植物の細胞が花になるか枝になるかを運命づける遺伝子を発見生物の多様性の研究や農作物・園芸品種の改良に期待

2009/06/11

【概要】
花を咲かせる植物の形を比べると、種によってあるものは枝に沿って花が並び、あるものは茎のてっぺんに花をつける。このような花の付き方 を決める仕組みに関わっている遺伝子を、奈良先端科学技術大学院大学(学長:磯貝彰)バイオサイエンス研究科の相田光宏 特任准教授とバングラディシュから留学している大学院生のエムディー・レザウル・カリム氏らのグループが発見した。植物の先端部でさまざまな細胞を作り出 す成長点という組織に働く3つの遺伝子が互いに協調して、枝の細胞になるか花の細胞になるかの運命を決めるスイッチの役割を果たしていた。これらの遺伝子 の働きをすべて止めると、本来花が付く位置に枝がつくられ、植物の見かけが大きく変わってしまうことも証明した。
これまで謎とされていた植物の多様な形の違いがどうして起こるのかを説明する手がかりとなる研究であり、農作物や園芸品種の枝ぶりを変えたり、実の付き方を変えるといった品種改良の可能性も広がる。
なお、この成果は、平成21年5月29日付けのPlant Cell誌オンライン版に掲載された。

【解説】
[何を見つけたか]
  植物の茎の先端部には、成長の原動力となる小さな組織(成長点)がある。この部分は細胞分裂が盛んで、葉や枝、花など、新しい器官の元となる細胞の塊が 次々と先端に付け加えられていく。植物は花を咲かせる時期になると、成長点でつくる細胞の塊の種類を、葉や枝になるものから花になるものへと切り替えるス イッチのような仕組みがはたらき始める。相田准教授とカリム氏らは成長点で働くPUCHI、BOP1、BOP2という3つの遺伝子に注目し、これらの遺伝 子が働かなくなった植物の形を順次調べていった。その結果、3つの遺伝子が全て働かなくなった植物では、花の運命へと切り替えるスイッチが上手く働かず、 その結果、本来花が付くはずの場所の大部分が枝に変わってしまうことが分かった。

[なぜ大切なのか]
 植物は、日長や温度などの 情報を感じ取り、ちょうどよいタイミングで花を咲かせる。体のどの部分に枝を付け、どの部分に花をつかるかは植物によって大きく異なり、それが個々の植物 に特有の形を決める大切な要因の1つになっている。これまで、植物が成長する際に新しく作られた細胞が、枝の細胞になるか花の細胞になるかの運命を切り替 えていることが知られていたが、そのスイッチの切り替えがどのようにして起こるかはよく分かっていなかった。今回の研究で、PUCHI、BOP1、 BOP2が枝から花へのスイッチの切り替えに必須な遺伝子であり、花の付き方を変える重要な働きを担っていることが明らかになった。これらの遺伝子の働き を上手く利用することで、作物・果樹や園芸品種などの枝振りや花の付き方を変えるような、新しい品種改良法の開発につながることが期待される。

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