途上のソフトの欠陥を未然に発見して防ぐ技術「ソフトウェアレビュー」の技法や研究テーマに関する 知見を共有することを目的に、ワーキンググループ(Working Group of International Research Cooperation on Software Inspections)を奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科ソフトウェア工学講座とドイツフラウンホーファ実験的ソフトウェア工学研究所 (Fraunhofer Institute for Experimental Software Engineering)が共同で設立いたしました。

ソフトウェアレビューとは、製作途上のソフト(仕様書、設計書、ソースコードなど)について、作成担当者以外の開発メンバ、あるいは第三者がそのソフトを調べ、欠陥を発見することを指します。
現在、多くのソフトウェア開発では、テストによる品質向上活動が中心となっています。テストでは開発の過程で混入された欠陥をリリース間際に発見することにより品質を高めます。

ソ フトウェアレビューでは開発の序盤の工程から実施可能であり、欠陥の予防と欠陥の発見に必要となるコストとリスクの低減ができます。さらに、レビュー実施 により欠陥を早期発見することで、テストで検出する場合と比較して修正コストが20%程度に抑えられることが報告されています。

本ワーキンググループは、国際的なソフトウェアレビューの成功事例や有効な手法といった知識や実状を調査、公開し、ソフトウェアの品質向上に貢献いたします。

【動機】
現 在、多くのソフトウェアの品質向上活動の中心は、リリース間際に実施するソフトウェアテストにあり、ソフトウェア開発の早期(要件定義、設計、コーディン グ)に混入された欠陥はテストまで除去されません。ソフトウェアレビューはソフトウェアテストを補完する品質向上活動であり、開発の早期に実施することが できます。また、様々な論文や報告で、ソフトウェアレビューでの欠陥除去コストはソフトウェアテストよりも小さいことが示されています。同時に、ソフト ウェアレビューの効果を最大限に発揮するには高度な戦略、スキル、手法が必要とされています。

今回のソフトウェアレビューに関する国際的な連携は世界的な広がりを視野に入れ、これらの成功事例を共有することを目的としています。

【活動予定】
本ワーキンググループは主に以下の研究活動を行う予定です。
・研究の初期段階におけるアイデアの共有やレビューに関連した問題点・解決策の議論
・研究の主題を明確にし、レビュー手法の内容・改善点について議論する
・ソフトウェア品質向上にむけた社会貢献として、レビューの効果や重要性を産業界、官公庁に広める
・Webページ、報告書を含むレビューについての情報の公開
・研究テーマや実験に関する情報の共有
・ワーキンググループ内での追試実験

【まとめ】
奈 良先端科学技術大学院大学とフラウンホーファ実験的ソフトウェア工学研究所は今回の国際連携ワーキンググループをソフトウェアの欠陥除去・予防技法である ソフトウェアレビューを改善するために設立しました。ソフトウェアが我々の身の周りのいたるところで使われるようになり、ソフトウェア品質劣化が与える影 響は甚大となりつつあります。そのため、テストとの組合せを念頭に置いた欠陥発見、欠陥予防のベストプラクティスと効果的な方法が必要になります。本ワー キンググループはそのようなベストプラクティスの集積に貢献いたします。また、検討の結果は文部科学省「次世代IT基盤構築のための研究開発: StagEプロジェクト」へも還元してまいります。

【関連情報】
本ワーキンググループに関する情報や資料は以下から参照できます。
http://www.software-inspection-wg.org/

PDFファイル(27.01 KB)

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