世界初!!「電子レンジで無機EL用蛍光体を創成・均質EL発光」に成功-簡便・迅速な手法で無機系ELの製作ができ、次世代ディスプレイに期待-

2010/01/14

【概要】
曲げられる柔軟な次世代ディスプレイは、フィルム上に発光する素材であるEL(エレクトロルミネッセンス)用無機蛍光体粒子を印刷技術に より塗布してつくられる。このさいに、簡便・迅速な手法で安定な高機能のEL用蛍光体を作り上げることができず、大量生産のネックになっていた。有限会社 イメージテック(代表:田口信義)と奈良先端科学技術大学院大学(学長:磯貝彰)物質創成科学研究科情報機能素子科学講座(浦岡行治教授)の研究グループ は、家庭用電子レンジを改造した真空マイクロ波加熱装置を用いて、フィルム上で均一にEL発光する無機材料系蛍光体を世界で初めて創成した。
この開発によって、従来の印刷法を用いて次世代フレキシブルディスプレイの道が開かれることになる。この研究成果の一部は、昨年12月、国際ディスプレイワークショップ(IDW '09)で発表され、また近く春季応用物理学会でも報告される。

近 年、超薄型で鮮明に自発光する有機ELディスプレイが注目されている。しかし、複雑な製法や高価な製造装置を使うこと、大面積のディスプレイを作りにくい ことなどに課題がある。一方で、印刷可能で比較的製造しやすい無機EL蛍光体は長時間の高温焼成法が必要などの理由から高価につくのが課題だった。
今 回の開発は、家庭用電子レンジのマイクロ波による加熱原理を応用する「連続排気真空マイクロ波熱触媒法」を用いた。従来、大気中で行うマイクロ波熱触媒法 は、材料内部から誘電加熱するもので、特に溶液中での有機合成に使われている。浦岡教授らは、硫化亜鉛(ZnS)系無機蛍光体創成のため、家庭用電子レン ジ内部を、連続排気できるように改造し、加熱炉内部を減圧しながら、マイクロ波を照射するマイクロ波加熱装置として使った。
この結果、硫化亜鉛に 賦活材として微量の銅を含む物質を母材原料として用いれば、青色PL発光(紫外線励起発光、フォトルミネッセンス)と共に一様な青色EL発光(450 nm)を実現できた。これは結晶構造の改善と賦活材の相乗効果と思われる(結晶構造はX線回折と励起光スペクトル(PLE)で確かめた)。また、銅の量を 多くすると、PL,EL発光が長波長(470 nm)にシフトすることも確認できた。
本無機蛍光体創成技術は、従来の高温焼成法に代わる迅速・安価で柔軟性に富む手法で、
次世代無機EL蛍光体創成への道を開いたことになる。現段階の輝度は約50カンデラ/平方メートルであるが、今後、手法の精緻化をはかり、輝度を向上してゆく。
【研究成果の特徴】
* 連続排気真空マイクロ波照射装置を開発し、用いたこと。これにより、試料からの脱ガスの影響の少ない減圧下(約200Ps)で、短時間(30分以内)に高温(約1000℃)のマイクロ波加熱処理が可能。
* 高い強度の青色PL発光とともに、青色のEL発光を示す硫化亜鉛系蛍光体の製法を実現。
* X線回折法や励起光スペクトルから、硫化亜鉛の結晶性の改善を確認。
硫化亜鉛を大気中でマイクロ波処理をすると酸化され、酸化亜鉛系の黄緑色の紫外線励起発光(PL)を示し、ELは現出しない。連続排気による真空中でマイクロ波処理すると、結晶性が改善され硫化亜鉛のみの強い青色PL発光を示すが、一様なEL用蛍光は示さない。

【本プレスリリースに関するお問い合わせ先】
国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 情報機能素子科学講座
浦岡行治 TEL/FAX 0743-72-6060 E-mail uraoka@ms.naist.jp
有限会社イメージテック 
田口信義 TEL 0774-95-5048 E-mail ntagu@iti.keihanna.ne.jp

イメージテックまたは奈良先端科学技術大学院大学にて随時デモを実施いたしますので、多数のご訪問をお待ちしております。
なお、訪問を希望される方は、上記問い合わせ先までご一報ください。

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