振動(音)を利用した人の行動認識技術の開発 ~オンキヨー株式会社との産学共同研究を実施~

2019/11/15

振動(音)を利用した人の行動認識技術の開発
~オンキヨー株式会社との産学共同研究を実施~

【概要と背景】

 奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市、学長:横矢直和)先端科学技術研究科情報科学領域ユビキタスコンピューティングシステム研究室とオンキヨー株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:大朏宗徳)は、共同研究の協定の締結を行い、AIを活用した新事業の創出に向け技術開発に取り組んでまいりました。このたび新たな研究成果として、振動(音)による人の行動認識技術を開発するとともに、その内容を2019年11月11日(月)~13日(水)に情報処理学会のDPS研究会※1が主催する「DPSワークショップ」にて論文をポスター発表しました。

 オンキヨー株式会社は長年培ってきた音に関する技術とAI(人工知能)を融合させた技術の開発を積極的に行っております。近年、見守りサービスや防犯上の異常検知への応用へ向け、人の行動を特定しようとする研究が様々な方法でなされていますが、カメラを人の行動の特定に用いると必要以上に情報を得てしまうためプライバシーの問題がありました。同社では音に関する技術を活用し、プライバシーの侵害が少ない床面の人の足音のみで動線認識する技術について、AIを用いた新しい取り組みで先行する本学と共同で技術研究を行ってきました。

 この度、本学が所有するスマートハウスのフローリング床において人が歩行する際に発する床への微弱な振動を、床面に貼り付けた2つの振動センサで検出・増幅し、得られた信号をAIで学習・認識することで、人の歩行方向の認識を83%の精度で推定し、この成果を情報処理学会にて論文ポスター発表しました。 なお、同社では引き続き産学連携の取り組みで、モノを伝わる振動など、音に対するAIの応用に今後も取り組んでまいります。

  1. オンキヨー株式会社との共同研究について

     本学ユビキタスコンピューティングシステム研究室は、センサ・デバイス・ネットワークが連携し、センサから取り込まれる実世界データを処理・集約・解析することで、高度なサービスを効率良くユーザに提供するシステム―ユビキタスコンピューティングシステム―の実現に向けた研究に取り組んでいます。同研究室とオンキヨー株式会社は、モノを伝わる振動(音)データを機械学習によって分析をすることで、様々な分野での各種分析、判断に応用することを目的に共同研究を行っています。

     微弱な振動(音)に含まれる特徴的な信号を忠実に増幅する同社が培ってきたオーディオ技術と、得られたデータから、機械学習・分析を行う本学との連携により、これまでにない幅広いニーズに対応するための研究を進めていく予定です。

  2. 論文概要 ※2

    【論文名】複数のピエゾ素子を用いた振動による人の室内動線検出の検討

    【概 要】

     近年、見守りサービスや防犯上の異常検知への応用へ向け、家屋や店舗内での人の行動を特定する研究が様々な方法でなされていますが、必要以上に情報量を得ることが可能なカメラを用いた行動の特定は、人物が特定されるなどプライバシーの問題が従来より指摘されてきました。

     オンキヨー株式会社では、カメラを使用せず床面に伝わる振動のみを用いて人の行動を特定する技術開発に取り組んでおり、今回振動のみを用いて次のようなプロセスにより人の歩行方向を特定することに成功しました。

     床面に一定間隔に2つ配置した振動センサ対を用意し、床面の振動をオーディオ帯域の電気信号に変換増幅、音声信号処理をほどこし、エネルギートレンドデータを作成します。

     最後に、このエネルギートレンドデータから特徴量を算出、機械学習によって歩行方向や複数人の交差を推定するという手法により、人の歩行方向を83%の確度でとらえることに成功しました。

     同社では既にこの技術をさらに発展・応用する研究に取り掛かっています。

     このように、同社は経営理念である「VALUE CREATION」に基づき、これまで培ってきた音に関する技術を磨くのみならず、他の技術とのコラボレーションによるAI 活用の研究開発にも取り組み、生活をより豊かにする新しい価値提案を推進してまいります。 

図1

【用語解説】

※1 DPS研究会について
 
DPS(Distributed Processing System)研究会は、一般社団法人情報処理学会の情報環境領域の研究会で1985年に設立されました。 研究会では通信と分散処理に関して無線通信そのものから機械学習に至るまで幅広い範囲の研究者が集まり、論文発表、ワークショップ等活発な議論を行っています。

※2 第27回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集 pp.256 - 259 (2019)

【関連リンク】

◆オンキヨーAI 特設サイト: https://www.jp.onkyo.com/ai/
◆11 月より「Onkyo AI」 を活用したコールセンター業務開始のお知らせ~奈良先端科学技術大学院大学との産学共同研究を実施~(2019年11月5日付): https://www.jp.onkyo.com/news/information/topics/20191105_PR_Onkyo_AI_callcenter.pdf

【本件に関するお問い合わせ先】

 オンキヨー株式会社 総務部
 担当 米田
 〒541-0041 大阪府大阪市中央区北浜2-2-22
 TEL:06-6226-7343

 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科
 情報科学領域 ユビキタスコンピューティングシステム研究室 特任准教授 諏訪
 TEL:0743-72-5389 

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