植物はDNAに傷が入った時、柔軟に対処する独自のしくみを持っている〜2種の植物ホルモンを使い分けて統御する機構を解明 環境ストレスに強い農作物の作出に期待~

研究成果 2021/06/17

植物はDNAに傷が入った時、柔軟に対処する独自のしくみを持っている
〜2種の植物ホルモンを使い分けて統御する機構を解明
環境ストレスに強い農作物の作出に期待~

概要

 奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩崎一裕)先端科学技術研究科バイオサイエンス領域植物成長制御研究室の梅田正明教授、高橋直紀助教らは、植物のDNAが傷ついた時に、サイトカイニン、オーキシンという生理作用を調節する2種の植物ホルモンの作用を変化させることで、DNA損傷ストレスに臨機応変に対処する植物独自のしくみを世界に先駆けて突き止めました。この成果は、環境ストレスに強い農作物の作出などの技術開発につながることが期待されます。

 植物のDNAが損傷を受けると、モデル植物のシロイヌナズナの根では、細胞分裂の停止や幹細胞の細胞死、細胞分裂から次の段階であるDNA倍加への早期な移行など事態の推移に即した適切な応答を積極的に引き起こすことで、DNA損傷に対処していることが知られていました。しかし、これらの応答をどのように統御することで、植物がDNA損傷を克服しているのかという機構についてはわかっていませんでした。

 今回、梅田教授らは、DNA損傷を受けると、根の先端で植物ホルモンの一つであるサイトカイニンの量が増えることを突き止めました。そして、サイトカイニンの増加は、細胞分裂からDNA倍加への移行を促進するとともに、別の植物ホルモンであるオーキシンの作用を弱めることで、細胞分裂の停止や幹細胞での細胞死の誘導にも関与していることを発見しました。本研究では、植物が二つの植物ホルモンを巧みに利用することでDNA損傷を受けた時の様々な応答を統御するという植物独自の環境応答機構の存在を裏付けました。

 また、サイトカイニンを生合成できないシロイヌナズナの変異体では、DNA損傷ストレスに対して強くなり、根の成長が抑制されることなく、伸び続けました。そのことから、本研究の成果は、植物ホルモンの量を操作することで、環境変動に対して頑強な農作物の作出に向けた新たな戦略を見出すことができるものと期待されます。

 この研究成果は、2021年6月16日(水)14時(EST)付けで「Science Advances」オンラインサイトに掲載されました(プレス解禁日時:日本時間2021年6月17日(木)4時)。

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問い合わせ先

研究に関すること>

 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バオサイエンス領域
 植物成長制御研究室 教授 梅田正明
 TEL:0743-72-5592  FAX:0743-72-5599  E-mail:mumeda[at]bs.naist.jp
 研究室ホームページ:https://bsw3.naist.jp/umeda/

報道に関すること
 奈良先端科学技術大学院大学 企画総務課 渉外企画係
 TEL:0743-72-5063  FAX:0743-72-5011 
 E-mail:s-kikaku[at]ad.naist.jp

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